第3サーバーvs第2サーバー
フィオが第1サーバーと接触したころ、第3サーバーと第2サーバーも接触していた。
お互いすでに探知によって存在を認識している。
接触した場所は広いが岩だらけで足場は良くない所だった。
お互いが警戒しながら隊列を組んで行く。
第2サーバーにオレンジ、レッドは見当たらない。
どうやら一般プレイヤーだけで組んだらしい。
装備はやはりというか中級鉱石製の様だ。
第3エリア到達の遅さは、やはり埋めがたい差だった。
一方、第3サーバーの陣形は変わっていた。
前衛が横に広いのだ。
包囲するつもりなのかもしれないが、やけに中央が薄い。
これでは中央を突破されて、後衛が危険だ。
罠にしてもリスクが高すぎる。
「突撃!」
「「「「おう!」」」」
「「「行くぞ!」」」
そして、先手を取ったのは第2サーバーだった。
手薄の中央に戦力を集中して突破を図る。
「今だ!」
「来い!」
しかし、彼らの前に突然モンスターが立ちはだかり、中央を厚くしてしまった。
突撃の勢いが止まる。
「なに!?」
「しまった、従魔か!」
そう、訓練を乗り越えた従魔たちにとっては、横に並んで迎撃するくらい簡単な任務だ。
しかも従魔の種類は武装したゴーレムや巨人、物理耐性を持つスライムなど。
近接系の前衛には突破の難しいモンスターばかりだ。
「左翼、右翼、攻撃開始!」
「「「「攻撃開始!」」」」
従魔に抑えられた第2サーバー前衛を、右翼と左翼が包み込む。
それだけではない。
突然、上空からの魔法攻撃が第2サーバーを襲う。
「何だ!?」
「飛行系従魔だと!?」
上空にはペガサスやワイバーン、グリフォンやヒッポグリフに乗ったプレイヤーがいた。
トラウマ同盟が考案した、対使い魔戦術の一つ。
それは真っ先にターゲットになる後衛を空中に逃がすというものだった。
そして、これは思わぬ副産物をもたらした。
機動力に劣る魔法使いは固定砲台になりがちだ。
聖魔のように、動きながら無詠唱を使える者はまれなのだ。
しかし、移動を従魔に任せてしまえば機動砲台になれる。
さらに従魔から飛び降りた近接職が、第2サーバーの後衛に襲いかかる。
前衛は完全に包囲されて救援どころではない。
「行くっす。ドラゴン・ゾンビ! アンデッド・サイクロプス!」
さらにゼクの切り札のアンデッドが襲いかかる。
代表に決まってから浮遊島で死霊術を鍛えた彼は、ついに巨人系モンスターのアンデッド化に成功したのだ。
レイ、ティーアも魔法で攻撃を加える。
ハイド率いる右翼と、ダムド率いる左翼はすでに掃討戦に入っていた。
逃げようとする者は、ルーシア率いる空中の遊撃部隊に倒されている。
ほどなくして戦闘は終了した。
〈第2サーバーのプレイヤーの全滅を確認〉
〈第2サーバーは脱落しました〉
「ふう、お疲れさまでした」
「うーん、やっぱ装備の差は大きいな」
「作戦もバッチリでしたね」
「こんなの、あの怪物軍団に比べれば……」
勝利した第3サーバーは、ダメージの回復や装備の点検を行っていた。
いくら圧勝だったと言っても消耗は0ではない。
そして気付いた。
戦闘中だったので、気付かなかった者が多いアナウンスに。
第1サーバーがすでに脱落した事に。
「やっぱ、フィオさんかな?」
「第1と第4は、ほぼ同等だぜ。第4だとしたら早すぎだ」
「あの人なら50人くらい暗殺しちゃいそうだし」
「何にせよ、次で決着ってわけだ」
「うちらが戦わずに終わったりして」
第3サーバーでは楽観ムードが強かった。
当然と言えば当然だが。
一方で第4サーバーは正反対の雰囲気だった。
「ほとんど同時に第1と第2が脱落……」
「三つ巴、じゃないよな。やっぱ……」
考えられるのは第3が部隊を2つに割って、それでも勝利した。
あるいは第1と第2が連合して第3に挑んだが、返り討ちにあった。
そんな風に考える者が多かった。
実際それは当たっている。
ただし、彼らの考えと違ったのは、分けた部隊の数が25:25ではなく49:1だったという点だ。
そして彼らは気付いていなかった。
すでに自分達がリーフの広大な探知範囲に引っかかっている事に。
幻術を纏った聖魔が近づいてきている事に。
無駄ではなかった使い魔訓練。