死神の襲撃 他サーバーの場合
大規模防衛戦のトレーニングとして開催されたイベント「死神の襲撃」。
第3サーバーにおいてはプレイヤー達に連携、協力の重要性を認識させた。
また、補給やマジックアイテムなどの点で、生産職の重要性も改めて知らしめた。
総合すると非常に実りの多いイベントであった。
では、他のサーバーではどうだったのだろうか。
第1サーバー
押し寄せるアンデッドの群れは、防壁に近寄る事も出来ずに殲滅されていく。
防壁の上には魔法職がずらりと整列し、魔法を打ち込んでいる。
ランク2程度が中心の雑魚モンスターは、機関銃に薙ぎ倒される様に、あるいは砲撃でも受けた様に倒されていく。
少数の強敵や飛行する敵は、近接職が各個撃破していく。
リーパーも順調に数を減らしており、直にアンデッドが合体して巨大化するだろう。
第1サーバーではこのイベントを予行練習と見なしており、実際に使用する予定の作戦を採用している。
第3試合では、まず防御を固めるというのが決められた方針だった。
戦況は順調だった。
しかし、格下ばかりで数だけの相手なのだから当たり前とも言えた。
そして、そんな状況に不安を覚える者もいた。
フィオの友人であり、職人のマサもその一人だった。
「捻りが無さ過ぎる……」
ハンマーで雑魚を叩き潰してポツリとつぶやいた。
以前フィオから聞いた話では、第3サーバーはイベントの際に色々な策を考案していた。
防壁前のトラップ、補給ポイントの設置、通信アイテムの開発、どれも自分達は使っていない。
使う必要が無いのだと言えばそれまでだ。
だが試合でも使わないのか? 使うなら、今練習した方が良いのでは?
有効な案が出なかったのは事実だが……。
そもそも、自分はサポート担当の職人として参加したのだ。
しかし、敵が弱かったので職人も戦闘に参加している。
試合ではそんなわけにもいかないだろうに、こんな緊張感の無い練習で良いのだろうか。
「力押しすぎる……」
こちらの作戦は魔法による殲滅と強敵の各個撃破。
こんなもの策と呼べるようなものではない。
自分達は格上を相手にしなければならないのに、これでは唯イベントをこなすだけだ。
今まで作戦や情報を、第3サーバーに頼っていたツケなのだろうか……。
自分たちで策を練る事を忘れてしまったようだ。
第3サーバーは悪魔がいるから強いのだ、と考えている者は多い。
実際、最高戦力である事は間違いないだろう。
だが、彼は軍師や戦略家ではない。
第6感じみた勘の良さはあるが、あくまで1人のプレイヤーだ。
つまり、前回の試合で第2サーバーとの戦いで見せた戦術。
あの見事な戦い方は、彼ら自身の物なのだ。
しかし、悪魔1人に全滅させられたため、「悪魔さえどうにかすれば」という考えに取りつかれている者が多いのだ。
もっと真剣に全体の動きを考えなければ。
友人たちは理解してくれるだろう。
だが他のプレイヤーは?
5000人を納得させられるだろうか?
フィオは言っていた。
戦いは始まる前の準備で半分は結果が決まる、と。
なら自分達はどうなんだ?
マサの不安は募るばかりだった。
第2サーバー
戦場にはギスギスとした雰囲気が立ち込めていた。
お互いを信用していない者同士が、肩を並べているのだから当然だろう。
自由参加なので相手が犯罪プレイヤー達であっても参加を拒むことはできない。
そして、純粋な戦闘能力で選んだ第3試合参加者5000人の中には、堕天使イコンを始め元犯罪プレイヤー達も多いのだ。
札付き達は1ヶ所に集められた。
奇しくもそれは、当時の第3サーバーとよく似た布陣だった。
しかし、彼らには策も無ければ連携も無い。
個々が自分の判断で戦うだけだ。
連携をとれるような関係ではないのだから。
一般プレイヤー達も、歩み寄る気は無かった。
一度裏切られているのだから。
そして、彼らを気にするあまり思い切った作戦は立てられなかった。
そんな物は無くても十分クリア可能なのだから。
しかし、地力の差のおかげで戦線が崩れる事が無かったのは、彼らにとって幸運だったのだろうか?
もし、戦線が崩壊し、強制的にしても協力する事になれば、その後の関係は違ったのかもしれない。
しかし、イベントは特に苦戦もなく無事に終わった。
彼らの関係も変化する事は無かった。
そして、対決の日が近づく。
冷静で思慮深い性格のマサ君でした。
必要だからこそ磨かれる、第3サーバーは良いタイミングでイベントが起きたというわけです。