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憑依鯨の姉弟  作者: yume
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第一部 胃袋の中の部屋


とある家で、男女がホラー動画を見ていた。

いわく付きだとか、見た者に不幸が起きるだとか、

そういう手合いの動画だ。


二人は興味津々で、恐怖と好奇心を混ぜた声を上げている。


――私は、今からこの二人を食べる。


食べなければ、死んでしまう。

だから頂く。それだけの話だ。


突然、テレビが歪み、部屋が軋み始めた。

床が波打ち、壁がゆっくりと脈打つ。


二人は悲鳴を上げる。

だが、その声は外には届かない。


ドアは開かず、窓の外は闇だった。

いや、闇ではない。

すでに、内側だった。


結論から言えば、二人はもう助からない。

なぜなら、もう私の胃袋の中だからだ。


私は物に憑依し、物を渡り歩く。

そして十分に大きくなったところで、

部屋ごと、丸呑みにする。


天井は肉に変わり、

壁は柔らかく歪み、

床はぬるりと沈んでいく。


二人は、そこで悟る。

逃げ場がないことを。


苦しませないため、

一思いに潰して、食べた。


「ありがとう」


これで、私たちはまた生きられる。


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