[22th night]☆
若干R15描写が入ります。
甘やかな吐息が、耳元をくすぐった。
現を映す瞳が潤み、ただ縋るように私の名を呼ぶ彼女の何もかもが、何よりも愛おしかった。
「ウィリアム……聞いて」
すべてを見せている羞恥にか、彼女は身を捩った。
その姿はひどく官能的で、思考が彼女に浚われる。
「………聞いてる」
「わたし、ま……だ、んっ」
聞いていると言いながら、これ以上何も話すことは無いと彼女を快楽へ引き込もうとするが。
――胸を幾度攻め立てながら、それでも彼女はすべて呑みこまれることは無かった。
「聞いてないこと、があるわ」
名残に惹かれながら眼を見つめると、彼女は恥ずかしそうに伏せる。
「その話は後じゃだめなのか?」
「……大切なことだもの」
「今は君と繋がるより大切なことはない」
いくらか刺激的な本音を言えば、彼女がうぶな少女のように顔を真っ赤にしたのを見て、思わず笑みが込み上げた。
「毎晩あんなに乱れているのに……
反応だけは何も知らない乙女だな」
「や……言わないで」
押し寄せる欲望の波を押しとどめ、ただ愛するために理性を繋いだ。
「それで? 何が聞きたい?」
「………人妻を、」
「ああ」
「誘惑………していたというのは、本当ですか」
思わずまた笑いが込み上げ、けれど必死に抑え込んだ。
彼女はやはり分かっていない。
どれほど私が彼女を欲していたのか。
「君と婚約する前の話だね」
随分と前の話だ。
けれど彼女はまだ怪訝そうな顔をする。
「……これからのご予定は」
「君以外にはもう誰もいらない」
嫉妬がこれほど心地良いものだとは。
昔はただ億劫で、女はこの感情を最も捨て去るべきと思っていたのに。
今彼女が向けるこの感情はひどく甘く、愛しい。
我慢できずに深く口付け、唇の上でそっと囁いた。
「早く1つになりたい」
そして彼女はそれ以上何も言わず、私の言葉をただ受け入れた。
「エリゼ、愛してる」
何度も穿ちながら、囁いたのは飾りのない本音。
背中に爪を立て、縋りつく彼女の嬌声が、ただひたすら本能を押し上げる。
「もう……離さないで。冷たく、しないで」
「ああ」
「愛しています、ウィリアム……」
何もかもが、初めてひとつになった。