カビキラー
今回のミッションはシュリーカー討伐だ。
奴の素材で実験したいようだ。
あの後よく話を聞いてみると、キノコハウスを防壁や拠点強化に利用したいという事だった。
紛らわしい言い方をしてくれる。
……信じて良いのだろうか?
俺は唯植えるだけだったが、品種改良チックなこともやってみたいそうだ。
毒キノコにでもしたいのか?
それとも滑って登れないナメコの防壁?
俺には想像できんな。
試作品だって渡されたのは粉末状のアイテム。
実はオーブ屋もかかわっているらしく、非常に怪しい。
危険な香りもするが、気になるのも確かだ。
これが生物兵器? 見た目は唯の粉だが。
さて、カビのモンスターであるシュリーカーは火に弱い。
空中からの攻撃が有効なのは判るが、火と言えばヴァルカンだろう。
今回は溶岩鎧をパージした、高温モードで暴れてもらおう。
高温モードは防御力は落ちるが(それでも十分硬いが)攻撃力は一気に上昇する。
なにしろ近づくだけで焼かれてしまうのだ、俺自身も熱くて近寄れない。
今回は、シュリーカーの中心部をマグマの海に変えてもらおうと思っている。
周りにとっても危険なので、パーティを組んでいるとやりにくい作戦だ。
「コール ヴァルカン プルート カリス」
シュリーカーのもとにたどり着く。
なんか以前見た時より小さいな。
そう思った瞬間、菌糸が爆発的に伸び出した。
ボスを中心に円を描くように菌糸は広がっていく。
ポコポコと本体より小型の子株が生え出す。
おっと、爆弾が来る前に空中に逃げるか。
作戦の通りヴァルカンは本体に突っ込み、装甲をパージする。
とたんに周囲の温度が上昇し、地面が赤熱化していく。
空中に逃れた俺達も本体を焼き払う。
しかし誤算もあった。
マグマの海でボスの周囲は菌糸が完全に無くなった。
しかし、菌糸は本体から離れた部分が勝手に増殖していく。
そういや菌類ってそういうものだよな。
忘れてた。
「うーん、火力が足りないか……」
フィールドがボスで覆い尽くされてしまった。
ヴァルカンは孤軍奮闘しているが、まだボスのHPは結構残っている。
上空からの攻撃は、ドーム状に張り巡らせた菌糸に防がれてしまう。
強度は低いのだが再生力が凄いのだ。
ドームの中からは爆発音が聞こえる。
ヴァルカンが爆弾胞子で攻撃されているのだ。
熱には強くても衝撃はそうはいかない。
うーん、何か手は無いだろうか。
蟹とは逆に、再生するタイプはロンギヌスと相性が悪いんだよな。
何か手は……。
「そういや、これって結局何なんだ?」
取り出したのは、渡された試作品。
詳しい説明は無かったが……。
使ってみるか?
試しに少し手に取ってみる。
サラサラの粉末はキノコハウスの素と似ている。
何に使うんだろう? そう思った瞬間
ポコポコポコ
「うわ!? キモ!」
突然、掌からキノコが生え出した。
ビックリして払いのけるとポロポロ落ちた。
別に手に根を張ったわけではないようだな。
俺はマタンゴになりたくは無い。
「あれ、ビンは……」
ビンは今の騒ぎで落としてしまった。
中身を撒き散らしながら落下していく。
すると……
ポコポコポコポコポコポコポコポコポコ
シュリーカーの菌糸からキノコが生え出した。
しかも、今度はしっかり根を張っているようで増殖していく。
悶えるシュリーカー、呆然とする俺。
しばらくすると、シュリーカーはキノコに包まれてしまった。
おい、マジ物の生物兵器じゃないか。
なんてモノ持たせてくれるんだよ。
プスプスプス
しばらくすると菌糸から煙が上がってくる。
キノコに水分を奪われ、ヴァルカンの高熱で引火したようだ。
キノコごと燃えていくシュリーカー。
再生能力も失っているようだ。
ドームが崩れ、ようやくヴァルカンとボスの本体が見えた。
どっちもボロボロだが、この状況ならもうボスに勝ち目は無い。
俺達も本体を狙い、止めを刺した。
やれやれ、少し甘く見ていたな。
生物兵器のおかげて助かったが素直に喜べない。
俺がキノコに襲われたらどうするつもりだったんだよ……。
ソロドロップは『匠の指輪』というアクセサリだった。
効果はアイテムの遠距離使用。
例えば、オーブは自分が手で持った状態で起動させるので、精々投げる位しかできない。
しかし、このアクセサリでマーキングしたオーブは、罠の様に遠くに設置して自由に起動できるのだ。
使い方次第では凄い有効そうなアクセサリだ。
さて、依頼の素材も集まったし戻るか。
こんなバイオウェポンを持たせた事についても文句言わないと。
っていうか、この素材渡して大丈夫なのか?
もっとヤバい物作ってしまうんじゃないだろうか……。
いやいや、そんなヤバい物じゃないですよ。
精々ネタアイテムなんですホントは。