最終試合開催
ついにこの日が来た。
サーバー対抗戦第3試合の開催日。
今までのプレイの集大成とも言えるイベントの日だ。
運営による通達によると、ちょっとした規制がされるらしい。
それは従魔などのNPCについてだ。
通常、従魔たちは死んでも1日のクールタイムを置く事で復活する。
しかし、試合中は1度やられたら復活無しにするそうだ。
攻めを従魔に任せてプレイヤーは拠点から出ない、という事を防ぐためらしい。
ってことは、使い魔も同じか。
使い魔の唯一と言っていい弱点は、HPを回復する手段が自然回復しかないところだ。
普段は気にもならない弱点だが、数日にわたる長期戦となると無視できない。
まあ、そこはリッチも同じだが。
拠点の内部に在る破壊対象、通称フラッグ。
これもNPCや遠距離攻撃では破壊できないらしい。
プレイヤーの手で直接壊せということだ。
まあ、破壊されたら負けなんだし妥当か。
すでに参加者は拠点に入り、STアップのための食事も済ませている。
空に巨大な砂時計が浮かんで、試合開始までの時間を教えている。
そして、時は来た。
ブオン
転移装置を使った時の様な感覚が体を襲う。
砦の上に駆け登ると、地平線の彼方に建物が見えた。
あれが他サーバーの拠点か。
これよりサーバー対抗戦第3試合を開始します。
3
2
1
開始!
ウワアアァァ!!
大歓声が上がり、ついに試合は開始された。
さて、当然他サーバーの拠点からも第3サーバーの拠点は見える。
それぞれの拠点の位置関係は第1サーバーはフィールドの北、第2は東、第3は南、第4は西となっていた。
向かい合う拠点が一番遠いわけだが、第3サーバーの拠点の方角には、一番遠い第1サーバーの拠点からも異様なモノが見えた。
それは一言で言うなら「大砲の乗ったキノコの山」である。
キノコウォールは成長を続け、最早拠点を覆い隠さんばかりの高さになったのだ。
砦も頂上の大砲以外、周囲からは見えない状態だった。
はっきり言って不気味である。
怪しさ満載だが、近付かないと拠点自体が見えない。
偵察やけん制の意味で、各サーバー500人程が出撃していたがキノコの森に近づいていく者は少ない。
第2サーバーはいきなり1000人ほどが中央の平原に出撃している。
大胆と見るか軽率と見るかは人それぞれだが、この場合は軽率だった。
彼らを止めるために第1、第4からもプレイヤーが出撃する。
そこに、それは放たれた。
最初に気付いたのは誰だったのだろう。
キノコの森から何かが飛んできたのだ。
「おい、あれ……」
「ペットボトルロケット?」
確かに見た目はペットボトルロケットだった。
サイズと金属製である事を無視すれば。
「嘘だろ!?」
「ミサイルじゃん!」
「ゲーム間違えてるって!」
そんな叫びが響く中、十数発のミサイルは着弾して金属片をばらまいた。
もっとも1000人単位の戦場からすれば、直接的な被害は小さいと言っていい。
ダメージも回復すればいいことだ。
しかし、プレイヤー達の精神的ショックはそうもいかない。
呆然とするプレイヤーが溢れる戦場へ、さらなる追い打ちがかけられる。
キノコの森から無数の影が飛翔したのだ。
その数およそ1000体。
先頭を駆けるのは空色のグリフォン。
「攻撃部隊突撃!」
飛行系従魔と飛行能力を持った種族によって構成された攻撃部隊。
いや、爆撃部隊が一気に戦場に到達、上空から無数のオーブをばらまいた。
それは正に空爆だった。
最初から、ここまで盛大にアイテムを使えるのは物資の量の差だった。
加えて、結果が出ればOKという認識から節約という言葉も捨て去っていた。
大パニックになった戦場に、さらなる混乱の火種が放り込まれる。
シュルルルルル
「またミサイルだぞ!」
「防御!」
飛来する第2陣に備えるプレイヤー達。
しかし、第一陣のように金属片は飛びださなかった。
ボフン
代わりに撒き散らされたのは、何かの粉だった。
毒? しかし毒耐性など常識だ。
これは一体?
不思議がるプレイヤー達に、第2陣「キノコミサイル」が牙を剥く。
ポコポコポコポコポコポコ
「うわあああ!?」
「何だこれ!?」
「キ、キノコか!?」
突然、全身に生えてくるキノコ。
その、あまりのおぞましさに大パニックになるプレイヤー達。
そこに、容赦無くハゲワシのように襲いかかる第3サーバーの攻撃部隊。
「今だ!」
「押せ押せ!」
「ぐああ!」
「うぐぅ……」
「逃がすな!」
「ギャアアァ!」
惨劇の時間は過ぎ、第3サーバーの部隊は悠々と引き揚げていった。
襲われたプレイヤー達はほぼ全滅。
被害は3サーバー合わせて1500人を超えた。
20000人の内1500人がたった一度の戦闘で脱落したのだ。
3つのサーバーは戦略の見直しを迫られる事になり、貝のように閉じこもる事になった。
試合開始からわずか3時間後の事である。
炸裂ミサイル兵器。