代表者選抜
さて、後日選抜メンバーは作戦会議に呼ばれた。
当然というかルーシアにハイドさん、レイさんにダムド、ティーアさんにゼクもいる。
それに、トラウマ同盟(まだ名乗ってるかは不明だが)のメンバーも何人もいる。
レイさんを議長に会議は進む。
連携、作戦、従魔、色々な議題が出ている。
「……という感じですかね。あとフィオ君なんですが、単独行動してもらおうと思っています」
「へ? 単独?」
「ええ、君は個人でレイドクラスの戦力を保持しています。集団の我々よりも目立たず行動できる戦力を、一カ所にまとめておく必要はありません」
「はあ……」
「具体的にいえば、相手チームに奇襲を繰り返して消耗させて欲しいんです。シミラ君がいれば簡単でしょう? まあ、無理をする必要は無いですし、殲滅しても構いません」
怖っ。
レイさんが黒い。
殲滅とか言っちゃった。
でも理に適ってるな。
「幸い戦場は山岳地帯。奇襲にはもってこいです。我々もトラップなどを視野に入れますし」
「そうですね。了解です」
これも確かに有効な作戦だ。
みんなで一緒に整列してー、だけが作戦じゃない。
自分で言うのもあれだが、俺という突出戦力の使い方としては正しい。
将棋でも飛車と角は単独で暴れまわれるし。
他のサーバーはどうなんだろうな。
まさか全員バラけるとは思えないが。
50人でずっと固まって行動するつもりだろうか?
でも、それって偵察すればモロバレだよな。
「それと、フィオ君には依頼があります」
「依頼ですか?」
「ええ、『原始肉』はまだありますか?」
「いくつか残ってますけど、必要なんですか?」
「実はあれ1個で、最高級のモンスターフードを5個作れる事が解ったんです」
「5個ですか? さすがレア食材……」
「戦闘向きの従魔を、それで強化したいと思っているんです。上手く行けばランク4になれる従魔もいるでしょう」
「いくつ必要なんです?」
「6個、30体分欲しいところですね」
調査に1個、オークションに1個、宴会で1個だから7個残っている。
この場で出せるな。
「じゃあ、6個渡します」
「今持っていたんですか。ちょうど良いですね。代金はこれくらいでどうでしょう?」
オークションと大体同じ金額だ。
今はそれほど金に困っていないし十分だな。
依頼書にサインする。
「はい、OKです。」
「では、モンスターフードを購入してきましょう。その後は連携の訓練をしましょう」
「あーっと、俺はどうしましょう」
「フィオ君はいいですよ。むしろ攻略してもらった方が良いかもしれませんね。ほら」
「あ、それは……」
「ええ、『ラッキー・アミュレット』です。すごい人気ですよ」
確かに新しい技術が見つかれば全体の利益になる。
じゃあ、俺は俺のできる事をするか。
やってきたのはマイホーム。
この前の浮遊島によく似た風景だ。
森の中を進んで行くと少し開けた場所に出た。
「ふむ、順調だな」
そこに生えているのは巨大なキノコ。
しかも扉が付いている。
そう、キノコハウスだ。
素を蒔いて数日で2mくらいの高さになっていた。
中を覗くと釣られたハンモックにフェイが寝そべっていた。
うむ、キノコの家に妖精とは絵になるな。
もう少し成長すると、胞子を『キノコハウスの素』として収穫できるらしいのだが。
家具なんかも入れる必要があるかな。
まあ、俺じゃなくてフェイのためなんだけど。
花回収で頑張ってもらったしな。
ふと見ると、キノコの傘が齧られていた。
この痕はシザーか?
カマキリのくせにキノコに興味持ったのか。
シザーのおやつにもう1個用意した方が良いのかな。
トラウマ同盟の連中の話じゃないが、たまには使い魔たちとの絆を深めるのもいいかな。
もちろん、今のままでも十分信頼しているけど。
次の試合は獲物、じゃなくて敵が多い。
シザーやギアなどのアタッカーも真価を発揮できるはず。
念入りに調整しておかないとな。
トレーナー気分で。
キノコハウス……メルヘンなイメージのはずなのにナウシカって……。
腐海か? 腐海が悪いのか?