狂戦士の決闘
戦場に立っているのは2人。
ハルバードを構えたハイ・オーガノイドのタク。
そして、グルカソードを構えた骸骨の戦王ネクロス。
「おい、お前言葉通じるんだろ? これで勝負決めないか?」
タクはビンを片方ネクロスに放った。
ビンの中身は、以前フィオが使用したのと同じ『バーサーカー・ドラッグ』だった。
お互いにこれを使って1発勝負といこう、という意思表示だった。
ネクロスはビンを見つめていたが、やがて空いた手に持った。
さすがフィオのコピー、こういう所でのノリの良さがそっくりだ。
タクも右手にハルバードを持ち、左手にビンを持った。
パリン パリン
ほとんど同時にビンを握りつぶし、それを合図に駆けだす。
15m程の距離は一瞬で0になった。
振り下ろされるハルバードを、グルカソードの切り上げが迎え撃つ。
ギイン
2つの武器のランクは同じ8だ。
ハルバードの重量がグルカソードを軋ませ、グルカソードの酸がハルバードを溶かす。
そして、2本の魔剣は同時に破壊された。
だがネクロスは止まらない。
ハルバードごと切り落とされた腕。
その断面は竹槍のように鋭利になっている。
黒骨の強度も考えれば、並の武器を超える凶器だろう。
一方でタクも切り札を切ろうとしていた。
ハルバードはフェイントで本命は左手。
ガシャリと手甲から短槍が飛び出した。
かつてレイラの暗器攻撃は、通じなくてもフィオの意表を突く事は出来た。
それを見たタクも、マサに暗器を仕込んでもらったのだ。
フィオは暗剣と言う変化球を鍛えたが、タクは正統派の暗器と体術を鍛えた。
突きだしたのは同時。
交錯する骨槍と短槍。
お互いを貫いたのも、HPが0になるのも同時だった。
「やったぜ……」
強制送還されるタクの表情は、困難を成し遂げた達成感に満ちていた。
ネクロス死す。
この事態に大いに慌てたのは、追撃から戻ったゼクであった。
防壁から離れ過ぎるのも不味いと思い、適当な所で引き返したのだ。
そして、まさかの事態に大いに慌てた。
対人戦では常勝のネクロスがやられるとは思わなかったのだ。
「うう、さすがにエースクラスを甘く見過ぎたっす。フィオさんに何て言えばいいんすか……」
ネガティブになるゼクだが、彼は決してミスを犯したわけではない。
全滅こそさせられなかったが、連合軍の被害は大きかった。
タク達エースクラスを300人も失った事も大損害だ。
ネクロス討伐と言う快挙も、その被害の大きさの前では割に合わなかった。
よって、連合軍の士気が上がるという事も無かった。
むしろ被害の大きさと、アダマンタイトの防壁と言う難問に頭を抱える事になる。
場所は変わって第4サーバーの拠点。
最外部の簡易防壁は、あっという間に破られていた。
現在は、中級鉱石の第2防壁で攻防戦が行われている。
防衛兵器もなかなか充実しており、一気に攻めるのは危険だった。
そんな時フィオはネクロスの死を感じた。
「おお? これはビックリだ」
危険を知らせる信号弾が上がらないので、防衛自体には問題ないのだろうが。
正直、意外である。
「まあ、俺は俺の仕事をすればいいか」
防衛部隊の戦力は十分だ。
レイやダムド、ゼクにティーアなど指揮官も多く残っている。
心配は無いだろう。
「じゃあ、俺も行くか。コール ギア ヴァルカン」
防壁を破壊するべく、聖魔と使い魔が進撃を開始した。
意地を見せたタク。
精鋭300人は安かったのか、高かったのか。