[23th night]
胸に擦り寄る、柔らかな髪を意識して目が覚めた。
素肌同士の触れ合いに逸る胸を抑え、私の名を呼んだ彼女に呼び掛ける。
「……エリゼ?」
そして私の声につと笑った彼女は、柔らかな朝日の中で、とても幸せそうに頬を赤らめていた。
「おはようございます」
「おはよう、愛しい人」
思わず彼女の前髪を梳き、額に唇を寄せた。
くすぐったがって顔を上げた彼女の、その表情に隠しようのない喜びを見つけ、私は更に唇を啄ばんだ。
「今まではずっと君と同じベッドで起きれなかった」
初めての朝の戯れについそう言うと、彼女は不思議そうに問うた。
「どうしてです?」
そこで私は、夢幻の中にいた彼女の話をした。
彼女が納得したように話した夢の概要に、私は思いがけずからからと笑った。
「抱き締めているのは間違いなく現実の私だよ。
起き抜けに君を抱き締めていたら苦しげにカルスの名を呼ぶから、君はまだあいつのことが好きなんじゃないかって思ってた」
でも違うんだろう?、とにっこりと微笑みかければ、彼女は困惑したように口ごもった。
「でもそのあと……」
「ああ。
安心したように私の名を呼ぶから解釈に困った。それ以上抱きしめていたらきっと抱き潰してしまうだろうと思って、寝台から離れるしかなかったんだ」
今はこうして抱き締めていられる。
その幸せを噛み締めるように彼女の身体に回した腕に力を込めると、彼女は少し悪戯めいた眼でこちらを覗き込んだ。
「じゃあ、愛しているというのも……?」
「ぜんぶ現実だ」
彼女の甘い香が、また私の鼻をくすぐった。