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運命変転 悲しみの鎖に囚われし世界  作者: 蛸の八っちゃん
第四章 滅びの星を彷徨う魚人と旅人の星に吠える白虎
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教祖様

ハバラーノ星 草原


岳斗たちが船を降りるとそこには花や草が生い茂る楽園のような景観だ。


一行はあまりの絶景に目を奪われ、思わず歓声が漏れ出た。


「おー! 綺麗な風景ですね。 心が洗われる」


「こんなとこに隕石が衝突したのがまるで嘘のようだ」


「でも、本当の話じゃな。 行くか」


「おう。 ここから南か」


「日が傾いてきてるが、急げば、夕暮れには現場近くの村に着くだろ」


「じゃあ、いきましょう」





夕暮れ 近くの海から夕陽が赤く染める風景を眺められる漁村


生まれて初めて、遥かに大きい海を見たアレキサンダーが歓声を上げた。


「わあー……!! これって海……!? 初めて見たけど、すごい!! すごい大きいよっ!!」


「そうじゃな。 わしもじゃよ。 いやー、わしらが小さく思えてくるのう。 すごいなあ……」


「私も遠征に行った時に何回か見ただけですからね。 それに夕日が海を紅く染めているのが感動です。 遊びに来てたら、泳ぎたいですね」


「そうだな。 旅が終わったら家族と王国のみんなで泳ぎに行くか!!」


「レオさん、いい考えですね!」


一行が到着すると村人たちの掛け声が響き渡っている。 その声を見ると白虎を形取った布像を棒で上下に持ちあげて、村人たちが交互に足を上げながら歩いているのが見えた。 加那江は首を傾げながら言った。


「あの人たちは何をやってるの……? お祭りかしら」


「さあな? 大漁を祈っているのか?」


不思議がっている一行に1人の年配が近づいて言った。


彼女は全身が赤い蟹カニ獣人で、6本のはさみ腕と蜘蛛のように数多の足を上下に動かしながら歩く以外は他の人型生物と大して違いはない。


「あれはですね…… 白虎様に太陽を返してもらうのをお願いしているんです。 なんでも虎様の怒りを鎮めるにはこれがいいんだとか」


「虎?」


「日食みたいなもんか」


アレキサンダーが太陽を指差して言った。


「太陽ってあれのこと? その虎様ってとんでもない盗人だね!」


「とんでもありません。 私たちは先祖たちの罪を償っているのです」


「罪?」レオナルドが聞いた。


おばあさんは太陽を見ながら言った。


「昔々、先祖様たちは命を与えてくれる太陽に毎朝礼拝することで感謝を伝えていました。 その頃、私たちは明日のことも考えられないような生活でした」


「戦でも起きたのか?」


「いいえ、それよりもさらに恐ろしいものです。 津波でございます。 私の祖母から聞いた話だと、海の浮き沈みが激しく、一夜の間に全滅した村もあったそうな。 それはどこでも起こり得たものでした」


「そんなに恐ろしいものだったら海から遠くに引っ越せばいいんじゃない?」


「この星は海から遠ざかると生息する生き物がぐんと減ってしまいますので、私たちは海なしには生きていけないのでございます」


「今も太陽が消える時に津波は起きているのか?」


「いいえ、今は津波の心配はなさらなくて良いのです。 とあるお方が津波を鎮めてくれたのです。 偉大なる教祖様でいらっしゃったロドルナ・ルネルバ様でございます。 長い髪と髭を蓄えた老人のなりをしておりました」


「へえ……」


おばあさんは海の方を指差して言った。


「今は沈んでいますが、そこには遺跡があります。 かつて、それがまだ陸の上にある時、1人の教祖様がいらっしゃいました。 その時、突然星をも飲み込む津波が教祖様に襲いかかりました。 しかし、偉大なことに、彼が呪文を唱えると津波は跡形もなく消え去ったのです。 私たちはそれから教祖様と敬うことになったのでございます」


「そんな人がいたのですね…… 感謝しても仕切れないでしょう?」


「はい、そうでございます。 続きがあって、教祖様は津波を消し去った後、村を出て、7日間行方知れずとなりました。 そして、7日後、村に戻ってきて、私たちにこう言われたのです。


『私は神に預言を貰い受けた。 今からそれを伝える。 あなたたちは私の手によって、津波から守られた幸運な人たちである。 しかし、それは同時に罪も貰い受けることになってしまうことでもあるのだ。 神は死すべき人が生きていることにお怒りである。 見よ、我らに命をもたらす光が奪われるであろう そして、永遠の闇が広がるだろう』


教祖様がそう言って、手で太陽を差すとなんと驚くことに太陽が虎によって飲み込まれ、あたりが闇に覆われてしまったのです。 私たちは驚き、狼狽しました。 そして、教祖様に助けを求めたのです。 そしたら教祖様はこう言われました」


「その教祖サマとか言う奴、何て言ったんだ?」


「『祈りなさい。 そして、神の隠れし時、赦しを得るまで、毎日生贄1人ずつ燃やして、神に捧げよ。 さすれば、其方たちを飲み込む怨霊は沈黙するであろう』とおっしゃいました」


それを聞いた岳斗たちは一斉に息を飲み込んだ。 口がなかなか開かない。 しばらく経って、ジェシカが言った。


「なんと……。 罪のない人たちを犠牲にするとは! その教祖は太陽を覆う虎を倒そうとはしなかったのですか?」


おばあさんは体を震わせながら首を振るだけだった。


「その教祖様も大したことないね。 教祖を名乗るぐらいなら、全員救えって話よ!」


「アレキサンダー、お前のいうことにも一理はある。 俺も同感だ。 しかし、全員と一部を犠牲にすることを選ばさるを得なかったとしたら……。 無闇に責められるものではない」


「しかしな、若い人が犠牲になるのが年寄りには一番堪えるんじゃよ」


岳斗が両拳を突き合わせて、勢いよく言った。


「とにかく話は分かった! 俺たちが虎を倒してくるぜ! もしくは太陽を食べないように説得するとかな」


「そんな……関係ない旅人様に頼ってしまっては申し訳ありません」


「関係ならあるぜ。 なにしろ、俺たちも虎を追ってんだからな」


おばあさんは一瞬迷った末、頭を下げた。 顔は青くなり、震えている。


「やはりいけません……。 お気持ちはありがたいのですが、ご先祖様の罪は私たちが背負うものなのです。 それに虎様を怒らせでもしたら、私たちはとても生きてはいけません」


「でも、村人たちには何の罪もないじゃない!」加那江がが両手を広げて言った。


「ええ、それは分かっております。 しかし、私たちにはこうするしかないのです。 どうか、どうか……お願いします」


おばあさんは指を指して言った。


「あちらに宿がありますので、一泊して、翌日お帰りください。 旅人たちよ、幸運を」


言い終わった後、おばあさんは縮こまるようにお辞儀をして、立ち去ってしまった。






一行は立ちすくむしかなかった。


「困りましたね……。 とりつく島もないのはこういうことですか」


「どうすっかな……? このまま帰るか行くか、どっちにも決めにくい状況だな」シャルルが目を閉じて、考え込んだ。


「そういえば、依頼受けてここに来たのよね。 とりあえず、その討伐する魔物を倒してから考えましょう」


「賛成! その魔物が案外鍵を握っていたりして」アレキサンダーは迷いなく賛成した。


「ふむ。 依頼書によると村長が依頼したと書かれているな。 とりあえず、村長に話を聞きにいくか」


「そうじゃな」


一行は村長に依頼受領を伝えて、詳しい話を聞くために村長の家にきた。 岳斗がノックする。 しばらく待つと木のドアが錆びた音を発しながら開き、中からアサリ貝が出てきた。 彼は殻の中に髭と腕が生えた身が入っている外見であった。 


「おお、旅人よ。 私に何の用かな?」


「ヤラオ星のギルドに依頼しただろ。 俺たちがその依頼を受けて、ここに来たんだ」


「こいつ、超すげー魔導士なんだぜ! あんたも幸運だったな」


「なんと! あの魔物どもを倒して下さるというのですか! ささっ、お入りください」


「おお。 では、言葉に甘えて入らせてもらうかのう」


村長は貝ごと飛び跳ねて、客間に案内した。 一行がソファに座った後、依頼に関する話が始まった。


「その魔物ってどんな奴なんだ?」岳斗が聞いた。


「そいつらはサメ、イルカ、クジラとかの獣人です。 奴らは大群で海から上陸して、防波柵や家を壊したり、村人たちを海に引き摺り込んで窒息死しようとしているのです! 今までも何十人かが引き摺り込まれ、それっきりでございます……」


言い終わると貝村長は涙を流した。 涙は下側の貝にたまり、彼の身を浅く浸した。


「お願いします! 奴らを倒して、これ以上の被害を食い止めてください!」


「もちろんだ。 依頼を受けたからはやり遂げてやるぜ! 任せときな」


「岳斗は頼りになる戦士だ。 大船に乗ったつもりでいてくれ」


「おお……!! これで枕を高くして眠れますぞ!」


村長は合掌をして、手を擦り合わせた。 岳斗の獣愛好魂が疼いた。


(しかしな、サメとかイルカの獣人か……。 色々な意味で平和的に解決したいな)


「それで今まで奴らはどのタイミングで現れたんだ?」レオナルドが聞いた。


「特定の日であるわけではないのですが、必ず深夜に現れました」


「そうか……。 とりあえず、宿に行って、襲撃に備えておこうか」ダニエルが言い終わって、立ち上がった。


「そうね、分かったわ」


一行は村長に礼をして、その場を後にした。

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