表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/228

特殊種族総決戦 vsヴァンパイア&堕天使

「な、何だ?」


 突然の轟音にイコンは身をすくませた。

元々動かず漁夫の利を狙おうとしていたのだが、状況がそれを許さない。

隠れている森が黒煙を上げて燃えだしたのだ。


「ゲホッ、ゲホッ、クソ……」


 このままでは丸焼だ。

火を消そうとしても煙に巻かれてしまう。

危険だが飛行して離脱しなければ。


 燃え盛る森から脱出したイコンに、当然の様に放たれる攻撃。

しかし距離がある分、避ける余裕があった。

飛来する槍の射線から逃げる。


「!?」


 しかし、槍の軌道が変わりイコンを追尾する。

槍は右の翼を貫通した。

ダメージは致命傷ではないが飛行不能に陥る。

イコンは炎の森に落下していった。



 レイラは悪魔が槍を投げた瞬間飛び出した。

上空からは相棒のヒッポグリフのルンが急降下していく。

彼方では堕天使が羽を貫かれて落下した。


 悪魔が振り返りこちらを見る。

なんと目が合った。

隠蔽状態のはずなのに、明らかにこちらを認識している。

これが魔力探知か。

うーん、厄介だ。


 ルンが真上から風刃を放つ。

しかし、風刃は突如発生した巨大な火球に呑み込まれる。

火球はそのままルンに襲いかかる。

ルンはかろうじて直撃を回避した。

しかし、フラフラと高度が落ちて行く。


 あれはファイアブラストだ。

話には聞いていたけど、上級魔法の無詠唱は脅威だ。

しかし、距離は詰めた。

そして相手は丸腰だ。

絶好のチャンス、疾風の様な速さで双剣を振るう。


「【ゲイルスラッシュ】!」


ギギィン


 レイラは目を疑う。

いつの間にか悪魔の手には槍があり、2つの刃を食い止めていた。


ガキィ


 一振りで弾き飛ばされた。

すごいパワー、筋力が段違いだ。

援護しようとする2体の怪物を悪魔が制した。

1対1で戦うつもりらしい。


「甘く見てくれるわね……」


 距離を詰めれば槍術より双剣の方が有利なはず。

レイラは姿勢を低くして突っ込んだ。


 

 2人の戦いをモニターで見ているプレイヤー達。

レイラは強い。

無駄に技を使わず、霞んで見えるような速度で剣を振るう。

しかし、その攻撃は1太刀も当たっていなかった。


「おいおい、あれを防ぎきるのかよ……」


「あれが槍棒術か。隙がねえな」


 2本のショートソードによる連撃は、全て穂先と石突きに弾かれている。

悪魔はクルクルと槍杖を回転させ、2本の武器をさばききる。

それだけではない。

明らかに手加減している。


 攻撃魔法は一切使っていないし、左手も空いている。

使い魔も待機させているだけだ。

自分から積極的に攻撃もしていない。

防戦一方だが実はこの時フィオは、どうやって倒せば期待に添えるのか考え中だったのだ。


 

 しかし、状況は動く。

レイラの武器が打ち合いに耐えられなくなってきたのだ。

ヒビが入り刃こぼれし始める。


 だが、レイラにとってはこの絶望的な硬直状態を動かすチャンスだった。

相手が油断しているなら其処を突くまで。

レイラは奥の手で一矢報いる事を狙う。

勝てないにしても意地を見せてやる。


パキィン


 ついに右手の剣が折れた。

相手の注意が左の剣に集中する。

ここが狙いだ。


 レイラの右足が振り上げられる。

ジャキ、と音がして脚甲から刃が飛び出す。

【体術】のスキルと【暗器】のスキルの併用だ。


 左の剣もへし折られた。

しかし蹴りは悪魔の首に吸い込まれていく。

決まる、レイラがそう確信する渾身の一撃。

だが


ガギィ  ザクッ


「な!?」


 悪魔の左手にいつの間にか短剣が握られていた。

ナックルガードが暗器を防ぎ、刃が脚甲を貫き足に突き刺さっている。

とっさに左足で飛んで距離を取る。

追撃は無かった。

しかし、HPバーが紫に変わっている。


「毒? アクセサリがあるのに何で……」


「ああ、この短剣は一定確率で耐性を無効化するんですよ。運が悪かったみたいですね」


 そんな武器まであるなんて……。

悔しいが撤退して治療、そして作戦も練り直さないと。

視界の端にルンの姿が見えた。

今だ!


ボン


 マジックアイテムの『煙幕弾』を爆発させる。

そこに飛び込んできたルンに掴まり一気に離脱した。

やはり追撃は無かった。



 フィオは煙幕を風魔法で吹き散らした。

レイラは索敵範囲からはもう逃げ去った様だ。

あの一瞬で大したものだ。

従魔との連携といい、技量は第3サーバーの上位陣に引けを取らないだろう。


「さて、パフォーマンスはこんなもんでいいかな?」


 さっきまでの打ち合いはミッションの一部、演武の様なものだった。

しかし、彼女も強度で劣るダマスカスの剣でよく粘ったものだ。

切り札であろう暗器の一撃も見事だった。


 サマエルを抜く気は無かったのだが、気が付くと抜いてしまっていた。

抜かされてしまったと言ってもいいだろう。

思わず敬語になってしまうほど、彼女は善戦したと言える。

猛毒は運が悪かったが。


「さて、どっちから行こうかな」


 あの様子では彼女は別な作戦で来るだろう。

なら、先に邪魔者を始末しておくか。


 狙うは堕天使。

フィールドの端に逃げ、必死に回復薬を使うイコン。


 炎をかき分け悪魔が迫る。


レイラさんには敢闘賞を送りたいですね。


次で決着です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ