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第98話 山道

《登場人物》


ミミ  隊員、アヤカの付き人、女


ねずみうさぎ  動物系、魔法を使える


メンティア  森ゴブリン、異世界出身、女性

第98話 山道



異世界、山道、4日目



ミミ  「上り坂になってきましたね。」


メンティア  「今日中に森を抜けますよ」


ねずみうさぎ  「長かったような短かったような。」


ミミ  「気を抜いたら疲れがどっと押し寄せてきそうな気がします。旅って大変ですね。」


メンティア  「みなさん普段は何をしてらっしゃるんですか?」


ミミ  「わたしとアヤカさんはお城で内勤してます。食事の用意とか事務作業とか。」


ねずみ  「わいは森暮らしやな。」


メンティア  「ベルさんとダリアさんは?」


ミミ  「ベルさんは接客業で、ダリアさんはお城の警備です。」


メンティア  「それぞれいろんなことをしているんですね。私も人間界に行ってみたいです。」


ミミ  「もしも来ることがあれば言ってください。案内しますよ。」


ねずみうさぎ  「無事に帰れればええんやけどな。」


ミミ  「帰れますよ。みんなで協力すればできないことはありませんてば。」


メンティア  「ミミさんは前向きですね。」


ねずみうさぎ  「楽観的なんや。」


ミミ  「旅の計画を聞かされた時点では途方もないことだと思ってましたけど、今のところうまくいってるじゃありませんか。案外なんとかなるんですよ。」


ねずみうさぎ  「今のところはな。1時間後にはどうなってるかわからんで。風向きは変わるん

や。」


メンティア  「大丈夫ですよ。魔物に襲われたとしても落ち着いて対処すればいいんです。」


ねずみうさぎ  「メンティア。もしかしたら気づいとるかもしれんけど、一応言っとくわ。実際のところ、わいら全然戦えへんで。」


メンティア  「そうなんですか?」


ねずみうさぎ  「そうや。わいらほんまは異世界まで来れるようなパーティーじゃないねん。魔物に襲われたらイチコロやで。」


ミミ  「ねずみうさぎさんの魔法があればなんとかなりますよ。」


ねずみうさぎ  「何言うてんねん。昨日の晩、みんなに強化魔法かけたけどほとんど何も変わらんかったやないかい。試練でアヤカが爆発したのはまぐれやったんや。次はないで。」


ミミ  「きっと何か理由があるんですよ。」


ねずみうさぎ  「そりゃそうやろうけど、今の時点でアヤカとくじゃくまが使い物にならへんのは痛すぎるで。」


ミミ  「ダリアさんがなんとかしてくれますよ。」


ねずみうさぎ  「いくら頼りになるとはいえ、一人で全員を守るなんて無理や。」


メンティア  「こんなこと聞くのもおかしいかも知れませんけど、不死鳥に会って大丈夫なんですかね。凶暴だって聞いてますけど。」


ねずみうさぎ  「そうなん?! やっぱり危ないんや。」


ミミ  「不死鳥が凶暴だとしても、行くしかないんです。」


ねずみうさぎ  「リーダーがあれやからな。」



3人は後方を振り返る。アヤカとくじゃくま、ダリア、ベルが4人で固まってとぼとぼと歩いている。



メンティア  「意志の強そうな人です。アヤカさんは。」


ねずみうさぎ  「頑固なんや。敵わんで。」


ミミ  「やる時はやってくれるんですよ。」


ねずみうさぎ  「死ぬのは時間の問題や。」


メンティア  「やられそうになったら逃げればいいんです。」


ねずみうさぎ  「そのつもりや。わいは逃げるで。野生では生き抜くことが正義なんや。」


ミミ  「アヤカさんは最後まで戦いますよ。」


メンティア  「こうして聞いてみると、どちらが正しいのかわからなくなりそうです。逃げるのも正義だし。信念を貫き戦うのも正義といえるような。」


ねずみうさぎ  「そういうことや。どっちも間違ってないねん。」


メンティア  「私も逃げますよ。」


ミミ  「えぇ?!」


ねずみうさぎ  「そらそうやろ。昨日今日知り合ったどこの誰かもわからん連中のために命かけられるかいな。」


ミミ  「言ってみただけですよ。マジレスやめてくださいってば。」


ねずみうさぎ  「どこまでが本気かわかりにくいねん。」


ミミ  「今のは声のトーンでわかったでしょう? いい加減なツッコミでした。」


ねずみうさぎ  「求め過ぎや。そんなん言われたらなんも喋られへん。わいはプロのコメディアンやない。自然の森で生活してたただのねずみうさぎやで。」


メンティア  「ツッコミって疲れません?」


ねずみうさぎ  「疲れる。」


ミミ  「何言ってるんですか。疲れるのはこっちも同じですよ。歩いてると疲れは溜まるんです。ツッコミが疲れるなら、ツッコまれてる側だって疲れますよ。」


ねずみうさぎ  「反論せんかったら同意してるのと変わらへん。わいは正直者なんや。」


メンティア  「きっとねずみうさぎさんに救われてる人は少なからずいますよ。」


ねずみうさぎ  「とはいえ、自分の意見を言ったところで何もかも思い通りいかんことだってある。どっちがお得なんやろな。」



3人はしばらく無言になる。地面を踏む音が少しずつ大きくなっていく。



(第98話 山道 完)


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