成長と選別
森の中、無数のスケルトンと戦った。
俺はモンスターの個体差説には一定の信ぴょう性があると思っている。
根拠はこの森にいるグール。
奴はゾンビを襲って食っていた。
それは一種の戦闘ではないのか?
モンスター同士でも戦闘するとしたら、勝利し成長した個体も現れるのではないか?
そう考えたのだ。
そして今、目の前にいる個体。
見た目は普通の剣と盾を持ったスケルトンだ。
しかし空っぽのはずの眼窩に、俺はシャドウウルフやサハギンと同じ意思を感じていた。
それは強さも同じ。
僅かにだがはっきりと他のスケルトンとは違う。
時に剣でパリィし、時に盾で殴ってくる。
攻撃パターンが豊富なのだ。
「こいつだな」
最後の3体目。戦闘要員にこいつはふさわしい。
使い魔が主人の戦闘ロジックの影響を受けると知ったとき、浮かんだのはスケルトンだった。
武器を使用できる人型モンスター。
体格もある。
バイトでさえあれだけ俺の動きをコピーできたのだ。
こいつなら……。
「成功してくれよ」
俺はスケルトンの頭部を横薙ぎで粉砕した。
そして今、最後の使い魔が俺の足元にひざまづいていた。
種族 『スケルトン』
名前 『ネクロス』
属性 『闇』
ランク 1
使い魔登録完了
「さて、実力はどうかな」
周囲の見張りをしていたフェイを戻し、ネクロスを呼び出す。
結果は上々。3体のスケルトンを返り討ちにしたのだ。
強い。
だが……
「剣が折れたか」
味方になったことで耐久度が設定されたようだ。
ネクロスのボロいブロンズの片手剣は折れてしまったのだ。
「長所でもあり、短所でもあるか……」
フェイは魔法、バイトは自前の牙が武器なので買い与える必要はない。
しかしネクロスは装備が必要だ。出費は倍になる。
だが強力な装備があれば一気にパワーアップできる。
「出費は痛いが、仕方ないか」
俺は町でネクロスの装備を買うことにした。
「盾は奮発して鉄にするか。いや、まてよ」
剣も盾も使わないので鍛冶屋のラインナップは見ていない。
鉄より安くて良い物が作れるかもしれない。
「こんなとこか」
ネクロスの武器はロトンモスのドロップ『死蛾の鎌足』から作った逆反りの湾刀『死蛾の大鉈』。
例によって毒持ちだ。
盾はサハギンの『半漁人の鱗』から作った『アクア スケイルシールド』。
水耐性持ちだ。
俺自身は蛇皮の靴とグローブをワニ皮製に替え、蛇皮装備はネクロスに渡した。
こんなもんか。鉄製の槍が欲しいが予算が厳しい。
魔法があるし後回しだな。
「次は始まりの町探しか」
まずは森と沼をよく調べてみよう。
で、何も無ければ南へ行こう。
延々と歩けば何か見えるだろう。