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対策

 第3サーバーの偵察部隊による攻撃が開始された。

メテオライト製の防壁に立て篭もる第4サーバーの防衛部隊は1000人ほどだ。

第3サーバーの部隊は500人なので数の上では不利だ。


 加えて城攻めでは、一般的に守る側の3倍以上の数が必要と言われている。

しかし、魔法という要素のあるゲームはシミュレーションゲームとは違う。

質が数を覆す事も十分に可能なのだ。


 実際に第4サーバーの防衛兵器による攻撃は、途中で迎撃されている。

最も厄介なのは小高い丘の上に立つギアだった。

ギアの胸部から放たれる拡散ビーム『ブラフマー』。

勢いや強度の弱いボウガンの矢は焼け落ち、バリスタの矢は石に変わって落下してしまう。

また、ギアのブラフマーの発射は、第3サーバーのプレイヤーに防衛兵器の発射を知らせる合図でもあるのだ。


 とはいえ、分厚い防壁はなかなか破れない。

戦況は硬直していた。

そうなると物資の量の面で第3サーバーが有利になるのだが。

第4サーバーは決して無理をせず堅実に守っていた。

焦りは禁物だと前回の戦いで理解していたのだ。



 一方、フィオはギアとヴァルカンを残し本隊から離れていた。

シミラのステルスを纏い、飛行して敵の砦の偵察に向かったのだ。

幸い防壁の守備隊は気付かなかったので、砦に近づく事ができた。


「おお、これは中々……」


 多少継ぎ接ぎだか、防壁の材質は上級鉱石だ。

バリスタも上級鉱石製で、質はややこちらに劣るだろうか。

それでも十分脅威だが。


「ふーん、拠点の方に資材をつぎ込んだわけか」


 先ほど目にした防衛部隊の装備は、言っては悪いが貧弱だった。

元々持っていたプレイヤー以外は中級鉱石の装備で統一したのだろう。

そして、その分を砦の強化に使ったわけだ。


「うーむ、正面突破は手間がかかりそうだな……」


 自分達の拠点も自ら攻めてテストしている。

その経験からすると結構良くできた砦だ。

防壁には何かのギミックが仕込んであるような部分もある。

スパイクでも突き出すんだろうか。


「ん? ギミック? ……マズイ!」


 ここにギミックが仕込まれているなら、もう1つの防壁にも仕込まれているに違いない。

正面からの激突ならそう簡単に負けないだろう。

だが、大掛かりな罠が仕込まれているとすれば被害が大きくなるかもしれない。

偵察で戦力を消耗するのは避けたいところだ。

すぐに知らせに行こう。


! キュウ!?


「何!」


ドドドドドドドドォ


 リーフの警告の直後だった。

飛び立とうとしたところに、突然無数の魔法とオーブが撃ち込まれた。


「シミラ!」


 俺とリーフを包んでいたシミラが盾となって力尽きた。

くそ、シミラ自身は耐久力が低いんだった。

ここでシミラを失ったのはかなり痛いな。


 しかし、なぜステルス中のこっちの居場所が解ったんだ?

また同じ手を食うわけにはいかない。

調べておくか。

さて、どうやって調べよう。


 ぐるっと見渡すが何もいない。

ちょっと離れた所には続々と集まってくる追手。

そうだな、こいつらに聞けば良いか。

お、ちょうど見知った顔もいるな。


「どうも。やってくれましたね、モモノさん」


「遠目だけど見たわよ。幻魔は倒せたみたいね」


「ええ。でもどうやって見破ったんです? 魔法を使うにしても距離が遠すぎですし」


 そこが俺の不思議に思ったところだ。

何かの手段で俺の位置を掴んだとしよう。

ではどうやって狙ったのだ?

リーフの索敵範囲外からでは、とても俺を認識できないはずだ。

認識できなければ魔法は打ち込めない。


「ふふ、お返しできたみたいね。簡単よ、発信機をそこら中に仕込んだの」


「発信機?」


「そう。逆転の発想ね」


 第4サーバーは、砦の周辺に大量の発信機を設置しておいたらしい。

普通は敵が近づくと信号を出す探知機を使用する。

しかし、この発信機は常に信号を出し続ける。


 信号が途切れるという事は、そこに信号を妨害する何かがいるということ。

さっきは俺ではなく、信号の途絶えた発信機を狙って魔法を打ち込んだそうだ。

地図上のマーカーを狙えばいいのだから簡単だ。


「なるほど。シミラの能力に頼り過ぎてたみたいですね」


「こっちだって、あんな目に合えば知恵を絞るわよ」


 完全に対シミラ用だな。

さて、聞く事聞いたし撤収するか。

暴れてもいいけど、味方の安全第一だ。

すっかり囲まれてしまったが。


「じゃあ、この辺で」


「え!?」


 無詠唱で自分の真下にバイブルフラッドを打ち込む。

敵は全員水流によって体勢を崩した。

その隙に翼を広げて飛翔した。


 飛行も無詠唱最上級魔法も知らなかったはずだからな。

下を見ると皆絶句している。

うむ、少し気分が晴れた。


 しかし、いきなりシミラを失ってしまうとは・・・・・。

油断してたわけじゃないけど、相手を甘く見ていたな。


他のサーバーだって馬鹿じゃありません。


第4サーバーは、よほどシミラが怖かったんでしょうね。

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