表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/228

破壊工作

 初戦で手痛い打撃を受け、防御を固めた3つのサーバー。

しかし、それすらも難しいサーバーがあった。

第2サーバーである。

攻撃部隊1000人が出撃した後、大惨事が起きていたのだ。


――――――――――――


 第2サーバーの防御は他のサーバーに比べて薄い。

貧弱で単純な防衛設備は侵入も容易だ。

今、第2サーバーの拠点には破壊工作員が侵入していた。


 侵入者、リンクスはステルス状態で砦の中を移動していた。

ここに来るまでに、接触したプレイヤーは全て葬っている。

死体が残らないので騒ぎになりにくいのだ。


 彼の任務は当然、破壊工作。

武器庫や食糧庫は見付け次第破壊し、焼き払った。

見張りは全て片づけた。


 そして、リンクスはさらに奥へと忍びこんでいく。

目指すのは拠点の心臓部の一つ。

どこにあるのか判らないフラッグは探さない。

どの道、NPCの自分では破壊できないのだ。


 ならば、確実に在りかの判る設備を破壊するまで。

幸い砦の構造は、基本的に第3サーバーの物と同じのようだ。

第2サーバーは今、内側から崩されようとしていた。



 リンクスがたどり着いた目的地は工房だった。

装備の修理を行うここが壊されれば、致命的な損失となる。

武器庫が破壊され、予備の武器が無いのならなおさらだ。


 工房の中枢である炉に向かって、ソル・ブラスターをチャージする。

収束する光にステルスが解け、周囲のプレイヤーが気付くがもう遅い。

放たれた閃光は高温の炉に吸い込まれた。


――――――――――――


 すっかり落ち目のイコンだが、一応幹部待遇は与えられていた。

というのも、元犯罪プレイヤーは考え無しが多く、人格に問題があっても話の通じるイコンは必要だったのだ。


 出撃していった部下たちの様子を双眼鏡で見ていたイコンだったが、何やら拠点が騒がしい事に気付いた。

プレイヤー達が慌ただしく走り回っている。

何かを探しているようだ。


「おい、何かあったのか?」


「どうも侵入者らしい」


「武器庫や食糧庫が破壊されている」


「何だと?、見張りは何をしていたんだ……」


「全滅だよ。相当の強敵らしい」


 さすがに放置してはおけない。

そう思ったイコンは捜索に参加する事にした。

侵入者はプレイヤーではなく、設備の破壊が目的らしい。


 頭脳自体は聡明といえるイコンである。

敵の狙いをすぐに分析する。

暗殺者と言えば聖魔だが、奴は今中央の戦場で下僕のグリフォンと暴れている。

奴でないのなら、どこにあるか判らないフラッグを探すのは無謀だ。


 どこに在るかはっきりしていて、破壊されると致命的な設備といえば……。

! 工房だ。

あそこが破壊されたら装備の修理が不能になる。


「工房だ! 敵はおそらく工房に向かっている!」


 冗談じゃない。

唯でさえ不利なのに、これ以上追い詰められてたまるか。

捜索隊と共に工房へと駆けだす。


 ……間違い無い。

工房に向かう間、誰とも出くわさない。

おそらく、見張りは皆やられてしまったのだろう。

間に合うか?


 そして、ようやく工房が見えてくる。

入り口が破られている。

やはりここか!


 しかし、彼らは僅かに遅かった。

彼らが工房の中に駆け込もうとした瞬間、轟音と共に大爆発が起こったのだ。

イコンと捜索隊は訳も判らず爆発に巻き込まれ、全員が脱落した。


――――――――――――


 工房の跡地にボロボロになったリンクスが倒れていた。

異変を察知したプレイヤーが続々と集まってきている。

脱出は無理だろう。

だが任務は成功だ。


 よろめきながらも体を起こす。

命尽きる最後の瞬間まで戦うのだ。

1人でも多く道連れにしてやろう。


 傷だらけの体に戦意をみなぎらせ、咆哮を上げる。

爆発の惨状に混乱するプレイヤーに、リンクスは襲いかかった。

 

―――――――――――――


 中央の草原に出撃した部隊が全滅したのと時を同じくして、第2サーバーの拠点は工房と共に施設の2割を失った。

犯人である聖魔の下僕を倒したが、強敵の撃破にもかかわらず士気は全く上がらなかった。

当然だろう。


 工房に詰めていた職人を中心に500人以上のプレイヤーが、爆発と使い魔の襲撃によって退場したのだ。

おまけに予備の装備と食料も8割近くが失われた。

これではとても長期防衛などできない。


 たった1体の使い魔による致命的な被害。

討伐したとはいえ、相手はすでに爆発によってボロボロだった。

それにもかかわらず、相当苦戦したのだ。

士気は上がるどころか急降下し、第2サーバーは玉砕同然の戦いを強いられることになるのだった。


リンクス散る。500人以上を道連れにですが。


第2サーバーいつも貧乏くじですね……。


そして明日から少し外出します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ