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運命変転 悲しみの鎖に囚われし世界  作者: 蛸の八っちゃん
第五章-α 二度と戻らぬ温かき思い出
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脱獄

数時間後 どこかの牢獄 岩で作られている拷問部屋

武器を没収された岳斗は今、椅子に全身を縛られている。 と、肥満エルフ看守の一人がバケツの水を岳斗の顔に思い切り振りかけた。

 岳斗「うぐっ……!」

 看守「おい、答えろ。 なぜ列車に飛び移ったのだ?」

 岳斗「なんでって…… 空港に行く必要があったからだ。 他の星の仲間を探さなければいけねえ」

 看守「ふうむ…… なるほどな。 おい、あれを貸せ」

看守が右手を出した。 ドアが開いて、外から部下らしきホヴォビ男がやってきて、短い鞭を右手に置いた。 左手を軽く叩きながら、岳斗に歩いてくる。

 看守「さて…… どこまで持つか見ものだな」

 岳斗「……っ」

背中に回ると、岳斗の背中を思い切り叩いた。 なんとか悲鳴を堪える。

 岳斗「……ッ!」

 看守「さあ、答えるのだ。 ハリー・マグダーンの居場所をな」

 岳斗「ハリー……? 待て、俺は知らん。 第一、他の時空から来たんだ」

 看守「……それは貴様の体に聞いてみればいいことだ。 そらっ!」

岳斗の全身は牢獄を響かせる楽器と化した…… 日も暮れた頃、傷だらけの岳斗は薄暗い部屋に乱暴に投げ込まれた。 鍵が閉まる音と看守たちが歩き去る足音が甲高く響いた。

 岳斗「くそ…… このままくたばってたまるかよ。 とりあえず回復だ」

自分に回復魔法をかけようとしたが、疲労困憊で魔法がかけられない。 体を動かそうとしたが、手足の先が少し動かせるだけだった。

 岳斗「……焦っても仕方ねえ。 今は寝て、体力を回復するだけだ。 明日のことは明日考えよう」

言い終わらないうちに眠り始めた。


翌朝 目を覚ました岳斗は背伸びして、大きいあくびをした。

 岳斗「ファーアァ〜…… 試しにピッキングするか」

超音波で細い棒を形作って、鍵穴をいじること10分…… しかし、素人なので、鍵が開く気配すら出せなかった。 諦めて、床に座り込んだ。

 岳斗「隙を見て、どこかで逃げるしかねえ。 でも焦らない方がいい。 根気比べと行くか」

二度寝を始めようとしたその時! 雷の音がして、床に穴が開いた。

 岳斗「なっ!? なんだ……?」

 ダニエル「岳斗、助けに来たぞ」

穴から、ダニエルが出てきた。 岳斗に脱獄を急かした。

 ダニエル「ほれ、見つからんうちに出るんじゃ」

 岳斗「わかった。 ……あっ 剣、没収されちゃった。 すまねえ」

 ダニエル「気にするな。 持っとるわい」

 岳斗「えっ!」

 ダニエル「さっさとつけるんじゃ、ほい」

タスキになっている双剣ベルトを岳斗に渡した。 手早く腰に装備して、二人とも穴を潜り始めた。

 ダニエル「おっと、時間稼ぎはしないとのう」

ハンマーで穴を封じて、岳斗そっくりの人形を作った。


地上への穴を歩く二人。 広く作ってくれたので、中腰にはならなくて良かった。

 岳斗「なあ、俺の双剣、何処にあったんだ?」

 ダニエル「看守室にあったんじゃよ。 自分でも褒めたくなるほど装飾が綺麗じゃから、売り払う気かもしれんかったのう」

 岳斗「あの野郎…… 勝手に人のものを自分の金にすんじゃねーよ、全く……ん? どうして俺が捕まっているって知ってた?」

 ダニエル「ああ、わしは4ヶ月前にここに来てから、王国と武器鍛造の取引商売で生計を立てておった。 で、昨日お主が数人の兵士に連れ去られているのを見かけたんじゃ。 わしは位置送信機能付きてんとう虫を飛ばして、お主と双剣の居場所を特定したわけじゃ」

 岳斗「そうか…… よかった、あんたがいてくれて。 正直心細かった」

 ダニエル「フォフォフォ、この調子で残りの仲間を探そうかのう」


穴を進んで、廃ビルの地下に出た。 階段を登って、外のドアを押すと街の喧噪が響く街道に出た。 獣人、サイボーグ、魔物など様々な顔ぶれが街道を歩いていた。

 ダニエル「木を隠すには森じゃよ。 このまま人混みに紛れて、逃げるぞ」

 岳斗「わかった」

しばらく、人混みを歩くとバスステーションが見えてきた。

 ダニエル「よし、12番が一番早く王国を抜けられるルートじゃ」

 岳斗「OK」

12番のバス停に行った。 発車間際で少し混んでいるバスに乗って、運転手に駄賃を払った。 直後に出発したバスの中で、二人は地図を見ていた。

 岳斗「それで次はどうする?」

 ダニエル「終点まで行ったら、ロエウフ駅から北に行こう。 北には大都市のイウェス町がある」

 岳斗「そこで情報を集めるわけか」

イウェス町を目指して、バスに揺られること十数分後。 異変は突然起きた。 客全員が首を捻って、岳斗を真顔でじっと見始めた。

 岳斗「な……? 俺、何かしたか!?」

岳斗の問いに誰も答えない。 と、ダニエルが奇妙な違和感に気づいた。 運転手が岳斗を見つめながら、運転しているのだ。 前方の赤い車に接近した。

 ダニエル「危ないッ!」

しかし、運転手はハンドルを回して、車を難なく追い越した。

 ダニエル「……!? どういうことじゃ、まるで見えてるみたいな?」


突然、後ろからパトカーの音が聞こえてきた。

 ダニエル「なにっ!? どこからバレた?」

 岳斗「ダニエル、驚いている暇はねえ! 逃げるんだッ!」

言い終わらないうちに、ダニエルを尻尾で巻いて、窓に跳躍した。 顔を両手でガードして、窓を破った。 地上に舞い降りた二人は数台のパトカーを視野に入れた。 岳斗が周りを見渡す。

 岳斗「くそっ、何か代わりの足はねえか?」

 ダニエル「時間を稼ぐぞ。 テラキュダス・ラサシェ!」

ダニエルがハンマーを地面に叩いたと同時に、パトカーの進路を塞ぐ棘が大量に生えた。 急ブレーキと驚き声が響き渡った。

 岳斗「あっ、あれだ!」

岳斗がちょうど二人乗りのバイクを見つけた。 持ち主であるチンピラ二人は女性を前後に囲んで、何か言っていた。 周りの状況が耳に入っていないが、奇妙なことに3人とも顔を岳斗の方に向けている。

 チンピラ1「ゲヘヘへ…… 俺たちと遊びに行こうじゃねえか」

 女性「やっ、やめてください! 手を離して!」

 チンピラ2「いやですなァ〜 君、可愛いっしょ。 そう怒るなよぉ〜?」

 女性「助けてーー! 誰か!」

3人の前に岳斗が駆けつけてきた。 有無を言わさず、左のチンピラの顔面に左ジャブをお見舞いした。 鼻血を出しながら数メートル吹き飛んで、白目で倒れたチンピラ。 しかし、二人は岳斗を見つめたまま振り返っていない。

 チンピラ2「てめえっ! 俺の仲間を……」

 岳斗「無駄口を叩くな。 舌噛むぞ」

目にも止まらぬ右キックをもう一人の顎にクリーンヒットさせた。 さっきよりも高く飛び上がって、地面に激しく衝突した。 ダニエルが走ってきたところで、岳斗がバイクにまたがった。

 岳斗「悪いな、壊れるまで借りてもらうぜ」

ダニエルが後ろに座って、尻尾の根本に捕まると同時に、アクセルをふかして、向こうに走り去って行った。

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