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古城制覇

　『ビースト・ソウル』の効果は確かに凄いが、俺には全く意味が無い。

そういうわけでオークションに出すことにした。

別に金に困っているわけではないが、オークションに出すと宣伝になるのだ。

『ビースト・ソウル』の存在を広く知ってもらうには最適だ。

　そういえばオーブ屋の方はどうなったかな。

そろそろ様子を見てこようか。

「ああ、助かりましたよ。はい、結晶はお返しします」

「その様子だと、上手く行ったみたいだな」

「ええ、もう少しで通常サイズです。それと、その結晶ですけどアクセサリになりそうですよ」

「へえ、そのまま持ってればいいのか」

「いえ、腕輪か何かに取り付ければ。簡単な作業ですし私にもできますよ」

「んー、そうだな……」

　お、そうだ。

フェイにも何か作ってやろうと思っていたんだ。

前衛じゃないから後回しにしていたけど、長い事装備を変えていないもんな。

「コール　フェイ」

「フェイに装備させるんですか？」

「ああ、サイズは合わせてくれ」

「はい、じゃあすぐ用意しますね」

　そして完成したのは『永久氷晶の腕輪』。

効果は「魔法威力上昇（大）」と「氷魔法威力上昇（大）」だ。

フェイは長い事マジックリングだけだったからな。

久々の新装備だ。

「素材はオリハルコンですから防御力も結構ありますよ」

「そうか、サンキュ。じゃあ、がんばれよ」

　お代を払って店を後にする。

じゃあ、今度こそ『古城』を制覇するか。

　古城の後半には敵としてヴァンパイアが出現する。

獣人の敵といい紛らわしい。

ヴァンパイアは種族スキルの【ヘルファイア】を使ってくるのが面倒なのだ。

使ったヴァンパイアを倒さないと消えないからな。

　奥に進んで行くと見知った顔を発見した。

レイさん達『血の棺』のメンバーだ。

近付いて行くと気付いた。

ヴァンパイアのプレイヤーがレイさんを含めて７人いる。

「おや、フィオ君じゃないですか」

「どうも。ヴァンパイア転生成功したんですね」

「ええ、私の眷属だった３人の内、２人は。こっちの３人は新しく【眷属化】で転生したんです」

「やっぱり予想通りの条件でしたか？」

「ええ。今はヴァンパイアのスキルの説明をしていたんです。まあ、全員がヴァンパイアになるとパーティバランスが崩れますし、一度戻る所だったんですけど」

　確かにヴァンパイアは壁役には向かないみたいだしな。

しかし、１人転生できれば３人眷属にできるわけだし増員は早そうだな。

レイさん達と別れた俺は、そのまま最奥に向かった。

「うわ、混んでるな」

　レイさん達が転生条件を実証してくれたもんな。

我も我もと、凄い気合いだ。

ここは順番待ちですな。

単純に倒しに来てる奴はどれくらいいるんだか。

　十数分で順番が回ってきた。

転移先は玉座の間だった。

俺のホームの玉座の間より遥かに豪華だ。

クヤシクナンテナイヨ。

　大ボス『ヴァンパイア・マスター』は例のごとく、転生のヒントをしゃべっている。

周囲には大量の雑魚ヴァンパイアとサキュバスっぽい悪魔が。

そしてボスが腰から優美なレイピアを抜いた。

「コール　ネクロス　シザー　リンクス」

　ヴァンパイアの弱点は光。

そして魔法より物理の方が有効。

雑魚を使い魔に任せ、俺はボスに向かって駆けだす。

当然竜槍杖の付加は光属性だ。

　ボスがヘルファイアを放つ。

俺はそれを竜槍杖で打ち払う。

同時に暗剣を放ち牽制する。

ボスは暗剣をレイピアで弾くが、その隙に距離を詰める。

　レイピアも突き中心の武器だが、リーチで負けている上に一撃の重さが違う。

接近すれば、こっちは穂先と柄の連撃と短剣による二刀流だ。

そして、手足を振るだけで遠距離攻撃ができる暗剣は、対人戦では極めて有効だ。

　ボスの眼が光りこちらを見つめてくる。

魅了の魔眼は対策済み。

メダリオンが無効化する。

距離を取って魔法戦にもちこみたいのだろうが、そうはさせない。

もっとも魔法戦でも負ける気は無いが。

　と、準備オーケーだな。

俺は唐突にボスから離れる。

必死に距離を取ろうとしていたボスは、突然の事に動きが止まる。

そこへ

ズバアアア

　リンクスのソル・ブラスターが襲いかかる。

そう、とっくに雑魚は全滅していたのだ。

しかし、ボスは体を無数のコウモリに変えてバラけさせた。

半分ほどの蝙蝠が回避に成功し、再び人型を取る。

　だが、そこにはすでにシザーが切り込んでいた。

驚愕するボスに、光属性を付加された攻撃肢が４本すべて突きこまれた。

ボスのＨＰは０になり爆散した。

「『ロイヤル・レイピア』ねえ……」

　ソロドロップはヴァンパイア・マスターの使っていた豪奢な細剣だった。

当然、俺は使わない。

闇属性が付いていて性能は高いのだが……。

どうも、ここのボスは俺と縁が無いようだな。

こいつもオークションで売るかな。

　ちなみにオークション会場に向かった俺は、ビースト・ソウルを競り落としたダムドに見つかってしまう。

そして、入手経緯を白状させられる事になるのだった。

ビーストロア全員分取ってきてくれって、無茶言うなよ……。

レイピアはやっぱりヴァンパイアの人が使うべきなのかな？