未だここに帰らない
掲載日:2026/08/28
隆は友人で、遊び仲間の1人だった。
カラオケでは高得点をとり、ゲーセンでは景品を山のように持って帰った。もちろん僕たちもおこぼれに預かっていた。
夜のコンビニ。夏の終わり。
「あーあ、今年も彼女できなかったなあ」
そう言ってソフトドリンクを飲んでいた。
無理もない。男ばっかりでつるんでいたからしょうがないだろう?
「俺、彼女できたよ」
隆が言った。
「うそ?」
僕が隆に詰め寄ると、隆はスマホをかざしてみせた。
てっきりLINEでも見せられるのかと思っていたら、ウエザーニュースを開いて、「この子」
と言った。
「はああ?」
からかわれたのかと思って腹が立った。
天気が良くて夜間に現れるイラスト?の女の子の姿。後ろ姿で顔は見えない。
「今日も会えたね」
隆がそう声をかけると、あろうことか彼女が振り向いた。
「ええ。嬉しいわ」
にっこり笑う。
「こっちへ来て」
女の子は手招きした。
隆!
僕は声にならない声をあげた。
今までそこにいた隆が画面の中へ入り込んで、彼女と並んで画面外へ歩み去ったのだ。
「おい、隆は?」
「携帯の中」
「何言っちゃってるの?危ない薬でも飲んだ?」
仲間が冷かした。
それから、隆はどうなったかわからない。未だここへ帰らない。




