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友人vsネクロス

 第3サーバー拠点に新たに攻めよせた部隊。

その中にフィオの友人タクの姿もあった。

監視の情報によるとフィオは、第4サーバー拠点への威力偵察に参加している。

あいつがいないなら少しはマシなはずだ。


 第4サーバーが敵を引きつけている間に、第1、第2連合の部隊がキノコの防壁を破壊する。

それが今回の作戦だ。

第3サーバーは攻城用兵器を隠そうともしていなかったので、第4サーバーが狙われている事はすぐに判った。

そして、彼らの出撃を確認してこちらも行動を開始した。


 どうやら第2サーバーは何か攻撃を受けたらしい。

持久戦が不可能になってしまったそうだが……。

とにかく時間が無いそうだ。


 作戦は、まずキノコを物理的に排除し、再生する前に酸などの薬品系アイテムを使う。

あるいは油をかけて根元まで焼いてしまうというものだ。

唯一こちらが勝っている人数をフルに使った作戦だ。

キノコをある程度排除できたら、補給のために一度戻る事になっている。


「よし、行くぞ!」


「おう!」


「防衛兵器に気を付けろ!」


 攻撃が開始され、森林伐採のように削られていくキノコの森。

しかし、被害も決して小さくなかった。

飛来するバリスタと投石、さらに主砲が部隊を虫けらのように吹き飛ばす。

彼らは感じていた。

ゲーム違わねえ? と。


―――――――――――――――


 一方、第3サーバーの新防壁に駐留する防衛部隊。

彼らも黙って見ていた訳ではない。

キノコウォールを吹き飛ばさんばかりの勢いで攻撃を繰り返し、迎撃部隊も編成していた。


 指揮官はゼク達4人のリッチであった。

彼らは4人で150体を超えるアンデッドを支配している。

戦況を見て一気に戦力を送り込める彼らは、指揮官に向いていた。

さらに4人は全員がトップクラスの魔法使いである。


 と、ついにキノコウォールの一部が破られた。

そこから敵プレイヤー達がゾロゾロ出てくる。

しかし、彼らはそのまま呆然としている。


 当然だろう。

大きな犠牲を払い、苦労して突破したキノコ防壁の先。

そこに在ったのは、フルアダマンタイトの防壁なのだから。

そんな彼らに容赦なく防衛兵器を打ち込む。

そして、


「さあ、戦闘準備開始っす」


 ゼク達はアンデッドの巨人と竜牙兵を呼び出した。

そろそろ防衛兵器の点検と補給が必要だ。

だが、大人しくしているつもりなど無かった。

さらに


「先生、お願いするっす」


 その声を受けて、ガシャリと武器を構えたのは黒い骸骨。

この拠点に貸し出されたネクロスであった。


――――――――――――――――


「ウソだろ? 防壁がもう一つあるぞ……」


「あれ、アダマンタイトだよな?」


「もしかして、防壁全部アダマンタイト製なんじゃ……」


 ようやく突破したキノコの森。

しかし、その向こうに見えたのは頑強な防壁。

止む事の無い防衛兵器の攻撃に、心が折れそうになる攻め手のプレイヤー達。


「ビビるな! 今は気にするな!」


「まずはキノコをなんとかするんだ!」


 指揮官たちが必死に士気の低下を防ごうとする。

すると、突然防衛兵器の攻撃が止まった。

不気味な静寂。


「何だ? 弾切れか?」


「いや! ミサイルだ!」


「防壁の扉も開いたぞ!」


 開かれた扉の向こうから、第3サーバーの防衛部隊が出撃してきた。

さらにミサイルが連合軍の背後に着弾する。

しかし、金属片もキノコの素も出ない。


 代わりにハッチの様なものがパカリと開くと、中からスライム系モンスターやゴースト系モンスターが出てきたのだ。

これが本来の輸送機の使用法であり、人体実験は必要ない。

以前のフィオの怒りは正当なモノと言えた。


「くそ、退路を断たれたか……」


「おい、先頭のアレ使い魔だぞ!」


 唯でさえキノコウォールの破壊で疲弊していたところに挟撃である。

連合軍は絶体絶命となってしまった。

打てる手は一つ。

殿に決死隊を残し、残る全軍で後方のスライムとゴーストを突破する。

これしかない。



 タクも300人程の決死隊に参加した。

数ではこちらが多いが、質が違い過ぎる。

こちらは、自分を含めても魔剣を持っている者は20人もいない。

しかし、相手は全員が魔剣持ちだ。

しかも、抜いていない予備の武器まで魔剣の様だ。


 と、周囲の敵がモンスターだけになっている事に気付く。

プレイヤーは逃げた本隊を追っていったらしい。

足止めを足止めされるなんて……。

しかも、モンスター達はやたらと強い。

そして、


ザン


「ヒイィ……」


ガスッ


「ぐあっ!」


 ネクロスもその場に残り、殺戮を繰り広げていた。

その戦いぶりは友人を彷彿とさせる。

そうだ、こいつはここで倒さないと被害は計りしれない。


「皆! あいつを倒して意地を見せてやろうぜ!」


「なるほど、いいな」


「道連れにしてやるぜ! ……一回言ってみたかったんだ、このセリフ」


 さすがに決死隊は士気も実力もあり、ネクロスさえいなければ有利だった。

雄たけびを上げてネクロスに集中攻撃を開始する。

しかし、ネクロスの武器は彼らをたやすく薙ぎ払う。

エルダー・ドラゴンの鎧は攻撃を弾き返す。


 そして、ようやくモンスター達は全滅し、この時点で150対1となった。

ただし決死隊は回復アイテムを全て失った。



 激戦によって、ついにネクロスの武器が限界を迎える。

大剣とポールハンマーを失うが、決死隊はこの時点で残り50人以下となっていた。

魔法使いもMPが切れ、武器を持って戦うほどだ。



 ネクロスのハルバードが腕ごと切り落とされ、ボウガン状の腕が破壊された時点で残り10人。

すでに鎧もズタズタだが、原形をとどめている方が異常だろう。

全方位を囲まれていて尚、攻撃を紙一重で回避していたのだ。



ガッ


パキィ


 タクのバトルアックスとネクロスのマドゥが激突し、両方が砕けた。

タクは弾き飛ばされるが、その隙に他のプレイヤーが斬りかかる。


ガガガガガッ


 ネクロスの全身に刃が食い込む。

だが、プレイヤー達は気付いた。

ネクロスが長い尾を、自分の体に巻きつけるようにしていた事を。


「!」


「マズイ!」


 尻尾による薙ぎ払いが来る。

そう考えたプレイヤー達は距離を取る。


ブオン


 鞭の様に尻尾が振るわれたのは予想通り。

しかし、その尻尾が関節部分でバラけたのは予想外だった。

全方位に放たれた骨の弾丸は、囲んでいたプレイヤー達に撃ち込まれた。



 この短時間ではありえない、トッププレイヤーの150人切りを成したネクロス。

しかし、その全身はボロボロで残った武器もグルカソードだけだ。

砦に引き返そうとするネクロスだったが、プレイヤーが起き上る気配に振り向いた。


 そこには腕と共に切り落とされた、ネクロス自身のハルバードを手にしたタクが立っていた。

弾き飛ばされたことで仲間が盾になる形になり、1人だけダメージが小さかったのだ。


「最高の見せ場だな……」


 まるで決闘の様な光景にタクは心を高ぶらせる。

そして、2本のビンを取り出した。


300って映画がありましたよね。


それはさておき、ついにタクとネクロスのタイマンです。

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