神槍
2回戦は団体戦か。
50人というとちょうどレイド上限だ。
推薦、立候補どっちでもいいそうなので、受付をやっている会場に行ってみた。
運営が用意した会場はけっこう広かった。
NPCがそこら中で説明をしている。
何か役所みたいだな。
お、向こうに話し合い中の集団がいる。
トップクラスのギルド大集合って感じだ。
まあ、代表数名ずつみたいだけど。
「なあ、今どうなってんだ?」
集団に近寄り、近くにいたルーシアに聞いてみる。
来たばっかりの俺は、話し合いの内容すら知らない。
「ああ、来たわね。あそこで登録したら行っていいわよ。作戦とかは後日ね」
「は? ええと、この話し合いは?」
「参加者を決めてるのよ。あなたは参加が推薦で決定しているわ」
ソウデスカ……。
俺は受付で登録して会場を後にした。
もう半分くらい参加者は決まってるみたいだな。
昨日の今日で早いなあ。
まあ、確かに早めに決めた方が訓練とかできるけど。
そういや、推薦って誰がしたんだろう。
……心当たりが多すぎるな。
っていうか、本人に一言あってもいいだろうに。
「おーす、武器完成したかー?」
「ん? おお、来たか。次の試合も頑張れよ」
もう推薦者が見つかってしまった。
いや、1人とは限らないな。
って、それよりも
「武器と宝石はできたのか?」
「ああ、まず『アシッド・ソード』だな。注文通りの形に鍛え直した」
「サンキュ。コール ネクロス」
ネクロスを呼び、ダマスカスの剣をアシッド・グルカソードと取り替えた。
ダマスカスの剣はもういらんな。
後で売ろうか。
いや、投げナイフの材料にしてもいいな。
「宝石はこれだ。『ゲイル・エメラルド』3個だな」
「よし、じゃあ連続で悪いが2つ竜槍杖に取り付けてくれ」
「解った。それと新機能をつけようと思う」
「まだ新機能があるのか?」
「何言ってんだ。アシッド・ソードだって新機能持ちみたいなもんだろ」
「まあ、そうだな。」
「新機能は簡単に言えば並列起動だ」
並列起動……。
そういえば魔法の同時起動は驚かれたな。
参考にするとか言ってた気も……。
「付加魔法を2種類同時に起動できる機能をつけようと思う。まあ、火と水とか反対属性は無理だがな」
「いや、充分だろ」
単純計算で効果は2倍だ。
シザーやギアの付加ラッシュの恐ろしさは、主の俺がよく知っている。
「じゃあ、頼むわ」
「おう、後はこれだな」
見せられたのは西洋風のお守りアミュレットだ。
これはもしかして……。
「こいつは『ラッキー・アミュレット』だ。お前のお守りのコピーだよ」
「デザイン変えたわけか。俺のはどっちかっていうと東洋風だしな」
「そいつはドロップ率アップの他に、運のST上昇効果もあったんだ。だからラッキーにした」
「確かにどんなアクセサリか解りやすいな」
代金をかなり負けさせた俺は工房を後にした。
新機能ね。
あいつも良くやるよな。
この技術力もサーバー間の差なんだよな。
友人たちに聞いてみた所、現在急ピッチで装備の強化を行っているらしい。
盾を持ったメテオライト・ゴーレムがあっさり倒され、ダマスカスの剣がへし折られたのだ。
まずは装備を整えないと勝負にならないのは明らかだしな。
とは言っても、こっちも攻略に励んでるからな。
そんなにあっさり差が縮むとは思えない。
第3サーバーでも上位の鉱石が出回るまで結構かかったし。
翌日 工房
「これで完成ってわけか」
「ああ、とりあえずもう手を加える所は無いな」
8種類、16個の強化宝石の組み込まれた竜槍杖。
さっそく新機能を試してみる事にした。
まずは火と雷。
ボウッ バチバチバチ
全体が雷火に包まれた。
次は氷と風。
パキパキパキ ヒュオオ
今度は吹雪に包まれる。
成功だな。
「オッケ、良い出来だ」
「ふふふ、実は最強の必殺技があるんだよ」
「はい?」
「さあ、試してみるぞ。こっちに来い」
やってきたのは訓練場。
ギアが暴れて以来だな。
以前と同じくメテオライトの的がある。
「よし、じゃあ付加を全属性で起動しろ」
「は? 反対属性はできないんじゃなかったか?」
「全属性ならできるんだよ。短時間だがな」
よく解らないが、とりあえず起動してみる。
すると槍杖全体がオーロラの様な光に包まれた。
「おい、これって……」
「神槍形態【ロンギヌス】だ。的を攻撃してみろ」
言われた通り突いてみる。
あれ? なんだこの手ごたえは。
プリンでも突いたみたいに手ごたえが無く、あっさり貫通した。
別の的を切りつけ、殴る。
どれも全く手ごたえが無い。
「どういう原理なんだ?」
「こいつはな、強度や防御を無視してるんだ。多分カリスのパワーアップも同じ原理だろう」
そうか、何かに似てると思っていたがカリスのオーロラに似ているんだ。
あいつのパワーアップと同じ効果を、短時間とはいえ発動できるわけか。
こいつは凄いな。
「使うと1日、付加が使用できないからな。クールタイムには気をつけろよ」
「ああ。次の試合でも、あんた達の技術を見せてきてやるよ」
ついに完成した竜槍杖を手に俺は誓った。
次回は自重を捨て去る事を。
カリスのパワーアップの秘密が明らかになりました。
同じ能力搭載って魔改造も極まってきました。