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どうやら運だけはいいみたいです  作者: イッキ
異世界「兎」始動編
14/33

魔王の側近と兎

俺の召喚した巨大な石像が、ルシアン・ヴェルモンドの片腕であっさり粉々に砕かれた瞬間、背筋が冷たくなった。

みんなも一瞬息を呑む。

マチは杖を握り直し、パトラはナイフを構え、ミミは鋭い目をルシアンに向けた。

こいつ、強いなんてもんじゃない。


「どうぞ、お気をつけくださいませ。魔王様を倒しに来た不届き者たちよ、私がこの場で排除させていただきます。」

ルシアンが一礼しながら言った。


その声には冷徹な決意が宿り、不敵な笑みが張り付いている。

ルシアンはこの試練で作られた存在だと知らず、純粋に魔王を守る使命を果たそうとしている。


「みなさん!私がサポートいたします!」

マチが杖を掲げて構える。

マチの僧侶としての補助魔法が頼りだ。

「補助魔法・活力増進リフレッシュ・ベール!」

マチの魔法により体が少し軽くなった気がした。

パトラが行くよ!と逆ケンタウロス型の使役魔物をけしかける。


もう出てきた。


あんまり見たくなかったんだが。

魔物が突進したが、ルシアンは軽やかに身をかわす。

「そのような獣では、私の服を汚すこともかないません。」


次にミミが動いた。

高速で飛びかかり、拳を振り下ろした。

だが、ルシアンは一瞬で背後に回り、翼から黒い風を放つ。

「お客人の動き、速すぎて目が回りますねぇ。」

と言いながら、ミミを壁に叩きつけた。


「ミミ、大丈夫か!?」

「まだまだ問題ないのじゃ。」

と返ってきたが、壁にひびが入るほどの衝撃だ。

ミミがおされている・・・。


状況がまずい。

俺はルシアンの動きを観察した。

必ず隙があるはずだ、一瞬を見極めるしかない。


「みんな、俺の合図で一斉に仕掛けよう!」


ルシアンがミミに黒い風を放った瞬間、俺は「ジャンプ」で空に飛び上がり、「蹴り」を頭に叩き込んだ。

マチが「補助魔法・俊敏強化スピードアップ!」で加速させ、パトラが「馬面、突っ込め!」と魔物をけしかけ、ミミが蹴りを連打した。


「これは、これは。不届き者どもの連携、見事でございますねぇ。」

ルシアンは、俺の蹴りを片腕で受け止めると同時に、黒い風でミミと魔物を吹き飛ばし、パトラを翼の先で弾き返した。


「手荒な攻撃ですねぇ。」

息を乱す様子もなく、冷たく言い放つ。

強さの底が知れない。


地面に着地し、マチが俺たちに回復魔法を唱える。「みなさん、お怪我はありませんか?」

パトラがナイフを構え、ミミがまだまだ、と息を整えた。

ルシアンはモノクルを直す動作をみせる。

「お見事でございます。魔王様をお守りするため、本気で排除せねばなりませんねぇ。お覚悟を。」


さらに空気がさらに重くなる。


「魔王様への忠義、お見せいたします。」

翼を広げた瞬間、黒い風が渦を巻き、部屋全体が震えた。

ミミが突っ込んだが、ルシアンは片手で腕を掴みむ。


「失礼ながら、野うさぎには爪切りが必要ですねぇ。」

そのまま床に投げ飛ばした。

ミミが床に叩きつけられ、衝撃で床が砕ける。


パトラが「馬面、援護!」と魔物を突進させたが、黒い風で吹き飛ばされ、パトラ自身も吹き飛ばされた。


マチが「補助魔法・防御強化!(シールド)」と唱えたが、ルシアンの次の攻撃が速すぎる。


翼から黒い羽根が矢のように飛んできて、俺は「ジャンプ」で避けたが、パトラが引っかかり転んだ。

パトラに駆け寄り、起こす。


ミミが立ち上がり、背後から拳を振り下ろした。

ルシアンは両腕を広げ、黒い風の渦を強化させる。


「その程度では私には届きませんよ!」


ミミを巻き込んだ。

俺は新スキル「ダッシュ」を試した。

瞬発力を活かし、一瞬で渦の横に回り込んで蹴りを叩き込んだ。


だが、ルシアンは素早く翼を振って俺を弾き返す。

「粗末な足技ですねぇ。」

軽くあしらわれ、壁に叩きつけられる。


ここまで圧倒的に強いのか・・・!?

俺たちの攻撃が全く届かない。


「魔王様を守るため、不届き者どもに慈悲はございませんよ。」


冷たく言い放ち、翼を一振りしただけで黒い風が刃のように部屋を切り裂いた。

壁が崩れ、天井が落ちかけ、俺たちは散り散りに吹き飛ばされた。

ミミが膝をつき、パトラが叫びながら壁に叩きつけられ、マチが吹き飛ばされる。


俺は「ジャンプ」で瓦礫を避けたが、次の攻撃がすぐさま来た。

黒い羽根が雨のように降り注ぎ、俺の腕をかすめて血が飛び散った。


「こいつ、強すぎるぞ・・・!」


俺は歯を食いしばった。

ルシアンは黒い風を再び放った。

今度は竜巻のような勢いで、ミミに襲いかかる。

なんとかミミは抑え込もうとするが。


「堪えきれんのじゃ・・・!?」


吹き飛ばされ、壁に激突して動かなくなった。

パトラも共に吹き飛ばされ、肩を押さえて膝をついた。

「みなさん、すぐに回復します!」

回復魔法をかけてくれたが、ルシアンの猛攻が止まらない。


「そのような小細工、無意味ですよ!」

杖を握るマチの手を黒い風で切り裂き、マチが倒れ込んだ。


俺は「ダッシュ」で距離を取ったが、ルシアンの視線が俺を捉えた。


「逃がしはしません!」


翼を広げた瞬間、黒い風が俺を直撃し、地面に叩きつけられ、骨が軋む音がした。


「ぐあっ・・・!」


みんな次々と倒れ、俺の攻撃もまるで通じない。

このままじゃ全滅だ。


「この程度で魔王様に挑もうとしていたのですか?」


黒い風を放とうとした瞬間、俺は「ダッシュ」で接近し、新スキル「スクラッチ」を放った。

うさぎの鋭い爪を模した動きで側面を切り裂こうとしたが、一瞬で防がれた。

無駄です!

逆に俺を吹き飛ばした。

「・・・っ!」

だが、その瞬間、俺は何かを感じた。


あいつの黒い風を放つ動作、その直後に一瞬だけ体が硬直する。

あそこだ!

でも、まだ届かない。

俺たちの力じゃ足りない。


ミミが立ち上がり突っ込む。


「愚かな抵抗です!」


黒い風で弾き返し、ミミを再び床に叩きつけた。

パトラがナイフを投げたが、翼がそれを弾き返し、腕に傷を負わせた。

俺は「ジャンプ」で跳び、「蹴り」を叩き込んだが、受け止められる。


「その程度ですか?」

冷たく言い放った。


何度も立ち上がり、何度も倒される。

ルシアンの強さは絶望的だ。

だが、戦いが続く中で、俺はその硬直の瞬間を何度も確認した。


「みんな、あの風を放つ瞬間を狙うぞ。そこが唯一の隙だ!」

「なるほど・・・。お主、良い観察力ではないか。」

「最後まで行くよ・・・。」

パトラ立ち上がり、マチが私もまだ大丈夫です、と杖を握り直した。


「最後の仕上げをいたしましょうか。」


ルシアンが翼を広げた瞬間、黒い風が竜巻のように襲ってきた。

部屋が崩壊し、瓦礫が飛び散る。

マチが「補助魔法・防御強化シールド!」を唱え、俺たちを強化する。

黒い羽根がマチの肩を貫いた。

俺は「ダッシュ」で回避しつつ、動きを見極める。


再び黒い風を放とうとしたその刹那、俺は「ダッシュ」で一瞬にして接近し、「ジャンプ」で跳び上がり「跳兎烈蹴」を叩き込んだ。

翼が広がり、体が硬直した瞬間だ。

ミミが横から突っ込み、パトラが魔物をけしかけた。


「こっコレは・・・!?」

ルシアンの反応が僅かにだが間に合わない。


俺の「跳兎烈蹴」が頭を直撃し、ミミの高速で繰り出される鋭い蹴りが翼を切り裂き、魔物が足に噛みついた。


「くっ・・・今のは少し効きましたよ。」

ルシアンがよろめいた。


だが、すぐに立ち直り、まだ終わりではございません。

黒い風を放ち、俺たちを再び吹き飛ばした。


「今の全部喰らってまだ立つのかよ・・・。」


俺は最後の力を振り絞り立ち上がる。

黒い風を放つ瞬間、俺は「ダッシュ」で接近し再び、「跳兎烈蹴」を叩き込む。

さっきの攻撃が効いているのか、俺の蹴りをかわしきれない。

腹部に命中し、吹き飛ばす。


「終わりじゃ!」

ミミの激しい蹴りの猛襲がルシアンを襲う。


「ぐあぁぁあぁぁぁぁぁ!!」


「まさか・・・。この私が、このような不届者たちに・・・。魔王様・・・、お役目を果たせず申し訳ありません・・・。」

黒い風が消え、翼がボロボロになり、灰となって崩れ落ちる。

「えい。」

すかさずパトラがナイフをルシアンに突き刺す。

いや、それはどうなんだろう・・・。

トドメになるのか?

完全に崩れ落ちている途中だったが・・・。


「おぉー!新たなる我が王よ!これからは私に何なりとご命令ください。」


今のでいいんかい!


ルシアンが新たに使役された。

でもこれは心強い味方が増えた。


パトラのやつ、このまま魔物たちを従えていくと、俺たちの中で最強になるんじゃないか?

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