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火竜の王と黄昏の帳

 『ファイヤー・ドレイク』討伐隊は順調に進んでいた。

彼らは皆、火属性に対する備えをしており、討伐の成功を疑っていなかった。

しかし、彼らは知らなかった。

ファイヤー・ドレイクはその名に反して『火』『光』『雷』の3属性を持っている事を。


 中ボスの属性はランダムだが1つだ。

その慣れが彼らの考えを縛っていたのだろう。

そして、戦いの結果は……。



第3の町冒険者ギルド


「へえ、ファイヤー・ドレイク討伐は失敗したのか」


 テュポーン討伐に成功したメンバーは宴会中だ。

下戸の俺は途中で抜け出したのだが、ボロボロになったパーティが戻ってきたので話を聞いたのだ。

火属性耐性を高めて行ったのに、予想外に効果が薄かったという話だった。


 それを聞いて俺はすぐに気付いた。

なぜならリンクスの【ソル・ブラスター】も『光』『火』『雷』の複合攻撃だからだ。

いずれ、同じような攻撃手段を持っている敵が現れるだろうとは思っていた。

そうか、ファイヤー・ドレイクがそうだったか。


 だが、こっちにはドラゴン・バスターの称号という切り札がある。

この効果が自分以外にも発生するのは確認済みだ。

掲示板を見るとファイヤー・ドレイク討伐の募集はいくつかある。

俺は、明日の討伐を予定している依頼書を受注してギルドを後にした。


 翌日の昼、竜の谷の入口に参加メンバーが集合していた。

募集したプレイヤーは俺の参加を知ると大喜びだった。

称号の効果は、メンバーにも発生する事を教えるとさらに喜んだ。

参加メンバーの中には、昨日のテュポーン討伐に参加した者や討伐に失敗した時のメンバーもいた。

人の事は言えないが昨日の今日でよくやるな。


 俺はついでにメンバーに、ファイヤー・ドレイクが複数属性を持っているだろう事を伝えた。

熱線状のブレスを放ったことから、おそらく光属性は持っているだろうという推測も話した。

話を聞いたメンバーは、装備を変更したりアイテムをチェックしたりして準備を整えた。

そして『竜の谷』後半に進みだした。


 道中は拍子抜けするほど楽だった。

何しろドラゴンすら、たやすく倒せるのだ。

称号の力は偉大だな。


 そして最奥部で遂にパーティは大ボスと対面した。

ファイヤー・ドレイクは見た目はレッドドラゴンだが、エルダー・ドラゴンより一回り大きく翼が4枚ある。

とりあえず確実に判明している火属性の弱点を突けて飛行可能なメンバーで行くか。


「コール フェイ プルート カリス」


 ボスが空中に飛び上がり、プレイヤーもある者は飛行で、ある者は従魔で飛び上がる。

俺が展開した翼に驚きの視線が集まるが、今は説明している場合ではない。

ボスのブレスが空中を薙ぎ払う。


 こいつの恐ろしいところは、ブレスの溜めや隙が無いことだ。

しかもブレスのタイプは熱線だ。

撃ってからではかわせない。


 どうしても回避に重点を置く事になり、攻めが甘くなる。

長期戦になると精神的な疲労で不利になるんだが……。



 かなりの時間がたち日が傾いて来た。

目の前のボスは全身に炎を纏っている。

くそ、やっぱりこれ系の能力を持っていたか。


 この能力が極めて厄介なのはヴァルカンが証明している。

さて、どうするか……。

火属性になり、プレイヤーの盾になっていたカリスの消耗が大きいな。

今回もロンギヌスで破れるだろうか?


ツンツン


 そんな事を考えていると、突然肩を突かれた。

振り向くとそこにはフェイがいた。

何やら自分と空を指差している。

何が言いたいんだ?


 フェイの能力を確認してみると、そこにはスキルが追加されていた。

これは、時間帯限定スキルか?


【黄昏のとばり】 使用条件:黄昏時のみ使用可能

効果:全敵ユニットのSTダウン スキル封印


「な、な、な……」


 何だこれ……。

効果時間は30分ほどだが、この効果は外道すぎる。

手詰まりの今、使わない選択は無い。


「聞いてくれ! 今から強力な弱体化をかけるぞ!」


 メンバーに知らせてから、フェイにスキルを使わせる。

すると空から藍色の光の粒子が降ってきた。

まるでダイヤモンドダストの様な幻想的な光景。

俺も皆も思わず呆然とする。


 異変はすぐに現れた。

ファイヤー・ドレイクの熱線が来ないのだ。

皆、隙だらけだったのに。

目をやると炎の鎧を失い、ブレスが吐けず混乱するボスの姿があった。


「チャンスだ!」


「行くぞ!」


「仕留めろ!」


 一斉に襲いかかるプレイヤー達。

一度攻勢に出る事ができれば、称号の効果で一気に押し切れる。

さっきまでの苦戦が嘘のようにあっさりとファイヤー・ドレイクは倒された。

フェイにこんな奥の手があったとは……。


「おおー、『灼熱のピアス』か」


「火属性軽減だって。すげえ……」


「フェイちゃん、天使様だ」


「そういや、あの翼って……」


「あ、いない! 逃げたぞ!」


 色々突っ込まれる前に俺は逃げだした。

情報自体は公開してるんだからそっちを見てもらおう。

初回報酬のピアスを早速着ける。

ちなみにテュポーンドロップのエンブレムはコートに付けた。

バックプリントみたいで派手だ。


 なんにせよ、これで一通り攻略完了だ。

装備も大体いいとこ行ってるが、強化が可能か一応聞いてみるか。

テュポーンとファイヤー・ドレイクの素材もあるし。


 最終戦の日付もそろそろ決まるだろう。

そういや、他のサーバーでは「死神の襲撃」やってるんだっけ。

せっかくの訓練イベントだけど、今の彼らなら力押しでもどうにかなっちゃいそうなんだよな。

サーバーの連携と結束を固めるチャンスなんだけど、有効利用できたのかねえ。

補助職のフェイの切り札はやっぱり補助。


縛りはあるけど凶悪です。

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