従魔の精鋭
広場の一角にゴーレムが整列している。
彼らは第3試合参加者の従魔たちだ。
生産職はフル活動で物資を集め、それをプレイヤーに注ぎ込んでいる。
ゴーレムも上位鉱石製は必須なので、鉱石を配布しているのだ。
鉱石を吸収しメテオライトやミスリル製から、アダマンタイトやオリハルコン製にランクアップしていくゴーレム達。
ちなみにダマスカスやヒヒイロカネ製のゴーレムは少ない。
それは武器には向いているが、防具には向かないからだ。
ゴーレムは自身が鎧だからな。
そんな様子を見ながら俺は職人ギルドのマスターに話しかけた。
前から聞いてみようと思っていた事があったのだ。
「なあ、例のギミックは何でギアだけに組み込んだんだ?」
大抵のゴーレム達は大盾と武器を装備している。
現在は魔剣を装備している者もいるほどだ。
しかし、体に直接ギミックを組み込んでいるのはギアだけだ。
「ん? ああ。そいつはな、組み込めないんだよ」
「は? 実際に組み込んだじゃないか」
「そうじゃない。俺達もあの後、何体かにギミックを組み込もうとしたんだ。でも出来なかった」
「失敗したのか……」
「ああ。ゴーレム自身は無事だったが、ギミックの素材はパアになった」
初耳だな。
じゃあ、成功例はギアだけなのか。
「失敗ってどうなるんだ?」
「まず、複合魔法合金にしようとすると、その部分が崩壊する。そして、単独の構成素材じゃギミックを組み込むのに強度が足りない」
「原因は解ってるのか?」
「予想だが、ST不足だ。ゴーレムはSTが低くても、素材さえ吸収させればランクアップできるからな。素材は上等でもSTが低い事が多いんだ」
「ふーん、成る程なぁ」
ギアは第1エリアから戦い続けている百戦錬磨のモンスターだ。
STの高さも保証されている。
そういや、最初の被検体に選ばれたのもそれが理由だったな。
納得して、なんとなく辺りを見渡す。
巨人系従魔の採寸をしている職人もいれば、従魔にフードを与えているプレイヤーもいる。
ん? あれは……。
「おい、ドラゴンがいるぞ」
「知らなかったのか? 必死になってレッサー・ドラゴンを従魔にしようとしてる奴は結構いるんだぞ」
ちなみに竜の谷後半に低確率で出現するレッサー・ドラゴンだが、総合能力はワイバーンなどより高い。
しかし、飛行能力や機動力では劣る。
この辺は好みだろう。
「そうか。確かにまあ、巨人を従魔にできるならドラゴンもやれるか」
「ネフィリムやフォモールにチャレンジしてる奴らもいるしな」
魔法を使える巨人族は戦力としては最高クラスだ。
狭いところでは呼べないという欠点はあるが、次の試合は野戦だしな。
フォモールは山羊頭で、悪魔っぽいところがひそかに人気だ。
ネフィリムは翼があり、飛行はできないが図体の割に身軽だ。
おっと、もう一つ聞きたい事があったんだ。
話がそれたな。
「なあ、『ロンギヌス』を組み込んだ武器って他に作ったのか?」
「いや、作っていない。それどころか現状じゃ2属性以上の付加も付けられない」
「そうなのか? じゃあ、何で竜槍杖は着けられたんだ? 邪竜素材持ってる奴は他にもいるだろう?」
「多分、眼のおかげだろう」
「眼……この宝玉か」
「ああ。そいつを持ってたのはお前だけだ。当然組み込んだ武器持ってるのもな。他の武器は駄目で竜槍杖だけ、となると他に理由が思い当たらん」
「なるほど……」
「カリスの能力と『ロンギヌス』の能力が同じなのも納得だろう」
「そうだな」
さて、大分話し込んでしまった。
何時までも邪魔してちゃ悪いな。
そろそろ行くか。
そう思ったのだが……。
「ちょっとまて。お前に頼みたいことがある」
キター!
久々に来たよ、このパターン!
嫌な予感ビンビンだよ!
「何だ? 何をさせる気だ?」
「そう警戒するな。腐海で素材を集めてきて欲しいだけだ」
そして、サーバー有数のマッド野郎は言った。
実に良い笑顔で。
「生物兵器の材料をな」
また、この男はなんて事を言い出すんだ……。
ゾンビに襲われたいなら亡者の都に行けよ……。
まさかのウイルス兵器?
そんなわけありません。
もうちょっと真っ当です。