表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命変転 悲しみの鎖に囚われし世界  作者: 蛸の八っちゃん
第四章 修羅の道を彷徨う魚人と旅人の星に吠える白虎
83/163

失われた時空魔法 時飛ばし

二人が蜜月取引を終えた頃 マカロフとチャミーンは空中で像が出てくるのを待っていた。


「そろそろ出てくる頃どす。 少し待っとくれやっしゃ」


「うむ」


と、チャミーンが目を閉じて、額に人差し指を当てて黙った。 しばらくして、目を開けながら言った。


「今、トザェモーンから連絡がきた。 裏切り者の粛清を完了したそうどす」


「ああ、あの長い剣の侍か。 あの男も浅はかでしたな、最後の最後で我々の秘密を口にしかけました……実力は惜しいが、復活は取り消しですな。 フヒャヒャヒャ」


「あら あの男、うちはいけ好かへん思てました。 消えて当然どす。 それよりもトザェモーンの方がええ男どすえ」


ケンシローの悪口をぶちまけたチャミーンの前にナッツァの蔓が伸びてきた。 白虎像を持ってきたようだ。


「終わった? あんさん、仕事早いなあ」


チャミーンが差し出した右手の上に蔓が来て、先端を開いた。 蔓がチュープのように膨張と収縮を繰り返しながら、像を上に運んで、チャミーンの右手に出した。


「ふふふ、これで……ッ!?」


満足したように微笑んだチャミーンが目を大きく見開いて驚いた。 白虎像ではなく、金太郎像――左手の指2本を鼻に突っ込みながら、右手で尻を叩いている。 さらに彼の顔は「く」を横にした眉毛、白目、上歯を噛んだ「う」の口、鼻の下を伸ばしている――だった。


「なるほど、どうやら咄嗟に入れ替えたようですね。 奴らはまだどこかに隠れているのでしょう」


マカロフが冷静に言い放った横で、チャミーンが目を見開いたまま震えている。 と、金太郎像を在らん限りの力で握りつぶし、呪いの言葉を遠くまで響かせた。 整って美しい顔を醜く歪ませている。


「……あんの畜生小娘ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーッ!!! ギ、ギリギリ……殺す、ぶっ殺す……ッ!」


あまりの憎しみに力を入れた指が手のひらを貫通して、そこから血……じゃなくてゲロよりも臭い水が滝のように流れ出た。 そのチャミーンの前に、突然ウィルソンが透明解除したように現れた。


「フェアリーブレイズ」


「……ッ!?」


激しい怒りで反応が遅れたチャミーンを横に指一本でなぞるようにして、高速で飛び去った。


「あーあ……その木人形、パオリザ星のマシュマシュに付いてた期間限定のやつだったのに」


「貴様ッ! 今地獄を……」


血管が浮かび上がった怒顔で振り返ったチャミーンだったが、激しい衝撃と共に鳩尾から腰まで消失するほどの無惨で真っ二つに裂かれ、ゲロ水を吐きながら地面に落ちていった。


「むっ!?」


「次はあたしの番だ! 日の陰に潜りし罪人よ、星の深淵に沈めッ!」


空中で舞空しているマドレーヌの呪文で、地面が激しく揺れ、ナッツァの大木を液体化した地中に引き摺り込んだ。 蔓が一斉に地上に脱出しようともがいているが、地面が液体なので、這い上がれないで全て深淵に力強く引き下ろされるしかない。


「うわァァァ亜ァァあーーーーッッ!!!」


大木の幹から出ていた巨大顔白目ナッツァが断末魔を上げながら、光なき世界に沈んでいった。 それを見届けたマドレーヌがマカロフと同じ高さに降りてきて、言った。


「さて、残るはあんた一人だ」


「フォフォフォ……命知らずのお馬鹿さんっているものですな。 この私に魔法勝負を挑もうとでも?」


「命知らずはどっちだ? 老い先短い命、大事にした方がいいぜ」


「心配には及びませんぞ。 人生と魔法に関しては経験豊富でしてな……」


「おっと、ジジイの話を聞いてるほど暇じゃないんだ。 とっとと冥府に行きやがれ!!」


間をおかず、マドレーヌが光球の弾幕をマカロフに浴びさせた。 嘲笑を浮かべながら、上に避けたマカロフをマドレーヌが追う。


「愚かですな……ドレパーセ・サナトゥ」


マカロフを紫色の球が包んだ……と思うと、球が無数のかまいたちとして全方位に発射された。


「アホか? あたしの方にだけ発射すればいいのに」


マドレーヌは自分に向かってきたかまいたちを避けた。 しかし、後ろから別のかまいたちがマドレーヌに向かってきた。


(危ない! 後ろだ)


(なっ……!)


テレパシーの伝通で気づいて、なんとかかわした。 よく見ると、かまいたちが軌道を曲げて、全て自分に向かっている。


「何ッ 追尾だと!?」


かまいたちは数も多く、移動・回転スピードも多い。 マカロフどころではなくなり、避けるのに精一杯のマドレーヌ。


「くそっ、しつこい!」


「フォッフォッ あなたにはそうやって死神と舞踊しているのがお似合いですぞ」


「はぁ、しょうがない。 今助けてやる、ロストパラレル!」


下から飛び追ってきたウィルソンがかまいたちを囲む丸をなぞるように、指を動かすと、なんと! かまいたちが次々と薄くなり、消えていった。 追いついたウィルソンがマドレーヌの横で空中浮遊している。


「助かった……サンキュー」


「礼はいいよ。 ポテチ1ヶ月分で勘弁してやる」


「はいはい」


「なるほど、別の並行世界に私のかまいたちを移したようですな。 フォフォフォ、面白くなりそうな予感がしますぞ」


「くそがッ 笑っていられるのも今のうちだぜ、もやしジジィ!」


「……それはどうですかな?」


目を大きく見開きながら、不気味に微笑んだ。 二人はマカロフの攻撃を警戒している……と、その時! 時が止まる奇妙な感覚を感じたと思った時には、すでに神殿の前の液体地面に叩きつけられた。 液体とはいえ、衝撃は大きく、二人はしばらく立ち上がれなかった。


「……ッ!? な……にが……?」


「いてえ……地面に叩きつけられたようだ。 しかも、俺たちの時間――奇妙な感覚を感じてから地面に叩きつけられるまでの時間――が消えた。 マドレーヌ、まさか……!」


「こんなバカなことがあってたまるかよ……! 時飛ばし、4000年前の宇宙聖戦を機に失われた伝説の時空魔法しかありえないなんて!」


マドレーヌとウィルソンはすっかりいつもの調子を忘れて、ただただ驚きながら冷や汗を流しているだけだ。 それを空中浮遊で上から見つめているマカロフは変わらず、不気味に唇が裂けるような笑いを浮かべている。


「おやおや……どうしましたかな? どうやら、さっきまでの勢いは並行世界にでも置いてしまったようですな」


「くっ……」


マカロフは優越感を感じながら、干からびてほとんど骨しかない指を鳴らした。 同時に液体砂漠から迷宮にいた無数のミイラどもが浮かび上がり、二人にゆっくり向かってくる。 マドレーヌとウィルソンは反撃を試みようとしたが、落下衝撃のダメージで魔法・念力を出すどころか立ち上がる体力も失われてしまった。


「マドレーヌ……加那江たちを出すんだ」


「横取りされたらどうするんだよッ……!」


「あいつらに横取りされても同じじゃないか。 なら、岳斗たちに取られた方がマシだろ。 いざとなったらゼロが一気に奪い返せるからな。 他に手はない…… 頼む、やってくれ!」


「ちくしょう……まさか、あいつらの力を借りることになるなんて……太陽の女神よ、あなたの慈悲で永遠の夜を彷徨う罪人に光の赦しを与えたまえ……!!」


無力の悔しさに泣きながらも、プライドよりも目的を優先させて加那江たちを白虎の外に出そうとした。 舌を噛むような思いで呪文を唱えて、祈った。 ……しかし届かなかった。 何も起こらなかった……マドレーヌは力無く呟くだけだった。


「そんな……」


「フフフ、冥土の土産にでも教えてやりましょう。 時飛ばしも封印も私の『運命固定』によるものです。 この力には運命の力を持った者にしか抗えません」


「運命……固定…………だと!?」


「フォフォフォ、皮肉ですな。 あなた方が封じたおかげで、今我々は有利となり、あなた方は不利になっている。 さあ、醜い死を私にしかと見せてくださいね、ふッひひひィひィィィーーーーーーーーッ!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ