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どうやら運だけはいいみたいです  作者: イッキ
異世界「兎」始動編
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兎にも角にも

異世界ドタバタファンタジーを書いてみました。

楽しんでいただければと思います。

いつも俺は空を見上げていた。

趣味は散歩で青空を眺めながら何も考えずボーっと歩くのが好きだった。

家ではボーっと漫画を読み、アニメを観て過ごす毎日。

勉強は嫌いだ。面倒臭い。面倒臭い事は大嫌いでやろうとも思わない。運動も同じく面倒臭い。

ただボーっとして過ごしたい。

普通の学校生活、普通の暮らし。

このまま何も変わらないと思っていたんだ。

あの日も空を見ながら歩いていた。

全く気が付かなかったんだ。

マンホールの蓋が開いていた事に。


気がつくと俺は知らない場所にいた。

そこは真っ白で何も無い空間だった。自分が立っているのか浮いているのかすら分からない様なただ真っ白な世界。

ここが何処だかなんて考えても答えは出ない。

闇雲に動き回った所で何かが見つかるほど都合よく出来てなどいないだろう。

ここで俺がとる行動は一つ。ボーっとすることだ。

どちらが上か下かもよく分からなかったが、何も無い空間に俺は大の字で寝そべって見せた。


「あきれた。」


唐突に聞こえた声に俺は飛び上がり辺りを見渡すと前から背中に羽を生やした女性がこっちに向かって近づいてきている。


「あなた今の状況分かってないの?」

分かっていないに決まっている。

何も答えなんて出ていない。いや、考えてもすらいないのだから。


「あの。あなたは誰でここはどこですか?」


はぁっため息をついたあと額に手を当て少し引いた様な目で女性はこちらを見つめる。


「私は天使ミカエル。あなたはたった今死んだの。」


思考が纏まらない。

確かに背中には羽があり見た事もないような絶世の美女だ。

だからと言って簡単に信じていい物だろうか?そんな話信じられるか!っと啖呵を切ってみたかったが普段から女性と話慣れていない俺はこう聞き返すのがやっとだった。


「俺、死んだんですか?」


こくりと頷き俺に人差し指を突き立てる。


鳶目珀兎えんもくはくと!あなたはたった今、マンホールに落ちて死んだの。私は案内人よ。あなたにこれからの事を選ばせてあげる。」


確かに落下した様な感覚があった気がする。しかし、マンホールに落ちて死んだなんて。なんて情け無い死に方だ。

落胆している俺にミカエルさんは聞いてる?と肩を突いてくる。


「・・・選ばせてあげるって何を選ぶんですか?」

それは勿論と唇に人差し指を当てウインクをしミカエルさんはこう言った。


「天国に行くか地獄に行くか。」


突拍子も無いセリフに驚き、それって自分で選べるんですか?と聞き返そうとしたときだった。


「もう一つ。異世界に行くか。」


ニヤニヤとした顔で、如何にもこう言えば絶対に異世界を選びますって顔をしている。

小説や漫画、アニメで流行ってるアレですか。

何か特別な力や物を与えられて異世界で活躍するみたいな。

普通の生活をしていた俺が世界を救う勇者になるみたいなやつね。


はいはい。

わかりました。

わかりました。

話はよーくわかりましたよ。


「天国がいいです。」


「そーよね。やっぱりそこを選ぶわよね。・・・は?」


「だから天国がいいです。」


いやいやいやと首が取れんばかりに振り、あなた何を考えているのと肩をゆすってくる。


「いい?異世界に行くってことは特別な物。つまり私たち天使から加護を与えられた物を持って行くことが出来るの。」


知ってる。


「つまりあなたは異世界で天使の加護を与えられた特別な存在になれるってことなの。」


知ってる。


「ねっ!ねっ!あなたの人生はたった今終わりを迎えてしまったけれど、違う世界で特別な存在になってもう一度やり直せるの。素敵な話でしょ?」


思わなくも無い。だが面倒臭さが勝ってしまう。

「どうせ魔王とかがいてそいつを倒せーとかなんでしょ?」


「そうね。いるわよ。魔王。」


「天国でお願いします。」


どこから出しているのか分からない小石を浴びせてくる。


「あんな花畑しかなくて一日中ボーっとしてるだけの所なんて何がいいのよ。」


最高じゃないか。

だがこのまま小石をずっと浴びせてられるのも溜まった物じゃ無い。


「あーもお!異世界に行くなら何をいただけるんですか。」


待ってましたとゴソゴソとしはじめ俺の前に広げて見せた。

まだ行くとは言っていない。


「へぇ。色んな物があるんですね。えっとこれは?」


俺はなにやらホワホワでモコモコなとても手触りの良い何かを手に取った。


「あっそれに決めたのね。えーっとそれはうさぎのしっぽね。」


・・・は?

「いや、これじゃなくて。」


他にも凄そうな剣や鎧もある。ゆっくり考えよう。


「ダメダメダメ。一度手にした物は戻さないで。ほらあなたの世界でも流行ったでしょ。ウイルスの感染。神経質な人もいて他の人が触った物に触りたく無いって人もいるのよ。」


殴り飛ばしてやろうかこの天使。


「はい。じゃあそこに立って。」

「いやちょっと待って。これじゃ無くて、それに心の準備も!」


俺の言葉なんて聞きもせずミカエルは詠唱を始めると足物から青い光がたちのぼる。


「ちょっと待っ・・・」


いってらっしゃーいと遠くなる声が聞こえた。


目が覚めると俺は知らない場所にいた。

それもそうだ。ここはミカエルが言っていた異世界なのだろう。

あの女。次に会ったら覚えておけよ。

雲が太陽を隠し薄暗くなった所でふと顔を上げた。

太陽を遮った小さな雲が動き再び光が射す。手で顔を覆いながら空を見つめる。


「綺麗な空だ。」


辺りを見回すと奥の方に小さく街のような物がみえる。

ここにいても仕方がない。ぐーっと背伸びをしながら歩みを進めた時に気付いた。

腰にホワホワでモコモコがついている。


「うさぎのしっぽね。」


ふとミカエルの顔が過り苛立ちはしたが心を落ち着かせ腰から外してじっくりと物を良く見てみる。

これでも天使から加護を受けた品物なんだろう。

どう言った効果があるのかは分からないがとりあえず大切にしよう。

腰に付け直し再び歩みを進めようとした時、地面が盛り上がった。


「なっなんだ!?」


それは地面から勢いよく飛び出し、俺は近くの木の上まで吹き飛ばされた。


「なんだあれ。」


目を凝らして見てみるとなにやら大きなモグラの様な生き物が群を成している。


「おーい。にいちゃん。大丈夫かー。」


下から聞こえた声の方を見てみると如何にも戦士です。みたいな男と魔法使いです。みたいな女が立ちこちらに向かって手を振っている。

ゆっくり落ちない様に気を配りなんとか下まで降りた。


「にいちゃん。運が良かったな。あいつらはキツネーゼって言う人を食う魔物だ。」


モグラじゃなくて?


「吹き飛ばされていなかったら今頃は・・・」

「キツネーゼは普段地中に穴を掘り寝ぐらにしている魔物なんだ。」


モグラじゃなくて?


「にいちゃんが歩いた音に釣られてエサだと思い現れたんだろう。」

「はぁ。でも困ったな。この先の街に行きたいのに。」


俺たちに任せな!っと二人は果敢にモグラ(キツネーゼ)へと武器を構えて向かっていった。

あっと言う間だった。

その場には剣と杖だけが残され、腹が満たされて満足したのか魔物たちは地中へと戻っていった。


「いや怖っ!!」


また出て来たら嫌なので足音を立てない様に静かにゆっくりと街へ向かった。


近くでみるとかなり大きな街だった。

魔物の侵入を防ぐ為か外壁で囲まれていて門の前には兵士の様な人達が武器を手に取り大勢立っている。

何気ない顔で門を潜ろうとした時、兵士達から槍を突き立てられた。


「止まれ。貴様。通行証は持っているか?」


勿論そんな物見た事も無いわけで持っている訳が無い。


「まっ、待ってください。俺この世界に来たばかりで何も分からなくて。」


貴様じゃ無い!と退かされ後ろを振り返ると黒いマントで全身を覆い隠す見るからに怪しい人物が槍を向けられていた。


「貴様は冒険者だろう。その変わった格好を見ればわかる。

冒険者に通行証は必要ない。だから早く中に入れ。」


言われるがままに中に入ったが黒いマントの人物が気になって仕方がなかった。


「貴様。この街、ホッカイドウワデッカイドウに何の用だ。」


もう街の名前については何も言わないことにしよう。てかなげぇよ。


「その怪しい身なり。魔王の手の者ではなかろうな。」


場に緊張が走る。


「通行証だ。これでいいだろう。通して貰うぞ。」


どうやら通行証を持っていたようだ。

通行証を見た兵士達が失礼しましたと頭を下げ黒マントを中へと迎え入れた。

俺は確かに正面から黒マントを見ていたはずだった。

眼はいい方だ。

しかし一瞬で見失ったと思ったら後ろから声がした。


「鳶目珀兎」


背筋に悪寒が走り振り返ったが姿は無かった。


ふとある事に気が付いた。

そう言えばミカエルからは何をしたらいいかを聞いていない。

俺はこの世界で何をすればいいんだ?


「そこのキミ。」

「えっ俺ですか?」


知らない女性から声を掛けられた。

歳は同じくらい?17、8と言ったところか?


「キミも冒険者でしょ?行きたいクエストがあってパーティを組んでくれる人を探してるの。ステータスはどのくらい?」


ステータス?そんなもの自分で確認出来るものなのだろうか。


「ねっ。ちょっとでいいからさ。見せてよ。」


そう言うと女性は俺の顎に片手を添えた。

こっこれってもしかして!?パーティに誘うと見せかけた新たなナンパなのでは!


「いい?動かないでよ!」

「は?」


そう言うともう片方の手で俺の頬を思いっきり叩いた。


「いってぇ。いきなり何すんだよ!」


人に叩かれたのは人生で初めてだった。


「あっ出た出た。ん?何ってステータス出しただけだよ。キミ見た事ないの?」


確かに何かが飛び出した感覚はあったが・・・

なんだこの世界。


「えーっとどれどれー。え?なにこれ?」


頬を摩りながら気になるので自分でも確認してみる。


「キミ。運以外のステータスほとんど最低値じゃ無い!?」

なっ!?

どうやら赤字で書かれているステータスが最低値なのであろう。

確かにその殆どが赤字で書かれていて低い数値だ。

どうしてこんなに低い数値が・・・


思い返して見れば普段から面倒臭いことから逃れ続けて何もしてこなかったが。

まさかここまでとは。


「でもこれ。キミ、運の値はカンストしてる・・・。」

運の数値は青字で255と書かれていた。

運が高い?

マンホールに落ちて死んだ俺が?

訳の分からない天使にここへ送られ、何をしたらいいかも聞かされていない俺が?

すぅーと大きく息を吸い込み。


「そんな訳あるかい!!」


急な大声に街にいる人達が振り返り驚きを見せる。

「びっくりしたー。んー。えーっと。あのそれじゃあ私忙しいから。またね。」


と勢いよく逃げ去ろうとした、まだ名前すらも聞いていない女の服を掴み逃さないようにする。

「・・・パーティメンバーをお探しなんですよね。」

「あー。あはは。そのー。」

「お探しなんですよね!」


こうして俺はこの女性パトラのパーティに加わりクエストに向かう事となった。

ちなみに飛び出したステータスをどうやって戻せばいいのか聞いたところ、飲み込めばいいと言われたので飲み込んだ。

まったり更新していきますので、よろしくお願いします。

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