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投擲オーブ

 さて、酷い目にあったが何時までも腐っているわけにはいかない。

仏の心で許そうじゃないか。

だが、愚痴らずにはいられない。

オーブ屋にでも聞かせるか。



「え? 乗ったんですか、あれに」


 ん? なんだそのリアクションは。

それじゃ、まるで……


「あれは元々、人間が乗るような設計じゃないはずですが」


 騙されたー!!!

そうだよな、おかしいと思ったよ!

人間魚雷じゃないんだからあんな物に乗るなんて変だよな!

あ・の・ヤ・ロ・ウ……。


 思い起こせばあいつは、輸送機としか言っていない。

実用化すれば役に立つとはいったが、何を乗せる物なのかも言っていない。

嵌めやがったな、あの詐欺師!

仏はやめて閻魔大王に代わって裁いてやる!


「まあまあ、落ち着いて下さい」


 ブチ切れた俺を止めるオーブ屋。

殺人鬼の様な殺気を放つ俺を、平然となだめる辺り度胸がある。

しばらくして落ち着いた俺に、輸送機と生物兵器について説明し始める。


「あのミサイルには、例の嫌がらせキノコを満載するバージョンもあるんです」


「確かに集団に打ち込めば効果は抜群だろうな……」


 仲間は無害と解っているから、被曝しても無視すればいい。

しかし、敵はそうはいかない。

混戦状態で使用されれば一気に形勢を有利にできるだろう。


「輸送機には、ゴースト系やスライム系のモンスター達を乗せる予定だったんですよ」


「ああ、なるほど」


 確かに物理的な衝撃に強い奴らなら、あれにも平然と乗れるだろう。

逆に言えば、普通の人間が乗る事は考慮されていない。

……俺、もしかして死んでもおかしくなかったんじゃないか?


「彼にも悪気は無いと思いますよ。プレイヤーが乗り込めれば、さらに有効なのは間違いないですし」


「俺に一言あるべきだろう」


「言ったら嫌がるでしょう?」


「当たり前だ。モルモットは勘弁だ」


「まあ、そういうわけでしょう」


「納得いかねぇ……」



 そういや、肝心のオーブ開発はどうなったんだろう。

匠の指輪を見せて、新アイディアについて話してみる。


「オーブを仕込んだ投擲ナイフですか……」


 最上級オーブは通常の3分の2サイズ、上級オーブはビー玉サイズにまで小型化できたらしい。

十分すぎる成果だ。

現在そのノウハウを公開し、かなりのペースで量産しているようだ。


「今からでは指輪の解析と量産は難しいですね」


「時間が無いからな。でも自分で使う分を用意したいんだ」


「ナイフはあるんですか?」


「ああ、ダマスカス製を100本以上な。中級鉱石が値崩れしてるから安かったぞ」 


「ふむ、上級オーブの方なら技術を教えたNPCが売ってますよ」


 ほう、そんな事もできたのか。

特許みたいなもので、そのNPC商人から売り上げの一部がもらえるらしい。

まあ、自分で売った方が儲かるが、それが面倒なプレイヤーが取っている方法らしい。


 そしてNPCショップの良い所は、金さえ払えばすぐに大量に物が手に入ることだ。

どうせ使い捨てのナイフだし、NPCショップでオーブを買って、自分で魔法を込めよう。

ナイフへの取り付けも、NPC鍛冶屋で一気にやってもらえばいいか。



 そして完成したのがオーブ付きナイフだ。

柄頭の部分にビー玉サイズのオーブが着いていて、ここに魔法を込められる。

柄には宝石をはめ込めるようにもなっている。

使い捨て武器としては恐ろしく高級品になったな。


 まあ、金なんて余らせても仕方ない。

次でラストの試合なんだし、使いきればいいのさ。


 まあ、その前に実験だな。

ターゲットはファイヤー・ドレイク。

宝石はアクアマリンとパール。

オーブには水と氷の魔法を込める。


 これって小型のミサイルだよな。

うん、有効そうだ。

待ってろファイヤー・ドレイク。

この胸の苛立ちをキサマにぶつけてやる!


 ……はい、八当たりです。

否定はしません。


主人公は実験台が似合ってるんですね。

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