表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/228

竜巻の巨人

 浮遊島には俺を含めて50人の精鋭が集まっていた。

目的は大ボス『テュポーン』の討伐だ。

この浮遊島の主にして古竜に匹敵する大巨人。

幾つものパーティが何度も挑んだが、いまだに討伐されていない。


 そして今回、浮遊島の攻略に情熱を燃やす連中(確か真っ先に突っ込んで死にかけ、真っ先にテュポーンに挑んで殺されかけた連中だ)がレイドメンバーを募集したのだ。

メンバーは全員上級者、これで駄目ならしばらく攻略は控えるそうだ。


 テュポーンは俺も一回見た事があるが、ほとんど怪獣みたいな大きさだった。

アイスマンモスが家ならテュポーンはビルだ。

蛇の下半身は列車みたいなもので、薙ぎ払いに当たれば最早事故だ。

両腕に生えている100本の蛇は、全方位レーザーのようにブレスを撒き散らす。


 誰かを守りかばう余裕は無い。

故に集まった者たちは、自分の身は自分で守れる万能型のプレイヤーが大半だった。

地上では尻尾に一気に薙ぎ払われるので、飛行系従魔を連れている者が大半だ。

ペガサス、グリフォン、ヒッポグリフ、珍しいところでは巨鳥ルフやマンティコアなどもいる。


「さーて、決戦だな」


「腕が鳴るぜ」


「じゃあ、行くか」



 浮遊島の中心部には神殿の様なものがある。

もちろんサイズはケタ違いで、とんでもない広さだ。

ネフィリムやフォモールなどの上位巨人を蹴散らしボスのいる祭壇にたどり着く。

テュポーンは巨人の王であり守護神なのだ。 


〈オオオオオン〉


ゴォ!


 唸り声と共に暴風が吹きつける。

テュポーンがその巨体を起こし、こちらを睨みつけてきた。

俺もベルク、プルート、カリスを呼び出す。


「よし、攻撃開始!」


 一斉にレイドパーティが空に舞い上がる。

俺もベルクに乗って飛翔する。

まずは奴の武器である両腕の蛇をなんとかしないと。


〈グオアアア!〉


 カリスは宿敵が相手だからだろう、何時になく好戦的だ。

次々と虹色の光弾が生み出されボスに撃ち込まれる。

的がでかいから狙わなくても当たるな。


 腕の蛇は1本1本が電柱のような太さだ。

長さは長い物だと20mはある。

射程長いな、しかもブレス吐くし。

 

ブォン!   ズゴァ!


「うおっと!」


 ボスが腕を振るうと竜巻が発生した。

距離があるから、と安心していたプレイヤー数人が呑み込まれてしまった。

接近している俺にとっては腕自体の方が脅威だが。


 さすがにベルクは経験豊富だ。

蛇の射程ギリギリを飛んでくれる。

俺は届かず、伸びきった蛇を切り落とすことに専念できる。


 周りのプレイヤーも堅実に戦っている。

一撃目で懲りたのか、遠距離プレイヤーも動きまわって的を絞らせない。

カリスは風属性にチェンジして、竜巻やブレスを防ぐ盾としても活躍している。

プルートは鎌を振るって蛇を切り落としている。

そのペースは周囲のプレイヤー以上だ。


 もう蛇も残りわずかだ。

このまま行けば勝てそうだが、そう甘い相手ではない。

邪竜と同じく、ここからなのだ。


〈ウオオオオオ!〉


 突如、咆哮をあげるテュポーン。

すると奴の体が風の鎧に包まれた。

まるで奴自身が竜巻に変わった様な光景だ。


 そう、今までの挑戦者たちは、この状態になったテュポーンを攻めきれなかったのだ。

近距離、遠距離関係無く、攻撃をそらす風の鎧。

唯一の穴は真上だが、ボスもそれを承知しているので危険すぎるのだ。

風の鎧は、内側に入った者にとっては風の檻なのだから。

俺の出番というわけだな。


「よし、やってみるわ」


「了解」


「全員攻撃準備!」


 そして俺とベルクはボスの足元に向かって突撃する。

ベルクも嵐を纏い、強風を相殺する。

一気に距離を詰め、風の鎧に接触するところまで近づく。


「行くぞ! 『ロンギヌス』起動!」


 竜槍杖がオーロラに包まれ、全てを切り裂く神槍が風の鎧を貫いた。

そのままベルクは急上昇、上へ上へと風の鎧を切り裂いていく。

切り裂かれた風の鎧は消滅し、唖然とするボスに攻撃が開始される。


 ミッション成功だ。

ロンギヌスはまだ起動中。

ついでに食らわせてやる。


「【グングニル】!」


 オーロラを纏った神槍は、流星のようにボスの頭部に突き刺さり、そのまま足元まで貫通した。

よろめくボスにさらに追撃が加えられる。

さしものテュポーンも遂に力尽き、爆散した。


 一気に上がる大歓声。

第3エリア最強と思われるボスが討伐された瞬間だった。

生き残ったメンバーは47人。

あの竜巻を食らった3人はやられてしまったようだ。

まあ、減りはするが素材はもらえるし我慢してもらおう。


「出た、レアドロップ!」


「『竜巻のエンブレム』?」


「風耐性が凄いぜ!」


 初回ドロップは属性軽減アクセサリだった。

一気に50人分か、気前いいな。

それだけテュポーンが強敵ってことだが。

ロンギヌス無しの力押しで勝てるか、といわれると正直判らないもんな。


 何にせよこれで残るボスはファイヤー・ドレイクのみか。

こいつもレイドの募集があったんだっけ。

成功したんだろうか?

負けたのなら、ふふふ、俺の出番ですな。



強敵を倒してちょっとハイになってる主人公でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ