宇宙人とコンビニ
「あー、暇だ」
コンビニの夜勤バイト。
店内には店員の男以外誰もおらず、当面のやることはもうこなしてしまって暇を持て余していた。
相方は休憩中。
きっと今頃、事務所の椅子にだらしなく座り、スマホでアニメでも見ながらのんびりしてるのかもしれない。
男の休憩の番まで、まだまだ時間があった。
男は考えた末、
「掃除でもするかー」
そう呟いて、モップを取りに向かった。
掃除を始めてしばらく経つと、外が急に明るくなった。
もしかしたらヤンチャなやつらの車が強烈なライトを照射しながら駐車場に止まったのかもしれない。
男は面倒くさい客だったら嫌だな、と思いながら入口に視線を向けた。
自動ドアが開き、客が1人入ってくる。
「──は?」
男は思わず声を上げた。
その客は、銀色だった。
全身が銀色で、足に対して腕は非常に長く、ほっそりとした体型。
その体にバスケットボール程の大きさの頭が付いており、その目は水泳のゴーグルを大きくしたような形で、何もかも吸い込んでしまいそうな程に黒かった。
俗に言う、宇宙人──グレイといった感じの見た目である。
男は悩んだ。
コイツは怪しい。
というか、怪しい以外の何でもない。
新手の強盗か?
そう思ったが、グレイはカゴを手に取るとお弁当コーナーに向かい、商品を物色しだした。
唐揚げ弁当とチキン南蛮弁当で悩んでいるようだった。
鶏肉が好きなんだろうか。
そして唐揚げ弁当をカゴに入れたグレイは、飲料コーナーで黒烏龍茶をカゴに入れると、レジに向かって歩き出した。
男は緊張しっぱなしだったが、商品を持ってレジに向かわれたら対応するしかない。
「いらっしゃいませ、お弁当温めますか?」
男は少し声を震わせながらグレイに訊く。
「■■■■■」
グレイは理解出来ない声を上げ、その後指で喉の調子を整えてから、
「温めお願いします」
と、ヘリウムガスを吸った人のような声で言った。
男は付属のマヨネーズが爆発しないように外してからレンジで温め、その間に会計を済ませた。
スマホのタッチ決済だった。
「…………」
「…………」
弁当を温めている間、男もグレイも無言だった。
無言だったが、男はいまだに混乱していた。
そして、グレイに対して口を開く。
「もしかして、遠い宇宙からいらしたとか?」
「ええ、実はそうなんです。たまに地球に寄ることがあるので、その時はよくコンビニに寄ってお弁当を買っているんですが、この唐揚げというのはいつ食べても美味しいですね」
本物のグレイだった。
男は緊張から興奮へと、気持ちが切り替わっていった。
まるで芸能人がお忍びでコンビニに来店したような感覚だった。
レンジが弁当の温めが終わったぞと機械音を鳴らして知らせてくる。
男は取り出した弁当にマヨネーズを忘れずくっ付け、袋に入れてグレイに渡した。
ありがとう、と感謝しつつ受け取るグレイ。
去っていくグレイに、男は勇気を振り絞って声をかけた。
「あの、一緒に写真撮ってもらっていいですか!」
「ええ、喜んで」
男のスマホで撮影した写真は、グレイの姿はまともに写ってはおらず、男と一緒に人の型をした強烈な光が写っていた。
宇宙人もキャッシュレスの時代です。




