大混戦
ギアの自爆による閃光がようやく収まる。
閃光は第4サーバー拠点のオリハルコンの防壁の一部を、ごっそりと削っていた。
慌てて破損部分に人員を集める連合軍。
第3サーバー部隊も当然防壁の穴を狙う。
どんな罠があるか分からない防壁を破るより、安全だと判断したためだ。
第4サーバーは防衛兵器をバリケードの様に集めている。
少しでも穴を塞ごうとしているのだ。
双方、遠距離攻撃を打ち込みながら距離を詰めていく。
そこに乱入者が現れた。
第3サーバー部隊の後方に、プルートと第1サーバー部隊が現れたのだ。
即座に部隊を二手に分ける第3サーバー。
普通に考えれば挟み撃ちのチャンスだが、第1サーバーの部隊は消耗しすぎていた。
プルートの追撃を防ぎながらぐるりと遠回りし、結局拠点に逃げ込んだ。
プルートは深追いせず、フィオの元へ駆けつけた。
一方のフィオはその手に竜槍杖を握っていた。
メンテナンスが終了していたので、アポート・リングの効果で呼び寄せる事が出来たのだ。
防具については、このままでも問題ないだろう。
「ふふふ、リエよ。今度は兄の力を存分に見せてやるぞ」
どこかの悪役の様なセリフを口にしていた。
はっきり言って不気味である。
追い回された事を根に持っているのだ。
装備のメンテ中に飛び出したのは自業自得なのだが。
「コール カリス フェイ」
すでにプランは立ててある。
夕方まで睨みあい、フェイのスキルを使用する。
弱体化した所を一斉攻撃。
これで、ひとたまりもないはずだ。
ジリジリと時間は過ぎ、やがて日が傾く。
カリスは意図的に魔法に当たりに行って、もう何時でもパワーアップできる状態だ。
俺もフェイもプルートも、魔法攻撃に参加している。
フェイのスキルは知られていないはずだが、念のためのカムフラージュだ。
連合軍の数は4000程、こちらは2000といったところか。
倍の敵の守る城に正面から挑む。
いくら質で勝るとはいえ、普通なら正気の沙汰ではない。
だが、敵が大幅にパワーダウンするなら話は別だ。
「フィオ君。準備は完了です」
「何時でも良いよー」
「了解」
レイさんとティーアさん、それぞれが1000人を編成し終わった。
後はタイミングを見てフェイの出番だ。
「では、行きましょう」
「攻撃開始ー」
第3サーバーの部隊が硬直を破って突撃する。
先頭はカリスとプルートだ。
2体には防衛兵器を狙うように指示してある。
空がオレンジ色から藍色に変わり始める。
もう少しだな。
戦場に目をやると、使い魔達に挑む勇者がいた。
カリスに挑んでいるのはヒデに妹にアキか。
発石車などの防衛兵器を光弾で壊されて、放っておくと不味いと判断したんだな。
善戦しているようだが、何時まで持つかな。
プルートに挑んでいるのはモモノさんとシアンさんか。
アンデッドがいる所を見るとデッドさんもいるんだろう。
プルートは拠点に設置されたバリスタやボウガンを破壊している。
3人を相手にするより任務を優先しているようだ。
うーん、うずうずしてきた。
第2を落としてから、ちょっと調子に乗り過ぎていたからな。
うかつな行動も取ってしまったし。
落ち着こう。
使い魔達も気が緩んでいたんだろうな。
試合仕様じゃ無ければ、明日にはまた呼び出せるんだが。
ギアについては……今度こそ殴ろう。
奴を。
お、そろそろ行けそうだな。
さあ、蹂躙タイムだ。
「いいぞ、フェイ」
そして戦場は藍色の光で包まれた。
フィオ、ようやく反省。
使い魔たちはある意味不死身なんで、自分の死に対する意識が薄いんです。