[14th night]
限りなく白んだ部屋の中、起き抜けの私はいつも彼女を抱き締めていた。
そこに在る温もりを、確かなものだと感じるために。
素肌同士の触れ合いに、揺らぐ衝動を感受しながらも。
けれど一定の鼓動を刻んだ後、彼女が必ず苦しげに奴の名を呼ぶのもまた常だった。
「……カルス?」
問い掛けるよう。
呼び掛けるよう。
――まだ忘れていないのか。
問い掛けたくても、問えないのがもどかしく。
そして眉根を寄せたその表情を咎めるように、私が抱き締める腕を強めるのもまた常だ。
そうすれば、彼女が私の名を呼ぶのを知っているから。
「ウィリアム」と。
自信なさげに、けれど安心したように、現の中では決して呼びはしないその名を紡ぐ唇を深く覆ってしまいたい願望に囚われながら、理性を押し止めて髪を梳くと、彼女が嬉しそうに懐に擦り寄ってくるのも知っていた。
そうして理性と欲望の間でせめぎ合い、そして耐えきれなくなったところで私は彼女をやんわりと離し、寝台を降りる。
最後に、掠めるように唇を奪い、慈しむように髪を梳くのを忘れずに。
愛していると、月色の瞳がこちらを向いている時には決して伝えることの出来ない本心を残して。
「独り寝はさせない」と。
その誓いを破っているのは知っていた。
守りたいのは何なのか。
それが見つかるまではという言い訳を免罪符にしている私は、ひどく醜かった。