シンクロと探知
「えーと、『シンクロ』か。これだな」
俺はスキル屋でスキルを購入していた。
パーティで行動する場合、マッピングスキルを持っているのは大体一人だ。
俺は平気だがマップ情報に気を取られ、注意力が低下してしまうからだ。
そしてマップ係の従魔は探知系である事が多い。
それは『シンクロ』というスキルがあるからだ。
『シンクロ』は従魔や召喚獣の探知情報を主人にも感じさせてくれるスキルなのだが、通常その感覚は結構あやふやだ。
感覚の鋭い獣人系種族にとってはむしろ邪魔だろう。
まあ、猫の暗視は便利だろうが。
しかし、『マッピング』を持っているプレイヤーの場合、探知情報がマップに表示されるようになるのだ。
まさにレーダー。
1パーティに1人必須だろう。
今までは探知スキルのあまりの値段に、必要だとは思っても手を出せなかった。
だが、『シンクロ』はお手頃価格だ。
そして、『使い魔』にも効果がある。
探知能力持ちにも心当たりはある。
〈契約に成功しました〉
〈名前を付けてください〉
種族 『ポイズンスネーク』
名前 『バイト』
属性 『水』
ランク 1
使い魔登録完了
沼でポイズンスネークを殴り倒し使い魔にした。
しかし、水属性か。
アナコンダみたいな水蛇だったんだな。
バイトを呼び出し『シンクロ』を使う。
余談だが『召喚』は「サモン」、『使い魔』は「コール」がトリガーとなる。
マップに赤い光点が現れた。茂みの点はおそらく蛇。
水中の点はスライムだろう。
探知タイプは「熱探知」だ。
蛇はピットという器官で熱を感じ取りレーダーとしている。
だから狙った獲物は逃がさない。執念深いとか言われる原因だろう。
リアリティを追求したRWOならばと思ったのだが当たりだ。
探知タイプにはそれぞれ短所がある。
視覚系なら障害物に弱く、地中や水中は索敵不能。
嗅覚系なら地中や水中、そしてゴーレムのように匂いの無い「物」系の敵は探知できない。
聴覚系はゴーストやウィスプのように音を立てない敵は探知不能で索敵範囲が狭い。
バイトの熱探知は索敵範囲は広いが、熱を発さないアンデッド、ゴーレムなどは索敵不能だ。
まあ、今のところ万能は無いということだ。
試しにバイトを近くのスライムにけしかけてみた。
物理に強いスライムとどう戦うんだろう。
バイトはバネのように飛び上がりスライムに咬みついた。
スライムが紫に染まる。
毒だ。
バイトは距離を取り、触手を尻尾で迎撃する。
酸を持っている先端に触れないように。
「これは……」
毒が切れるとまた噛みつき、ヒットアンドアウェイでじりじりと削る。
そしてスライムは力尽きた。
「そういうことか……」
間違いない。
今の戦闘スタイルはサハギン戦での俺のものを参考にしている。
使い魔が主人の強さに比例して強くなる、というのはSTだけの話ではないようだ。
戦闘ロジックも強化されている。
これはありがたい事実だ。
「次は森だな」
アンデッドだらけの森では熱探知は役に立たない。
バイトを戻してフェイを呼ぶ。
フェイは探知持ちではないが、従魔たちは危険を察すると主人に教えてくれる。
風属性のフェイなら感覚は鋭いだろう。
イメージだけど。
「モンスターの個体差ね。調べるなら奴だな」
肩の上にフェイを乗せ、俺は森に向かった。