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黒沢と白沢

 昼、なのだろうか。時間がわからない。

 町の中でゆっくり、一歩ずつ歩いていた、どこに向かうべきか、わからずに。

 

 僕の名前は松本勇気、16歳、趣味は絵描きで好きな食べ物は寿司だ。

 それとも、ラーメンだったっけ? あれ。

 気が付くと児童館の前にいた、そこには子供が中で漫画を読んだりゲームをしたり遊んでいる。

 僕は休憩しようと思い中に入った。

「お兄ちゃん?! 血だらけじゃないか!」

 児童館で働いているおっさんが僕に話しかけ、タオルを持ってきて僕の頭を拭き始めた。

 僕は、なぜか怒りで前が赤くなった、すべては逆転し、僕に触れていたおっさん以外は消えた。

「え?」

 おっさんは何が起こったのか、理解していなかった。

 さっきまであったおもちゃたちはすべて天井、いや、地面? にあった。

 僕は彼の首元をつかみ、両手で持ち上げ、窓まで彼の頭を突っ込むとガラスは割れて破片が彼の顔に刺さる。

 そのまま奥へと押し込むと、彼は空へと落ちて行った。

 瞬きをするとすべては元に戻り、さっきまで僕を支配していた怒りはなくなった。

 ただおっさんがいない。 少しすると外で何かが落ちてくる巨大な音が聞こえた。

 見てみるとそれは落ちてくる衝撃でつぶれたおっさんの死体だった。

 魂を得て、俺は強くなる。言葉が突然頭に響く

 強くなる

 魂

 魂

 魂

 殺せ。

「お前が殺したんだ」

 聞こえたのはお父さんの声だった、後ろを向くとお父さんがいた。

「俺も、お前に殺された。」

 ろくでなし!お前は僕の母親を殴りつけた男だ!

「お前は俺を殺した男だ」

 糞野郎! クズめ! 

 なぜ、言葉を発せずともお父さんには僕の言いたいことが分かっていたようだ。

「勇気、お前は自慢の息子だ。」

 自慢?自分の子供を殺そうとしておいて、自慢だと?

「お父さんは、普通じゃないから、勇気がこんな風に育った。」

 何言ってんだ。

「俺は、過去にも人を殺したことがあった。お前のお母さんはわかっていた。」

 どういう…

「お前が住んでるあの家で、子供を三人虐殺した。」


 沈黙、それが僕の答えだった。

 僕は児童館からひそかに出ていきまたもや町の中をあるきだした。

 鳥のさえずりと、風の音を聞きながらあるいていると家に着いた。

 家に入りリビングのソファーに座るとテレビの前にお母さんがいた。

「邪魔だよ、お母さん。」

 お母さんは答えなかった。

「テレビ見えないよ。」

 お母さんはそれでも答えなかった。

 僕は、涙を流す意味を自分に問いかけた、だって、今泣いても何も解決しないんだから。

 テレビの前で首を吊ったお母さんを見ていると、そう思えた。

「お母さん…」

 僕はソファーから立ち上がり、地面をみながらつられた母の遺体を抱きしめた。

 テーブルに手紙があることに気が付いた。

 そこには、彼女の遺体のかたずけをしなければならない人たちへの謝罪、警察への謝罪。

 しかし、僕のことは一切言及されていなかった。

 僕は、眠ることにした、眠ったほうが簡単なのだろうと思った、見なくてもいいからと。

 

 どれだけ眠ったのかは知らない、今計算なんかしたくはない。

 僕は制服に着替えてパンを食べて母に挨拶をしようとした。

 上を見ようとしたが、結局は地面を見ることしかできなかった。

 食べ終え、家を出ようと玄関を開けた時二人の男が立っていた。

 右の男が先に口を開けた。

「勇気君?戻ってきたんだね、お母さんから連絡がなかったからおかしいと思ってここに来たんだ、ただの家出でよかったよ。 私は白沢、隣にいるのが黒沢だ、私たち二人とも刑事をしているんだ。

お母さんとちょっと話をしても?」

 右の男、いや、白沢が言うと隣の男も続けた

「私たち二人ともパーティーピーポーうえぃうえぃじゃよ」

 黒沢は白沢に比べて非常に年を食っている。

「若者言葉を使わないでって言ったでしょうが!黒沢さん!」

「すみません、お母さんは今は体調不良で寝込んでいるんです。また後日にお伺いしてくれるとうれしいです。」

 僕は冷静に答えたが白沢はしつこい

「いやぁ、大丈夫だよ、1分もかからないさ、一言くらいしゃべれるだろう?」

「今寝ているんです、起こさないで上げ、、て下さい。」

 僕が言うと黒沢は心配した。

「どうした、兄ちゃん、ずっと下見つめて」

「学校に行かなきゃなので、また、今日はここまで来てくれてありがとうございます…」

 僕はいうと二人を置いていき、自転車で学校に向かってこぎ続けた。


「あのガキ、おかしい。」

 黒沢は左手に煙草を持ちそういった。

「拳銃は持ってきたか、白沢。」

「いえ…子供相手に使うとは思えなかったので」

「あほたれが、ありゃガキじゃねぇ」

「じゃあ、勇気君は何ですか?」

「しらねぇ」

 そういうと黒沢は煙草をふかし始めた。

「肺に悪いですよ」

「どうでもええ」

 白沢はため息をついてこういった。

「勇気君がいない間に入るってのはどうです?」

「不法侵入だあほたれ」

「じゃあ。。。」

「違うガキをつかうんだよ」


僕は自分に何ができるのかを考えた、風は冷たく、まだ冬の雪が残っているこの道で。

 前がむける、上が見える。

 空は青い、少し曇っているが、それでも青い。

 僕は人を二人殺した。そう、殺したのだ。

 おやじを殺したときは気合と怒りで何とかなったが、児童館のあの人は? なんであんな人を殺してしまったのだろう、僕にもわからない。 こう、突然何かが舞い上がって、ものすごく腹が立って…あっさりと。

 僕はおっさんを殺したあの時、世界が逆さだった。 天井のランプは僕の足元にあり、子供たちが使って遊んでいたおもちゃは天井、僕の上にあった。

 おっさんは、落ちた。でも空に?

 わからない、でも、別に今はわからなくていいと思った。

 心残りがあっても、別に、このしろい山々と青い空が見れるのであれば平和だと思った。

学校はざわめき始める。

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