表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命変転 悲しみの鎖に囚われし世界  作者: 蛸の八っちゃん
第一章 少年の中で廻り出す運命の歯車
6/127

月へ

 放課後、合流した2人は昨日とは別の場所、廃校になったとある小学校の入り口前に来ていた。 その小学校は30年前に廃校になってから管理する人もいないため、所々床が抜けていたり、埃をかぶっている。


「加那江、なぜ昨日と違う所?」


「シャルルから『今日はここに集合してくれ』とのことだったの」


「そうか、ところで学校とさっき迷った世界での喋り方が違うんだが……?」


「余計なトラブルとかめんどくさいから、学校では可愛い女の子を演じているの。 あまり気にしないで」


「ふーん、そうか」


 2年5組の教室(机やイスがまとめて、端っこにおかれている)に入った2人は改めて今日の作戦を練ることにした。 と、岳斗がシャルルの姿が見えないことに疑問を持った。


「そういやシャルルは?」


「月にある組織のアジトを探すから、来るのが遅れるらしいわ」


「そうか。 ところで、普段は何をしてるんだ?」


「奴らがこちらの世界に侵入してこないように宇宙をあちこちパトロールしてるの。 アジトが見つかるまでの時間稼ぎみたいなものだけど」


「宇宙……? ちなみに地球以外にも文明はあるのか?」


「そうよ。 そして私はこの宇宙のどこかにランダムにあらわれる時空の歪みを封じるために世界を旅してきたわ。 今回はここに歪みが現れた」


「そうか……もし月のどこにあるかがわかったとしてもさ、月でどうやって息するんだ?」


「それは俺が答えよう」声の方向に岳斗が振り返った。


 教室の扉にシャルルが立っていた。


「シャルル! もしや魔法か?」


「ご名答! 生命が育たない環境でも行動できる魔法だ」


「シャルル。それで、月のどこにあるか分かった?」


「完璧だぜ! 月の裏側のクレーターに氷が張っていてな、底に建物があった。行きも帰りも移動魔法使うから心配いらない」


「じゃあ、行くか!」


 楽感的な岳斗に対し、加那江は慎重そうに言った。


「待って! そのアジトの地図、敵の戦闘データは分かってるの?」


「いや、アジトの周りに探索妨害電波塔が建てられていて、細かいところまでは分からん。 でも、正直最近モンスターがさらに凶暴化して、いつこの世界への扉を破られるかわからない状況なんだ。だから、今日行った方がいいと思うぜ」


「どうかしら……3人でなんとかなるか分からないのよ?」


 あまりにも不確実な情報での突撃に不安な顔を浮かべた。そんな不安を吹き飛ばすように岳斗が陽気に言い放った。


「行こうぜ。 昨日の戦いでも何とかなってきたぜ。 俺は剣と囮、加那江は銃の遠隔攻撃、シャルルは参謀でいろんな魔法使えるだろ。 三人が互いをカバーすりゃ、敵もそう簡単に攻めらんねーだろ」


 岳斗の自信に押され、加那江はため息をついて仕方なく賛同する。


「ふぅ……しょうがないわね。 でも、危なくなったら一も二もなくワープで逃げるわよ」


「おう。 じゃあ、作戦練るか。おい、2人とも耳貸せ」






 光に見放されし裏の世界。 鉄に近い無機質な材料で作られたアジトの一端での風景。 工場、建物全体がさらに大きい屋根に覆われていて、その屋根には無数のライトが輝いている。


「169号 異常はないか?」


「はい 140号 異常ありません」


「わかった。 引き続き警戒せよ」


「了解しました」


 アジト内の警戒探索員2人(そいつらは白く塗装された人型ロボット 目から赤い光が懐中電灯みたいに放たれている)が状況報告を終えて、立ち去った後……。


「さてと 誰もいないな」


「まさかダクトの中にワープするとはね。 狭くて、埃煙かったわ」


「まあな。 だが、ショートカットにはなっただろ」


 廊下の通気口から舞い降りた2人は行動を開始した。


「ここだな。 右に行ったらモンスター製造工場、左はその工場を管理する区域がある」


「岳斗は上手くやってるかしら?」


「あいつは大丈夫だろ。 あれでいて、けっこー強いんだぜ。 剣道の道場に通っていて、今中伝まで後ちょっとらしいぞ」


「そうなの? そういえば、あの体のこなしは素人の動きじゃないわね」


「さっ 早く行こうぜ。 あいつが時間稼ぎしてくれるしな」





 その頃 工場にある製造機械が乱れのないリズムを奏でている陰で、作戦開始前に待機している奴がいた。


「さてと、そろそろだ。ひと暴れしちゃうか。まずはやっぱりこれだよな」


 岳斗は目を輝かせてそう言うと、軽い身のこなしで、次々と機械を斬り始めた。 ロボットたちは突然の襲撃に怒りを隠さなかった。


「なんだっ!」


「侵入者だ! やっつけろッ!」


「わあーっ!!」


「ありゃりゃ〜、すげー数だこと」


 数多のロボットどもが侵入者排除の任務を遂行せんと襲いかかってくるが、岳斗は奴らの動きを見切って、最小限の動きやステップで、一切り御免なり。 奴らはネジやエンジン部品を空中に撒き散らしながら、冷酷なる女神の肌に偉大なる接吻を成し遂げた。 岳斗は歯を見せて大笑いしながら胸を張っている。


「どんどん来やがれ! 俺の準備運動に付き合いなっ!」







 ロボットの大多数が正体不明の剣豪ボーイの排除にあたっているとき、猫と女子のコンビはメンテナンス室を探していた。


「よし 狙い通りだぜ。こっちは空いてるぞ」


「早く探しましょう。 あっ、前に地図があるわ」


「おお なるほど、3階の奥にあるのか」


「ここは1階の真ん中あたりね。 エレベーターがあるけど、念の為に階段使いましょうか」


「そうだな」







 息が切れ始めた岳斗の周りには100体以上の白い残骸が横たわっているが、まだ50体ほど残っている。 流石の岳斗もロボットの大群を煩わしく思い始めている。


「はぁ……やれやれ まだやるのか? 負け惜しみだな」


「くそっ、キリがない! おい、あれを出せ」


「わかりました。 おい、開けろーっ!」


「ぎぎぎああああっっっ」


「なんだなんだ、今の叫び声は? 尋常じゃない奴が来るな」


 ロボットたちの叫び声と共に突然、工場一帯が影に覆われた。 馬鹿でかいモンスターが地下から地上に上げるリフトに乗って、現れたからである。 十メートルをはるかに超える大きさで、尻尾に一メートルほどの黒く鋭い棘を備え付けていた。 そして、8本の足があり、それら1つ1つが人間をいとも容易く踏み潰せるであろう。


 岳斗はしばらく口を開けたまま眺めていたが、ため息をついて、この蠍を倒すことに集中した。


「こんなのもあり? 参ったよほんと しょーがねーな、やるか」


 蠍は棘を岳斗めがけて打ち下ろした。岳斗は蠍に向かって走って、かわした。


「たしか、蠍は心臓が弱点だったな。 実際射手座に狙われてる……おっ! いかにも弱点を突いてくださいと言わんばかりに胸が柔らかいぜ」


 罠かと考えたが、とりあえずプランBを考える前にプランAを実行すればいいのだ! その気持ちで腹に駆けた。 その時、蠍の横腹からロケットが両側から10発ずつ岳斗に向かって打ち出された。


「うげっ。 避けるか」


 岳斗は一旦横に避けて、やり過ごした。 レゴリスが舞い上がり、無数のクレーターを形作った。 すぐに次のミサイルが発射された。


「ええー 厄介だな こんなに早く次のミサイルが出るのか!」


 蠍の尻尾と脚を避けながら、様々な角度から来るミサイルから逃げて、タイミングを測る。


「よしよし だんだんわかってきた。 おいっ ミサイル野郎、こっちだぜ」


 ミサイルを蠍の足に誘導させた。 当たる前、空中に高くジャンプしてかわした。 ターゲットを見失った突撃隊は己の母艦の命とも言える脚に衝突して、その足を爆発させた。 その衝撃で、蠍は体を反転させ、胸(弱点)をみせた。


「上手く行ったな。 あとはとどめだ」


 その時、上から尻尾がうなりをあげて岳斗に襲いかかった。 岳斗は今蠍の胸のちょうど上の空中に浮いている。


「OH,SHIT! まだ残ってた、避けられん。 いや待てよ」


 何か閃いた岳斗は尻尾を正面に見て、剣を前に構えた。 蠍が尻尾を突き刺さんとした瞬間岳斗は剣で尻尾を受け流し、勢い余って、胸のところに行かせた。


 果たして、見事に突き刺さり、蠍は束の間の絶叫をあげ、すぐに静かになった。 ロボットたちの間で動揺が広がっている。


「なんだとっ」


「そんなばかな!?」


「あの馬鹿でかいモンスターがやられるなんて」


「おい 次のモンスターを出せっ」


「うーむ 流石にこれで終わりなんて甘くないか。 しかし、流石に疲れたぜ…… やばいな」岳斗がぼやいた。


 リフトの音がして、次のモンスターが登場するかと思われたが、突然リフトが止まった。 そればかりでなく、工場の稼働音も止んだ。


 次の瞬間、工場から爆発があちこちに起こり始め、その炎が工場を包み始めた。


「おい どういうことだ!」


 どこからか駆け付けたロボットが慌ただしく言った。


「大変です! ただいまメンテナンス室に侵入者が! しかも、そいつら、工場全体のシステムを故障させて、使い物にならなくさせてるのであります」


「なんだとっ じゃあ工場は廃棄するしかないのか!」


「そうかと思われます……」


「うぬぬぬ われらの偉大なる計画を邪魔しやがってぇ。 ああそん……」


 嘆きかけた一体が突然止まったかと思うと、他の奴らも機能停止してしまったようだ。


「おおっ あの2人が成功したみたいだな さて合流して帰るか」


 そこにシャルルと加那江が走ってきた。


「岳斗! 終わったわよ」


「2人とも無事だったのか!」


「おうよ もはやここにゃ用はねー。 おさらばしよう」


 3人が地球に帰ろうとした時、黒い霧が何もない空間から突然現れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ