腐海攻略
「うーん、相変わらず不気味だ」
しかし、この腐海に『ティルナノグ』のメンバーが頻繁に訪れる理由も解った。
杖やらアクセサリやら魔法系の装備に使える素材が多いのだ。
あそこは魔法職中心だからな。
ここは宝の山だろう。
毒耐性が無いとまともに探索できない腐海。
しかし、俺はメダリオンがあるし使い魔たちはランク4の時点で毒の状態異常は効かなくなった。
リストを見て植物系のモンスターを狙って倒し、奥に進んで行く。
お守りの効果は正直良く判らない。
「もうちょっとで中ボスか。折角だし倒すか」
そして俺は前衛殺しと呼ばれるブラッド・ウーズに挑むことにした。
こいつの厄介な所はアシッドブレスによる防御力低下と、酸の体液による武器の劣化だ。
対策としては付加魔法や魔剣で挑むか、完全に魔法で挑むなどがある。
愛用の武器を溶かされたくないし、装備の修理代も馬鹿にならない。
ここは遠距離戦で行こう。
メンバーは弱点の火を突ける奴らだな。
「コール ハウル プルート ヴァルカン」
ブレスや魔法による遠距離戦をこなせる火属性のメンバーだ。
近付き過ぎると触手を食らいやすいしな。
ボスはノソノソと移動するので距離を取りやすい。
俺も触手をかわし、ブレスをかわし魔法で攻撃する。
だが、
「マズイ! ヴァルカン! 追いつめられるぞ!」
ボスは、ジリジリとヴァルカンをフィールドの端に追い詰め出していた。
ヴァルカンは決して動きが鈍いわけではないが、あまり広くないフィールドでは機動力に欠ける。
バシャア!
〈グガアアッ〉
ボスがヴァルカンを巨体の中に取り込んでしまった。
強酸のプールに閉じ込められたヴァルカンの溶岩の鎧が腐食していく。
俺達も攻撃するが、離そうとしない。
くそ、いったん戻さないと……。
〈!? !?〉
ジュウウウ……
突然ボスの様子が変わった。
焦っているのか? 全身から蒸気が出ている。
そして、俺も気づいた。
ヴァルカンの溶岩の鎧が溶けて無くなり、紫色に輝く超高温の外殻が現れている事を。
ボスの強酸の体液が、外殻に触れることもできずに蒸発している事に。
ヴァルカンは自らボスの体内深くに突き進みだす。
そして深部にあった核に噛みついた。
ボスが滅茶苦茶に暴れる。
しかし、体内のヴァルカンには手が出せない。
ヴァルカンが核を噛み砕くと同時に、ボスのHPが0になる。
ヴァルカンのHPも半分ほどになっていたが。
「『アシッド・ソード』か。ちょうどいいな」
ソロドロップは斬りつけると防御力を低下させる魔剣だった。
ネクロスの近接武器のベースにできる。
まあ、調べさせろとうるさいだろうが。
この手の魔剣は初登場だからな。
腐海の後半を進む。
もらったリストの素材は大体揃った。
もう戻ってもいいのだが、大ボスの偵察でもしてこようか。
いずれは戦うんだし。
「お? 戦闘中か?」
30人程のプレイヤーが大ボス『シュリーカー』と戦闘している。
知った顔が多い、あれはティルナノグだ。
ティーアさんもいるな、大ボスに挑んでいたのか。
結構苦戦してるみたいだな。
大ボスは巨大なカビみたいな姿で、胞子と触手で攻撃してくるようだ。
状態異常とHP吸収も使ってくるみたいだな。
胞子はまるで爆弾だ。
あ、ティーアさんと目が合った。
めっちゃ笑って手招きしている。
手伝え、と……。
はいはい、お任せ下さい……。
「援軍が来たよー。やっつけちゃおー」
「どうも、援軍です」
「あれ、フィオ君じゃん」
「リーダー、偵察じゃなかったんですか?」
「倒せそうだから、いいのー」
シュリーカーは自分を中心に、菌糸をクモの巣の様に伸ばしている。
この菌糸から吸収能力を持つ触手が生えてくるわけだ。
斬っても焼いても、凄い速さで再生するので限がない。
そして気を取られている所に胞子爆弾か。
「作戦はあるー?」
「そうですね。コール ベルク プルート カリス」
登場した3体の使い魔。
共通点は飛行。
「乗れるだけ乗って下さい。空中なら触手は届きません。爆弾はこいつらが自分でかわします」
「おおー、なるほどー」
「空中から一方的にか」
魔法職30人による空爆はすさまじい威力だった。
もちろん使い魔も攻撃を加える。
あわれ、シュリーカー。
胞子爆弾も全てかわされ、抵抗むなしく焼きはらわれてしまった
「ありがとー、助かったよー」
「いえ、ついでですし」
「初回報酬は『キノコハウスの素』?」
「キノコハウスって、まんまキノコの家?」
「ホームエリア用のアイテムか」
「素ってことは増やせるのかな?」
また変わった物が出たな。
まあ、リストの素材も揃ったし戻るとするか。
飛べねえカビは 唯の的だ (豚さんチックに)
キノコハウスで童話気分を味わえそう。