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運命変転 悲しみの鎖に囚われし世界  作者: 蛸の八っちゃん
第一章 少年の中で廻り出す運命の歯車
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魔法使いの王子現る

 慌てて電話を切った加那江は岳斗を急がせるように促した。 岳斗が通ってきた入り口の付近まで来た時、岳斗たちは目の当たりにした。


 そいつは岩のような花が頭になっている容貌だ。 両腕に車を簡単に貫通できるほど鋭く、細長い爪がきらびいている。 そして、今まさに右腕の爪が風を切る音を発しながら、地面に刺さった。その横には、驚くことに、呪文を唱えて、反撃しようとする灰色の猫がいた。


「ギャオオオッ!」


「どこまでも鈍いやつだぜ 火の鳥の餌食になっちゃまえ! 屍喰らいの不死鳥よ、奴らを貪り食え!」


 猫の前に赤い魔道陣が現れて、そこから無数の火の鳥が出た。 敵を焼き尽くして、食い潰さんとして、群がり始めた。


「ッ! ガオオオッ!」


 火の鳥を爪で薙ぎ払う努力をしたが、それも虚しく、火の鳥に包まれた。 しかし、頑丈な肉体で耐えきって、爪で引き抜いた。


「はぁー こりゃきびしくなりそ」シャルルはうんざりした顔で言った。


「……あんたはシャルル?」


 岳斗は開いた口が塞がらないような顔でシャルルに語りかけた。 シャルルは思いがけないところで岳斗に出会って、慌ててふためいた。


「なにか聞き覚えのある声が……? へ? 岳斗っ!? おいおい待て、うそだろ! どーしてここに?」


 岳斗はシャルルに疑問をぶつけた。


「加那江についていったらこうなった。 ところで、シャルル。 えーと……説明してくれ」


「あの〜、実はしゃべれたりするのよ……。 あと魔法も使える」


 シャルルが気まずそうに答えたところに加那江が現実に戻した。


「ふたりとも何突っ立ってるのよ。 敵が目の前にいるわ」


 ふたりはハッとして、目の前の敵に意識を集中した。


「そうだっ! こんな茶番してる場合じゃねえ。 とはいえ、どーやったら倒せるのかもわからんが」


「おそらく花の中にあるもののが弱点だろう。 花にしちゃ硬すぎる外観だぜ」


「どーやって開かせる?」


「わからんが、どうかにして花を開かせて、花の中にダメージを与える必要がある。 それは加那ちゃんにお願いするか」


 シャルルが岳斗の方を向いて言った。


「岳斗、オメーは肉体にダメージを与えてくれ。 俺は魔法で遠くから攻める」


「イエッサー 魔導士様」


 岳斗がニヤっとしながら返事をした。 加那江は左側に、岳斗は右側に向かって走る。 シャルルは距離を十分に保ったまま敵と向き合った。 岳斗が剣を地面に深く擦り付けて、そのまま前に振り切った。


「ドラァっ! こっちだぜェ 疾潜土竜剣っ!」


 地面の土が土竜のように真っ直ぐ這い寄り、怪物の足元に衝突した。 怪物はバランスを崩すとともに土竜に意識が行った。


「ウググっ グアアッ!!」


 奴はその怒りを右爪の攻撃に転じて、岳斗目がけて打ち降した。 しかし、直前で横に避け、地面に突き刺さった爪を切り落とし、ドヤ顔で言った。


「どーよ 少しは応えたろ」


 岳斗に左爪のフックが襲い掛かろうとしていた。


「岳斗! あぶねえぜ!」


「うおっ、ヤベッ!」


 しかし、加那江の5発の銃声と共に、その爪は根本から砕け散った。 そして、もう1つの銃の先端には直径5センチほどの虹色の玉が光り輝いていた。


「こっちよ! これで終わりじゃないわよ。 喰らえ、シャイニングレインボー!」


 加那江が放った7色の玉が分裂して、さまざまな角度から敵を貫く。 怪物の胴体に直撃し、怪物は悲鳴を上げた。


「ぐぁああああ!!」


 奴の注目が加那江に向いたところで、岳斗が高くジャンプして、奴の首を斬り落とさんとして、刀を水平に回し斬りした。


「おい 冥土への片道切符切りやすぜ〜 いってらっしゃっせーっ!」


 攻撃がヒットした瞬間、奴の動きは一瞬止まって、花が開かれた。


「首が弱点だな。 とどめ刺すか」


 岳斗は弱点を確信して、開かれた花に剣を刺そうとした。 その時、奴の花の奥からぷつぷつした音がしたかと思うと、間をおかずに緑色の液体が岳斗目掛けて解き放された。


「やべ 避けなきゃダメな奴だっ!」


 鋭い直感と天才的な身体能力で、ジャンプ離脱と受け身を同時に行い、後ろに下がった。 不幸なことに、花はすぐ閉じてしまった。 加那江が悔しそうに言った。


「弱点が首だということはわかったけど、あんな反撃されちゃ、近づけないわ」


「あれを使うか。 おい、岳斗 さりげなく奴をさっきと同じところに誘導しろ」


「お安い御用だぜ」


 怪物がシャルルに向かって体当たりをかましてくる。


「うぐおおおーーーッ!」


 加那江が走ってくる怪物に弾幕を張り、足止めした。 怪物の動きが一瞬止まった。


「そう簡単には攻めさせないわよ」


 その隙に、岳斗は後ろに回りながら、遠心力を利用して剣を地面に滑らせ、疾潜土竜剣をもう1回放った。 土竜が足元にヒットして、奴の動きをうまく止めたところで、シャルルが呪文を唱えた。


「時の神クロノスの影共よ 今一度我らの戦いを再現せよ!」


 岳斗によく似た黒いシルエットが奴の首を同じように回し斬りした。 奴は同じように花を開いて反撃するために、酸を吐き出した。 加那江の目に鋭い光が宿り、天に向けた双銃で空を覆うほど大量の弾を撃った。


「やっと顕になったわ このチャンス逃さないっ! パレットスコール!」


 激しい鉄のゲリラ豪雨をまともに受けてしまった花は急激にしおれ、体も同調するようにやせていき、動かなくなった。


「ヴォアアア……!」








 シャルルは戦いに勝利したことに安堵して、岳斗に労いの言葉をかけた。


「うまくいったな」


「そうだな。 ところで、人の言葉をしゃべったり、2本足で歩いたり、魔法を使うおまえは何者?」


「そうだよな……そりゃ、そんなこと聞かれるわな。 よし、話すぜ。 オレは元々、遠い星にある王国の次期王子だった。 王国は偉大なる父によって平和的に治められていたが、8年前にクーデターが起こってしまった。 オレは命がらがら逃げのびて、色々あって、加那江をスカウトしに来たわけだ」


「あたしも偶然ゲートに入って、モンスターに襲われた時、シャルルに助けてもらったの。 そこで、シャルルから裏の世界に潜む四獣をやっつけるお願いをされたわ。 なんでも、この門を通れる者にしか倒せない獣なんだそうよ」


「そうか 事情はあらかた分かった……。 じゃあ……どーして俺んとこきた?」


「さあ……。 何匹か猫を飼っていて、いい奴だったからついていっちゃったってとこだな」


「そうか……まあいいや。 しゃべるモフモフくんに悪い奴はおらんからな。 なんやうれしいわ」


 岳斗はシャルルを抱き上げて、顎にキスした。 ついでにいつものように撫でた。


「うおお、くすぐったいぜ キックするぞ」


 微笑ましい2人を見た加那江は少し微笑んだ。

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