トンファーヌ迷宮 攻略開始!
神殿の前
着陸した宇宙船AIは外の環境を確認している。
「……O2濃度、クリア。 人体有毒物チェック…クリア。 気温・湿度チェック…クリア。 オールクリア、外出を許可します」
「よし、じゃあ行くわよ!」
「あいよ」
宇宙船のドアをスライドし、外に出た一行。 神殿は全体的に赤錆に覆われて、表面をさらに土砂に覆われている。
「よく見ると赤錆があるな。 ここも昔は海だったか」
「今にも崩れ落ちそうな状態じゃな。 長居するには脆すぎる」
「ねえ、とにかく中に入ってみようよ」
「うむ」
神殿の中 錆びて、折れた柱がいくつか床に転がっている。
神殿を歩いていると奥に白い扉の欠片が迷宮の入り口の前で散らばっていた。
「これって、壊れてる? 一体何があったの?」
「流されないで一箇所に散らばっている…おそらく、人為的に壊されたと思いますよ」
「一体誰なんだ……?」
ダニエルが扉のカケラを拾い上げて、注意深く観察した。 そして、予想外な答えに驚いた。
「これは……!! なぜ……?」
「パパ、どうしたの? 何が不思議なんだい?」
「みんな、これは石灰石じゃ」
「それがどうしたの?」
「まずは石灰石は二酸化炭素を含んだ水に溶けることを頭に入れといてくれ。 その上で、レオナルド、この星は昔はどうなっていた?」
「昔……? 確か、星が全て海に覆われていたんだっけな。 空気に触れると星の命が弱まる……つまり、水位が少し変化しても空気に触れないくらい深いということか」
「うむ、深海というのがポイントじゃ。 深海は水圧が高い、水温が低くなる、生物の死骸が沈んでくるという性質がある。 簡単に言うと死骸を微生物が分解して、二酸化炭素が発生し、高い水圧・低水温で深海に留まりやすくなる」
「入りやすく、出にくい……そりゃ、溜まってくるよな」
「そう、つまり、深海は二酸化炭素を多く含む海水……石灰石を溶かすには十分じゃ」
ダニエルの一言にアレキサンダーが一瞬首をかじけた。
「溶かすって……残っているんじゃない?」
「ああ、なぜなら海が引いてから作られたものだからじゃよ」
ダニエルの衝撃の一言に、皆は大変な事実に気づいた。
「はっ…!! これは海の民じゃない何者かが作ったんだわ。 こんな干からびている所で扉を作れるとは思えない」
「白虎を取られたくない者の仕業ですか……今のところはわかりませんが、七つの大罪とはまた別の勢力でしょう」
「そうか、大罪の奴らも四獣を奪おうとしているんだったな。 だったら扉を作って、守るなんて変だな」
ダニエルが今度は扉のカケラを元の場所に置いて、少し遠くから見ていた。
「どうしたんだ? まだ何かあったのか?」
「……ふむ、海が引いても空気の摩擦による風化でだんだん小さくなるが、このカケラは扉を作れそうなくらい残っておる。 つまり、そう遠くないうちに誰かかによって壊されたと言うわけじゃ」
「何!? まさか、俺たちよりも先に白虎を狙っている奴がいるのか!?」
「思い当たるのは、7つの大罪の奴らか。 急がないと、取られてしまうぜ!」
「ああ! みんな準備はいいな!」
「おうっ!」
一行は駆け足で入り口の奥に入って行った。 それを遠くから見ている2人。
片目が隠れていて、2つの団子髪の髪型で、手に収まる人形を持っている女性と赤いはちまきを頭に巻いている白い空手着の熱血マッチョだった。
「ウフフ……まさか突き止められるとは思わへんかったわ」
「どうすっ? 今ならまだ追いつっせぇ、叩きんめらるっどん。(どうする? 今ならまだ追いついて、叩きのめられるが。)」
「いいえ、様子を見まひょ。 どっちみち白虎を持って行って、ここに現れた時が奴らの最期やで」
「わかった。 よーし、腕がなるで!」
迷宮 通路
外見とは違って、茶色の壁に覆われている。 一定間隔に置かれているろうそくが心細く照らしている。
「なんか不気味な所だね。 とっとと見つけて、おさらばしようよ!」
「ああ、中もいつ崩れるかわからんからな」
少し歩くと3本道に別れている。 全ての道に白骨死体が散らばっていた。
「みんな! ちょっと止まって、あれを見てください!」
「うおっ、骸骨か!? 罠にかかってボックリのパターンか」
「しかも全部の道にあるのか……」
「どうすんだい!? いきなり通行止めじゃないか? 加那江、運命消失で罠を消せないのかい?」
加那江はため息を吐いて、首を振った。
「はぁ…無理よ。 どうやら、この力は体力を消費するらしいわ。 何度も使えないと思う」
「ええー……」
アレキサンダーがしょんぼりする横で死体を注視したジェシカがつぶやいた。
「あれっ、なにか違うような?」
「どうした? 何に気づいたんだ?」
「ええ、死に方が違うような気がしたのです」
「うーん、ってことは罠が違うってことだろうか」
「あ、確かに左は骨に穴が空いているな。 それに真ん中は部分がバラバラに散らばっていて、切れ味が鋭い」
「それで言うと右は頭蓋骨が潰されて、薄くなっていますね」
「あー、なるほど。 それぞれ左から槍刺し、ギロチン、押し潰しってわけか」
「ほう、右の頭蓋骨は思ったよりもべちゃんこじゃなさそうじゃ。 これなら丈夫な支え棒を置いとけば、大丈夫かもしれんな」
「なら、ダニエル、貴方の錬金ハンマーで棒を作ればいいじゃない!」
「うむ、そうじゃな」
ダニエルが右の道に向いて、ハンマーを地面に叩いた。 潰れた頭蓋骨辺りで雷が発生し、岩柱が現れた。
「よっしゃ! 右に行くぜ」
「ああ。 一応、柱が押し潰されないかどうかチェックしよう。
時空の神クロノスよ、虚空の激流に流されし遺物を彷徨う我の元に授けよ!」
シャルルが唱えると柱の横から黒い金属物体が空中に現れ、豪快な着地音を立てた。 その瞬間、天井の岩が降りてきて、柱を押し潰し始めた。
「よし、持ち堪えてるな。 早く行こう」
「ああ」
安全に右の道を進んだ一行。 レオナルドが振り返って、さっきの分岐点に火の玉を出現させた。
「火の玉……もしかして、迷わないように?」
「ああ、それに俺は障害物を隔てても自分の炎を認識できる。 マッピングは任せてくれ」
「おお、これで安心して探索できるな。 いい考えだ」




