表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命変転 悲しみの鎖に囚われし世界  作者: 蛸の八っちゃん
第三章 問いかける爺と永遠の夢を見続ける友の亀
44/163

体力の限界

数分後、岳斗はチョコを吹き出しながら、目を覚ました。


「ピーン、ピーン。 っ!! はあ、はあ……」


「お名前は?」


「イカ十貫です……」


「好きな人は?」


「和田アキコです」


「はい、良く頑張りましたね〜」


「どうも……って、突っ込んでくれ! ボケてるのが恥ずかしいだろ。 ん?」


体を起こした岳斗は目の前にいる人を二度見した。


「マリア!? なんでここに……?」


「あっ。 マリアの姿をしてるけど、あたしよ。 アレキサンダーだよ。 手足が長い方がやりやすかったから」


「そうなのか」


「今、戻るよ」


アレキサンダーが光に包まれ、丸っこい体型のシルエットになって、それは亀の甲羅を着ているゆるキャラ犬のような見た目になった。


「……? 最初のと違わないか?」


「コレが本当の姿なんだよ。 どうだ、可愛いだろ! ふふん。 と言いたいところだが、前の玄武と戦ってから、なぜかこうなったのよね……? どうしてだろうね」


「……」


「どうしたんだよ。 驚いて声も出ないのか?」


何も言わない岳斗はそのままアレキサンダーのマシュマロのような頬をわしゃわしゃと撫でで、キスしようとした。


「んーー!! マシュマロもふもふじゃないかあーーー!!! ぶちゅ〜〜!!」


「なっ! やめろ、変態!」


怒ったアレキサンダーは岳斗に強烈なストレートパンチを繰り出した。 自分から当たりに行ったとも言っていいので、しこたま鼻血が大噴出した。 星とアヒルを回しながらぶっ倒れるバカ岳斗だった……。


「やれやれ……何しに来たんだい、あんたは? 像をもらうんじゃなかったの? だったらとっとと胸を触ればいいだろ」


「ああ、そうだ。 すっかり忘れてた。 でも、ちょっと違って、仲間にして欲しいんだな」


「へ?」


「俺らは今、結社というやばい敵と戦っていて、少しでも仲間が欲しいんだ。 握手すれば、この姿のまま一緒に戦える。 つーか、一緒に戦うのか?」


「いいよ。好きにして。 ちなみにもふもふしていいという意味ではないからな? わかった?」


アレキサンダーが鋭い爪を岳斗に見せた。 同時に顔同士をくっつけて、メンチを切った。 


「(アババババ……!!)大変分かりましたでごぜえます!! へえ! 姉御、握手するでごんす!」


岳斗とアレキサンダーが握手しようとしたその時! 突然地面から2人を楽々飲み込めるくらい広げた口が出てきたが、2人とも素晴らしい勘で避けた。 しかし、別々に行ってしまった。


「なんだ!?」


と、口が人の形に変化して、アニーになった! 


「貴様はっ!! アニーだと!? 生き返ったのか!」


「ボス、ヨミガエル。 オラ、クウ! ウガアアアアア!!」


アニーが二人を飲み込もうと口を開いて、音をも置き去りにするように突進した! 二人ともアニーの息をつかせぬ猛撃を避けるのが精一杯だ。


「うお! なんだよ!? こいつはどういうこと? 速すぎて反撃ができない!」


「暴食だ! 食っても食っても気が済まんらしい。 くそ! ダニエルがいれば、爆弾を喰わせたのに!」


「ダニエル? それって、パパのこと!?」


「あ、そういや、そうだったな。 確かにダニエル・ロワノフだ。 今、ここの外にいるぜ」


「ほんと! 生きてるの! やった……って今はそんな場合じゃないね。 爆弾がないなら作ればいいでしょ」


「そういや、そうだったな。 こいつでも喰らいやがれ!」


2人は雲を作って、爆弾の雨をアニーに降らした。 果たして、期待通りにアニーは全て吸い込んだ。


「よっしゃ! このまま爆散しやがれ!」


「こいつ、食べることしか考えてないのかい?」アレキサンダーが呆れて言った。


しかし、驚くことにアニーは口の中の爆弾を全て、岳斗たちに向かって、吹き出した。


「コレ、マズイ。 イラナイ」


「さすがにそこまではバカじゃなかったね。 バブルグラビティ!」


アレキサンダーが空中から泡を繰り出し、爆弾を包んだ。 直後、泡の中で爆発した。


「くそ。 学んだってわけか」


「閉じ込めてやる! バブルグラビティ!」


アレキサンダーはアニーを泡に閉じ込め、押し潰そうとした。 アニーの骨が悲鳴をあげて歪む。


「そのまま潰れてくれ!」


「セマイ、イタイ……。 クウ!ジャマ!」


圧縮泡から逃れようと、アニーの毛穴が開く。 そして、泡が勢いよく全身の毛穴に吸い込まれた


「フウ、セマカッタ」


「嘘!? 毛穴も口なのか?」


「そうらしいな。 それに斬っても断面が口になるだけで死なないぜ。 だから、一片までこの世から消し去らないと……」


「それって化け物じゃん! やばいにも程があるよ」


「クウ……。 スベテノコサズ! スオオオオオオー!!」


「来るっ!」


アニーが世界ごと食う勢いで吸い込むので、たまったもんじゃない。 咄嗟にアレキサンダーがアニーを閉じ込める半球型の壁を作ったが、間を置かずにヒビが入り始めた。


「コレじゃ、壊れるぜ。 早く次の手を考えないとまずい! あっ! 消滅することを願えばいいんじゃないか」


「言ってなかったかもしれないけど、この世界の中にいるあいつの夢や願望も影響するのよ。 結論を言うと夢同士がぶつかりあうのが唯一のタブーってこと」


「そんなのがあったのか……」


ヒビが割れ、壁ごと岳斗たちを吸い尽くすアニー。 岳斗たちは次々と壁を作って、策が浮かぶまで暴風を凌いでいる。


「スオオオオオーー!!」


「攻める隙がねえ! 材料はいっぱいあるとはいえ、倒せなきゃ意味がないぜ」


「なら、風を閉じ込めてみる! バブルグラビティ!」


アニーの周りに太陽の泡を発生させ、風が泡の内側を回るように閉じ込められた。 アニーの肺に押し込まれる空気がなくなり、暴風が止んだ。


「ナイス! チャンスだ、飛星裂突っ!」


岳斗は息を思い切り吸い込んで、アニーめがけて飛び込んだ。 そして、息すらつかせない猛撃の突きを加える。


「いけ! そのまま消滅させるんだよ!」


「ぬおおおおおお!!」


一片も残さない執念の猛撃でアニーの顔、腹、手足が次々と抉られて、脳、内臓、血が空中に飛び散り、岳斗の服を汚していった。 しばらく経って、岳斗は肺が沸騰しそうになりながらも、息を切らしながらアレキサンダーのところまで来て、座り込んだ。 汗が滝のように流れている。


「はあ、はあ、はあ……! 体が熱い……あとは頼んだ!」


「任せろ。 休んでな!」


目に見える限界の小ささになったアニーの体の欠片どもが暴食の本能に従って、岳斗たちを食おうと這い寄ってくる。


「諦めな! ヴァニッシュプリズン!」


アニーの欠片が泡に変換され、次々と弾け消える。


「!? アワ……! クウ、キエル……」


アニーの欠片それぞれに口が現れ、泡を食おうとしたが、欠片が小さいので、泡を食う前に消滅してしまった。 全ての欠片が消滅された時、岳斗は体力の限界で仰向けに倒れ伏した。


「はあ、はあ、か……勝った……んだな……。 つ、疲れた……」


「やったね。 なんとか倒せたよ」


岳斗は口を動かそうとしたが、声にならずただ頷くしかできなかった。


「……。 カモーン……。 ちょっと一緒に寝よう。 起き上がれんぜ」


「はあー、わかった。 特別だからな。 よく頑張ったよ。 そうだ、服についてる汚れを取るか。 ヴァニッシュプリズン!」


服の汚れが泡に分解され、新品のようになった。 そして、アレキサンダーを片腕で抱いて、しばらく寝る岳斗だった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ