決戦
それは全身を覆う白いフードをかぶった1人の男に変わった。 フードの影に隠れていて、表情は伺えないが、口は笑っているように見える。
「ふふふ、まさかここまでやってくれるとはねえ」
「お前は誰なの? あんなモンスターを送り込んで、地球をどうしようというの?」
「まあそう慌てるな、ここはもうすぐ焼け落ちる。 場所を変えようじゃないか」
男はそう言って、指を鳴らした。 その瞬間、風景が宇宙と月の表面に変わって、地球が見える。 岳斗たちが周りを見回して驚く間もなく、魔導士は質問した。
「さあ これで舞台は整った。 貴様らの目的はなんだ?」
「そうだな、てめーら結社をぶっ潰すことかな。 これで俺の方は言った。 あんたの方も言うのが筋だろ」
「ふふふ 筋は通ってるねえ。 わかった、言おう。 目的はこの世界の運命を固定することなのだ。 私は結社に忠誠を誓ってるのでね、結社の敵は殺さなければいけないのだよ」
「悪いな 俺らだってこの世界を守る目的があるからな」
「とにかく貴方は倒さなければいけないわ」加那江が双銃を取り出す。
「降参するなら今のうちだぜ」岳斗が剣を構えた。
「フハハっ じゃあ始めようではないか」
魔導士はそう言うと、何やら呪文を唱え始めた。 それと同時に彼の周りに紫色の魔道陣が浮かぶ。
「冥土の死神よ 愚か者をゴルゴタの十字の貼り付けにせよ」
地面から数十本の棘鎖が生えてきて、三人に向かって襲いかかる。
「あの棘は奴の魔法によって生み出されたものだ。 奴本体を倒すぜ、岳斗。 カナちゃんは棘処理を頼む」
「よし」
「わかったわ」
「岳斗に韋駄天の足を与えよ。 そして、加那江の銃に氷の加護を与えよ」
岳斗は身軽となり、棘を避けつつ、魔術師の元に向かった。 加那江は氷を纏った弾を棘に発射して、棘を凍らせた。
岳斗が鎖の棘が刺さってないところにジャンプして、鎖を蹴った。 その勢いを利用して、魔術師に向かってジャンプして、斬ろうとした。
「真っ二つにしてやらあ。 とりゃあーっ!! 飛天流星斬っ!」
「偉大なる我を守るバリアよ いざ現れん!」
魔術師はそう言うと彼の周りに半球のバリアが現れた。 バリアに攻撃を弾かれた岳斗はバク転して、着陸した。
「ムダだよ。 あらゆる攻撃は通じない」
「ならばこれはどうだ。 世界の源よ、今一度全ての始まり(ビックバン)に立ち戻らんとせよ!」
奴のバリア、数多の棘鎖、隕石など、彼の周りにあるあらゆる物体が魔導士を中心の一点に収縮して、奴を潰さんとする。
「ぐわあああ!!」
「やった!?」
そこには自然の神秘に押しつぶされて、地獄への切符を強制的に予約されかけてるかのこどく、身体中から血を流していて、満身創痍の魔導士が立っていた。
「フハハハハァ……お見事だな。 まさかここまでやるとはな……どうやらみくびってたらしい。 しかし、貴様らは死ぬのだ。 何もすることもなくな!」
奴はそう言うと、火の玉をあたり一面に放った。 三人は火の玉を避けながら、反撃の機会を伺う。
「くっ、炎の弾!? 気をつけて! あいつ、まだ死力を尽している!」
「フハハハァー! ムダなあがきはやめるがよろしい!」
「わるいけど、みんなそこまであきらめが悪くないわよ!」
「冥界にもだえる炎よ! 彼に終わることなき煉獄を与えよ!」
シャルルの呪文で魔導士の下に魔法陣が現れた。 そこから火が出て、呻き声とともに彼を焼き尽くした。
「!! ぐうおおお……!」
「ひるんだ! 今だ岳斗!」
「わあってるぜ! 疾葬昇虎剣!」
岳斗はそう言うと、魔術師に駆け寄って、スライディングした。 そして足元で跳躍して、今まさに相手の顎を天に打ち上げんとした時……。
「どう足掻いてもどうにもならないこともあるのだ……終焉は存在しない時の中にある。 絶望に沈め」
魔導士が不気味に微笑んだ瞬間、世界を形作る陽子や電子一つまでもあらゆるもの全てが静止した。 音もこの世界から消え去った。 レゴリスも地球が反射した光を受けて、キラキラしたまま止まった。 魔導士以外は。
岳斗は最後の一撃に全てを賭けていた しかしながら、誰も知らない時の中で、岳斗の全身を赤い蔓つるが貫いた……。
「時が動き出す時、それは貴様の最期だ……」
突然、魔導士は皮が張り裂けそうなほど目を見開きながら、呟いた。 だが、その岳斗が突然蜃気楼のように消えた。
「なっ! バカな この私だけの世界では避けられるはずがないっ!」
魔導士は体を硬直して、叫んだ。
「おい へっぽこ野郎っ! 上だ!」
「なにっ!」
「いくぜ 飛天流星斬!」
魔導士が驚いて上を見た時、止まった時の中で静止してる岩を土台に岳斗は蹴り上がる――いや、蹴り下がって、魔術師に流星のこどく一撃を振り下ろした。
その一撃は凄まじい振動で月が揺れて、岳斗よりはるかに大きいクレーターができたと同時に、魔導士の体を左股まで切り裂いていた。
「うぐぐぐあーーーッ!! ……まさか人こどきにやられるとは。 ちくしょう……デスティニーブレーカーめ」
奴は口惜しそうにそう言うと、二枚おろしのこどく左右に裂けて倒れ伏した。 そして、黒いチリとなり、消え去った。
「おい やったなあ! よく避けたな」
ふと、疑問に思った。
(しかし、なぜ岳斗はこの状況下で動けたんだ?)
「これで終わったのね。 ああよかった」
「そうだな ん? シャルル なに悩んでるんだ?」
「あっ ああ……最後、奴が時の魔法を持ってるとは思わなかったが、まさか岳斗が奴の世界の中で動けるとも思わなかったからな。 俺でさえ動けなかったのに」
「こいつあ 雲を掴むような話だが、運命変転を使ったんだそうだ」
「運命変転? なによ?」
ここで、魔導士が時空停止魔法を発動した時まで、時を遡る……。