完成 魔導兵器
「おい……」
「おお、来たか。今、最終調整中だ」
「背中のあれはなんだ?」
「凄いだろう。ブースターだ。風の上位魔法を込めたオーブをカートリッジ式に仕込んである」
「聞いてないんだが」
「言ってないからな。だが有効だぞ」
殴っていいか?
いや、だがこいつらに悪気はない。
あるのはマッドな好奇心だけだ。
どうせ男のロマンとか何とか言って、勢いで追加したんだろう。
「はあ……。解ったもういい」
「それでお代だが……」
「依頼しといて金取るのか!?」
「いや、色々やり過ぎて予算をオーバーしたんだ」
「……いくらだよ」
「有り金全部。溜め込んでた素材売って金持ってるんだろ?」
「外道!?」
「いや、正直ギルド運営が傾きそうなんだ。助けると思って、な、頼む」
こいつら本気で馬鹿なんじゃないか?
そこまで周りが見えなくなってたのかよ。
しかし、有り金全部は……、そうだ。
「ライトアーマーと竜槍杖の宝石取り付け込みなら払うぞ」
「鎧はもうできてるし、素材代がかからんならやろう」
「よし、宝石は後で持ってくる」
まあ、損にはならんはず。
ギアのパワーアップ具合にもよるが。
「で、ギアの調子はどうなんだ?」
「今からテストをするから見てるといい」
広い演習場に移動する。
いくつもの人型のターゲットが並んでいる。
しかし、これは……
「メテオライトの鎧か?」
「おう、インゴットにする予定の中古だ」
ズン ズン
ギアが演習場にやってきた。
「じゃあ、始めるぞ。付加装置『アグニ』『インドラ』起動!」
ボウッ
バチバチバチ
ギアの右腕が炎に、左腕が雷に包まれた。
しかも渦を巻き旋回している。
まるでドリルのように。
「……あれは?」
「威力向上のためだ」
「本音は?」
「男のロマンだ」
男のロマンで破産すんなよ。
ギミック名はインドの神様なんだな。
「よし、ブースター『ヴァーユ』起動。ターゲット2体を破壊しろ」
ボッ
砲弾のように加速するギア。
グシャア
真正面にあったターゲットが炎の拳でひしゃげて吹き飛ぶ。
メキャア
続いて左の雷を纏った裏拳が次のターゲットを粉砕する。
おいおい、メテオライトをあっさりぶち抜いたぞ。
「よし、胸部『ブラフマー』起動」
ギアが残りのターゲットに向きなおる。
すると胸部に赤い光が生まれ、弾けた。
シャワーのように光はターゲットに襲いかかる。
残ったのは所々が焦げ、半分くらい石になったターゲットだった。
なんてモノを取りつけてくれたんだ。
こいつがプレイヤーだったら……。
うん、ひどいな。
「どうだ! 凄いだろう!」
「ああ、涙が出そうだよ」
ギアのSTを見ると種族名が変わっていた。
『複合魔法合金兵器』。
それがギアの新しい種族名だった。
「ほれ、蟹製のライトアーマーだ。装備してみろ」
「……よし、いい出来だ」
「じゃあ、宝石ができたら来い」
「ああ、じゃあこれ有り金全部だ」
金を払って工房を後にする。
とんでもない出費だが、まあ俺の方が得してるんだろう。
あの、山積みにされていた鉱石の代金だけでもすさまじいはずだし。
それが全部ギアに使われたんだろうしな。
さてゼクはタダで仕事してるし、後はコートの新調か。
皮系の邪竜素材使うかな。
代金も用意しないとだし、またしばらく狩りだな。
アイスマンモスやボルボックスもいけるか?
第2エリアはさっさと制覇しておこうかな。
それとも、せっかくだし行ったことない所に行くか?
古城、地下水脈、浮遊島どこが良いかな。
霊峰は……しばらく行きたくないな。
余裕が出たら使い魔の装備も強化したい。
やる事は多いな。
第2サーバーが第3エリアに到達しました。
第3章もそろそろ終了です。