第1話:ただの道具屋なのに、勇者が超レア装備を売りに来たんだが!?
田舎の小さな村に、俺の経営するしがない道具屋がある。
木工細工が趣味で、暇さえあれば木を彫っては置物やお守りを作っていた。
その日も特に変わり映えしない朝。……だったはずなのに——
「この剣、売りたいんだけど」
現れたのは、伝説級と名高い勇者・エルガ=グランベル。
「えっ!? ちょ、伝説の人!? それ本物の“天空の剣”じゃないですか!?」
「うん。でももう使わないから」
唐突に超レアな装備の数々を店に持ち込む勇者。
神器級の剣に、竜の心臓を埋め込んだ鎧、“魔神の右腕”と呼ばれる籠手まで。
「い、いくらお支払いすれば……!? いや、無理だ! ウチそんなに現金ないです!!」
頭を抱える俺に、勇者はふっと笑った。
「じゃあこれでいいよ。……その木彫りのウサギ、かわいいし」
「えっ!? 木の細工でいいの!?」
こうして勇者は、木の置物3つと交換で超レア装備を山ほど置いていった。
もちろん、そんな代物を装備する資格なんて、俺には——
——あるわけないと思っていた、その瞬間までは。
「……なんか鎧、勝手にフィットしてきたぞ!?」
着てみたら、勝手にサイズが合い、木彫りのお守りが光を放ち、装備が共鳴!
気づけば俺の身体からオーラが噴き出し、周囲のスライムが勝手に消滅していた。
「……え、俺、最強じゃね?」
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