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妖精の子とお月さま

日が()れて夜空一面に星が出てくると、昼間色々な色に染まっていた妖精たちは、いっせいにチラチラと(かがや)き始めます。

金色や銀色、青白いのから赤っぽいのまで。


お星さまと、お話しを始めるからです。


そう、お星さまだって音色を(かな)でているんですから。

お星さまたちの音色は言葉になって、妖精たちに語り()けます。もちろん音色が聞き取れる人なら誰だってお話しする事が出来ます。

冬の夜の桜の木は、まさに特等席です。枝に座ってみれば分かります。夜空が近くに見えるでしょ?


妖精たちは、お星さまたちと色々な話をします。

今日あった出来事や、生まれたばかりの頃に見た事、仲良(なかよ)しの妖精とケンカをしてしまった事なんかも相談(そうだん)します。

お星さまたちも、色々な話をしてくれます。

いつも高いところからたくさんのものを見ているし、妖精たちが見た事もない世界の事も知っています。

すごく昔の事だってよく覚えていますから、本当に面白いのです。


お星さまたちの中で一番の人気者は、お月さまです。お月さまだって、大きいけれど、たくさんのお星さまの中の一つなのです。

でもお月さまは一つしかないので、みんな話したがりますから、なかなか話す順番が回って来ません。

ほとんどの妖精は、一度もお話しした事が無いくらいです。

それでもお星さまたちとの話は、とっても楽しいから夜遅くまで、中には空が明るくなってお星さまが(しず)んでしまうまで、ずっと起きてお話ししている妖精だっているのです。


そんな中、妖精の子は、一人でうつむいて(すわ)っていました。

お星さまたちの声が、聞こえないからです。

見渡(みわた)せばみんなが、お星さまたちとお話しているのが分かります。

妖精同士ですから、仲間の声だけは聞こえるのです。


とってもうらやましくて、とっても(さみ)しくなりました。

妖精の子だって、お星さまたちとお話しがしたかったのです。


妖精の子は、(なみだ)があふれて、こぼれ落ちそうになるので空を見上げました。

するとその先に、ちょうどお月さまが見えました。

まん丸で、とてもきれいに輝いていました。

妖精の子は、小さな声でつぶやきました。


「ねぇ、お月さま、声を聞かせてください……」


そのまましばらく妖精の子は、お月さまを見つめていました。

すると(おどろ)くことが起こったのです。

お月さまの声が聞こえたのです!


「どうしたの?」


って。

 

あんまりビックリしたものですから、目にたまっていた涙が一筋(ひとすじ)、きらめきながら(ほお)を流れ落ちました。


……。


とつぜんの出来事に、妖精の子は声を()まらせてしまったのです。

その様子を見ていたお月さまが、また話し()けてくれました。


「どうして()いているの?」


 妖精の子は、今度はしっかり返事をする事が出来ました。


「さみしいの」


「どうして?」


「なんの音色も聞こえないし、誰も気付いてくれないから……。」


「いま私は、君に気が付いたよ?」


お月さまは言いました。

 

妖精の子はふと考えました。


『何でだろう?』


と。


でも分かりません。

ですからお月さまに聞きました。


「どうして?」


するとお月さまは、優しく笑って答えました。


「君が話し掛けてくれたからだよ。

君が心から、私とお話しをしたいと思って、話し掛けてくれたから」


妖精の子は、お月さまに話し掛けてみた時の事を思い出してみました。

でも、そうだったのか良く分かりませんでした。

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