風の花
「ほれ、持って来たぞ」
「おお、早かったな」
「ティルナノグと合流して大ボス倒してきた」
「また、勢いでやっちまうところが同胞だな」
「お前らほどマッドじゃない。それとコレ」
さりげに同類扱いするギルドマスターを切り捨て、アシッドソードを取りだした。
普通の魔剣とちょっと違うから興味ありまくりだろうな。
「……良く見せてくれ」
「グルカナイフ状に作り直して欲しいから、ついでに調べればいいだろ」
「そうだな……、3日ほど待ってくれ。まず調べてからの方が良い物ができる」
「了解だ。じゃ、頼むわ」
目がマジになったギルドマスターに剣を渡し、工房を後にした。
さて、この後は何をしようか。
ふむ、最近は『竜の谷』『浮遊島』が人気らしいな。
巨人と竜だから大ボスを倒すとオーガノイドやドラゴノイドに何か起きるんじゃないか、と考えてる奴もいるようだし。
俺も久しぶりに行ってみるか。
そうだな、浮遊島で花探しでもしようかな。
「高所恐怖症の奴には来れないな……」
浮遊島は侵入ポイントが1カ所しかない。
それ以外の外周は見えない柵が合って、落下はしないようになっている。
だが、覗き込むくらいの事は出来る。
地上数キロの高さはかなり怖い。
ベルクに乗ったとしても、ここまで高度を取る事はめったにないからな。
ここは巨人族の本拠地を丸ごと浮かせただけあってとても広い。
外周の内側に森があり、その中心に神殿というか城というか巨大な建物がある。
もちろん巨人サイズなので、自分が小人になった様な気分になる。
森の中にも巨人系モンスターがうろついていて、建物の正門を中ボスが守っている。
森の中を探索すると結構プレイヤーが多い。
巨人は強敵だが、その分スキルアップがしやすいのだ。
素材は『竜の谷』の方が良い物が取れるが、巨人はパワーはあるが特殊能力が余り無い。
人型との戦いに慣れてしまえば安全と言える。
だから人気の強化スポットになっている。
まあ、半端な実力ではひねり潰される事になるけど。
「あったか、よくやったぞフェイ」
予想通り風属性の花を見つけた。
フェイがだけど。
名前は『風翔花』だ。
これで竜槍杖を完成させられる。
広い森をぐるりと一周してスタート地点に戻ってきた。
手に入れた花は全部で3つ、1個余るが強化宝石の使い道はいくらでもある。
ネクロスかプルートの武器を魔剣にしてもいいしな。
探索中に気付いたのは、巨人系モンスターを従魔にしようとしているプレイヤーが結構いることだ。
確かにゴーレムより装備に融通がききそうだし、優秀な前衛になるだろうな。
狭い所では使えないという欠点もあるけど。
そういえば、中ボスのヘカトンケイルはすでに討伐されたらしいな。
レイドクラスの大戦闘だったそうだけど。
エルダー・ドラゴンはまだらしいから、こっちの方が進んだ事になるわけだな。
まあ、『竜の谷』は中ボスまでの道のりが長いからな。
「ん? あれは……」
建物まで続く一本道を引き返してくる集団が。
どいつもボロボロだ。
何か見た事ある光景だが……。
「どうした? やられたのか?」
「すげえのがいた……」
「は?」
「大ボスだよ! 『テュポーン』だ!」
『テュポーン』だと?
確かギリシア神話の竜巻の巨人だな。
下半身が蛇で手にも100の蛇が生えているんだったか。
天裂き地飲む巨体で、主神ゼウスに匹敵する力を持つ怪物だ。
これはまたエライのが出てきたな。
「戦ったのか?」
「そんな余裕なかった。すぐ逃げたよ」
「建物の中には『ネフィリム』や『フォモール』がいるんだ」
「奴らは外の巨人とは一味違う。魔法も使ってくるんだ」
なるほど、さすがに一筋縄ではいかないようだな。
詳しい話を聞かせてもらう代わりに、ベルクとカリスを呼んで連中を町まで送ってやった。
早速ゼクに宝石強化を依頼しに行くと、留守だった。
どうやらギルドのメンバーに引きずられていったらしい。
最近引きこもってたみたいだしな。
強化は工房でやってもらうか。
告知します。
現実時間で3日後、サーバー対抗戦第2試合を開催します。
参加人数は各サーバー50人です。
ゲーム内の前日までに参加者を決め、登録を行ってください。
フィールドは山岳地帯です。
いよいよ第2試合です。
今度は団体戦。