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第3話:魔王襲来。最終決戦だけど俺、今日も木彫りしかしてません。
「魔王が来る……!」
最終決戦の日。俺は店で、いつものように木彫りをしていた。
「……怖いけど、逃げても仕方ないか。せめてこのウサギだけは守ってやりたいな……」
手の中の木彫りが淡く光ったその瞬間——空が割れた。
現れた魔王の軍勢数万。その先頭には、黒炎の鎧を纏った魔王アズラード。
「貴様が“森の番人”か。よもや神器の継承者とは……!」
「違います、ただの道具屋です!!」
でもその言い訳もむなしく、木彫りのうさぎが宙に浮き、装備と融合。
俺の背には“光の翼”が発現し、魔王の闇を一瞬で消滅させてしまった。
村人たち「うおおおお!! 勇者さまだぁぁぁぁ!!」
—
エピローグ:
勇者エルガが後日、ふらっと店に戻ってきて一言。
「君の木の細工、ただの飾りじゃないよ。神器の核だ。気づいてなかったの?」
「いや早く言ってよ!!」
——かくして、俺は世界最強(木工系)の勇者になってしまった。
今も店では、普通に木の細工を売ってます。
たまに、うっかり世界を救っちゃうけどね。
(完)