無名の探偵
「俺が指を鳴らしてらお前はゲイだってことを忘れる。」
俺が言うとユアの弟は不思議そうな顔をした、俺はそのまま指を鳴らした。
「何言ってんだてめぇ、俺ちゃんはゲイじゃねぇ」
「うんうん、そうだね。」
「いや!ほんとだって!」
「うん、信じるよ。」
俺は笑いをこらえた。
「いやいや…ゲイじゃねぇし…」
「言い訳はいいよ」
あの変なところから救出されて、というか誘拐?されて3日たった。
いつの間にかユアの弟は自分の部屋に戻っていて、みんな自分の生活をしているようだ、前に学校に行かないのか? と聞いたが今は疲れたから家族ごと休憩中、らしい。
たった一つ気になる点がある、それは、まだユアの弟の名前を知らないことだ、自己紹介なんてされてないし、聞いてもいない。
「なぁ、お前名前なんて言うんだ?」
彼に聞いた。
「名前? お父さんはユアにしか名前をあげてないよ。」
「はぁ?」
彼はテーブルの上にあったコップを取って口に運んだ。
「しいていうなら五月雨豪ってかっこいい名前ジャン?」
彼はそう言うと俺はテーブルに手を置いてこういった。
「でも、それお前の刀の名前だろ? 違う名前を思いつけないのか? てか、なんで名前を…」
言いながら、俺は少し胸が痛んだ。なんでこんな当たり前のことを、こいつは持ってないんだろうって。
「変な目で見るなって。」
彼はそう言う。
「変な目なんかで見てない、どちらかというとゲイのお前が見てる。」
「ゲイじゃねぇ!」
少しだけこの意外ときれいなリビングで沈黙が続いた。
「名前が欲しいのか?」
俺は聞いた。
「別に、これまでなくても生きてきたし」
彼はまたカップを口に運んだ
「そのカップ何も入ってないだろ、飲んでるふりしないでさっさと水とって来いよ」
俺がそういうと彼はゆっくりと俺を見ながらキッチンへ向かい、俺から目を離さずに蛇口から水を出して飲み始めた。
「変な奴。」
俺は彼に聞こえないように小さな声で言った。
「なんか言ったか?」
「いや、何も、ただ、あのボタンを本当にお前のケツに入れられたらいいなぁって」
「五月雨豪がうずいてるぜ。。。ことばには気をつけろよ。」
こいつは五月雨豪を寝てる間も背中に担いでいて、ずっと離れない。
誰にも触れさせないし、俺すらも触ろうとすると腕をつかまれる。相当自分の刀に情熱を持った野郎だ。
水を飲み終えると彼は玄関へと向かった。
「どこ行くんだ?」
「ここ近くに俺の金を借りてるやつがいるんだ、取り返しに行く。」
「今?」
「そうだ、たったさっき思い出した」
彼は玄関を開けるちょっと前に俺はかれのところにいった。
「俺も行くぜ。」
「一人で行く」
「いやいや、どんな奴か見てみてぇよ」
「ならいいや、こいよ。」
俺たちは二人で10分ほど歩いていると、どこにでもあるような建物に行きついた。
その建物は1階マッサージ店、2階探偵事務所、3階が開いているところだ。
「マッサージ店の店長さんに金貸すほどそんなにかわいかったのか?」
「ちげぇよ、探偵のほうだ」
そういうと階段を上がっていったのだが、刀がデカすぎて壁に突っかかり階段から俺の足元まで落ちてきた。
「いやん、私のスカートの中身みないでぇ」
俺はそう言うと彼は無言で立ってから刀を背中から外して手に持っていくことにした。
「ふんっ!」
俺はそのままふざけた。
2階に行きつくと彼は俺にシーっと黙らせた、静かに入るらしい。
そう思った矢先に刀を握って扉を切り落とした。
「ボリスゥゥ!!!」
ボリスとやらは悲鳴を上げた。
「うひょうひょうひゃあああああ!!!」
ユアの弟は狂気じみた笑みを浮かべながら、どんどん部屋の奥へ進み、男のデスクまでたどり着いた。
刀の刃先をじわりと、彼の首元へと向ける。
「ボリスうぅぅぅぅぅ!!!」
男は慌てて身をよじりながら、青ざめた顔で震え声を漏らす。
「うひょ、ひょひょひょ!!」
「凪、こいつがボリスだ、ロシア生まれのアメリカ人ハーフなんだってよ。」
「は、ひゃい」
男は相当殺されたくないらしい。
「そうなんだね、へー。金は?」
俺が言うとボリスは答えた。
「えっとね!あのね!タバコとパチンコに使った!」
「ボリスぅぅぅぅぅぅ!!!!」
ユアの弟は再び男の名前を叫ぶと男はまた絶叫した。
「えっとね、あのね、もう少し待ってよ。ね?俺悲惨な過去あるから!ね?悲惨な過去のせいでこうなったから!ね?」
「知らねぇよボケ金出せ。」
「乗り気だな凪、俺ちゃんの金なのに」
そういわれると確かにと納得してしまった。
「じゃあ任せるよ。」
俺は彼にそういった。
「お前ら二人とも油断は禁物って聞いたことあるか?」
「は?」
「は?」
俺と彼は同時に、男の言葉に一瞬戸惑った。
「今の時代はな、ネットで調べりゃお前の持ってるその刀みたいなシュツグ買えるんだよ!ね!」
すると彼はこういった。
「術具を買っても使い方知らなけりゃ死ぬんだよくそ外人。」
「術具?」
俺は疑問を言葉にした。
「お前の友達は術具も知らんのか!」
ボリスは首に刀をつけられていても元気なようだ。
「凪、術具ってのは何等かあの特殊効果とか、力を持った武器かものなんだ、俺ちゃんの五月雨豪は霧を作り出せる。」
へー。
「じゃあお前のは?」
俺はボリスに向かっていった。
「いやいや、それがすごくてな。。。ってあぶねぇ!いうところだった!」
「ヘタレ!さっさと金の居場所と術具の効果をいえ!」
彼が言うとボリスはまた絶叫した。
「わかったわかった…海だ。」
「なんだって?」
俺が言うと部屋は突然海水でいっぱいになり、ユアの弟はびっくりして刀を離してしまう。
話した刀は重さで落ちていくが、俺たちは浮いている。
俺の心臓は急に跳ね上げ、鼓動が激しくなった、俺は急に息ができなくなった。
俺は海恐怖症だ。気づてしまった。
ユアの弟は刀を取りに下へと泳いでいく、しかし俺はパニックに陥っていた。
目の前が真っ暗になって、肺の奥が燃えるように苦しくなった。
どこを見ても、青く、暗く、深い。
「はは!てめぇらは術具の主じゃねぇから息ができねぇんだ!かわいそうだな!」
突然ボリスの声が聞こえた、前から来ている。
下から弟が必死に何かを伝えようとしている、しかし俺は動けない。
「あ?」
ボリスは突然は俺のほうを向いた。
「はぁはぁはぁ…」
俺はいきぎれ、、、まてよ、なんで息ができるんだ。
水の中なのに?
息ができる理由はわからない。でも、確かにこの胸の奥に、何かが、何かが――。
「年に一度、地球のどこかのあ人間が、ある神の、ある能力を引きつくことになるの、凪、あなたは海の神、ポセイドンから力を引き継いだの。」
ユアの言葉が脳裏に浮かんだ。
突然、おれは深呼吸をして落ち着こうとした。
ポセイドンなら水とか操れるよな? 頑張れば俺だって…
すると刀が後ろから高速で飛んできた。
「うお!」
俺はびっくりしてよけたが刀はまだ先へと進んでいく。
「うぎょ!!俺の足が!!」
ボリスの声が聞こえた。
「てめぇら、ここで根絶やしにしてやる!!」