表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命変転 悲しみの鎖に囚われし世界  作者: 蛸の八っちゃん
第一章 少年の中で廻り出す運命の歯車
2/185

運命の転校生 凪空加那江

 20XX年6月終わり、開放的な部屋で勉強の合問に昼寝してる一人の少年がいた。 畳が敷き詰められた広い部屋で、縁側からは牧場の野原でたたずむ牛と夕日が見える。


「んがー よくねたあ」


 そう言って、少年は背中を伸ばした。彼は澤宮岳斗だ。 彼は14歳から北海道の十勝に住んでいる。 母親が昔からの夢だった牧場の経営のために、アメリカから引っ越して来たのだ。 今は地元の天原高校に通っている高校2年生だ。


 ぼんやりしていると縁側から猫の鳴き声が聞こえてきた。 起き上がるとそこには赤い首輪をつけている灰色の猫がちょこんと縁側に座っていた。 彼はシャルルと言う。 1年前、あてもなく彷徨っているところを岳斗に拾われた。 今は岳斗の良き相棒だ。


「ミャア、ミャオウー(オッス、岳斗)」


「オウ、シャルル 帰ってきたか」


「ニャオ(メシくれ)」


 岳斗が台所の冷蔵庫からささみ肉を取り出した。 それを灰色のお皿に乗せて、シャルルのところに持っていった。


「ほれ、オメーの好きなささみ肉だ」


「ニャオーッ(ワーオ、いただきまーす!)」


 シャルルはささみ肉を見て、緑色の瞳を輝かせ、勢いよく食べ始めた。 岳斗の腹の音が鳴った。


「……シャルルを見てたら腹減ったな、オレもメシにするか。 今日はマーボー豆腐でもつくろう」


 家族の夕飯を作りに台所に歩いて行った。 床が土となってる昭和前期風の台所。 サンダルを履いて、冷蔵庫に歩き出した。 冷蔵庫から取り出した材料をコンロの横に置き、手際よくニンニク、ネギと豆腐を切り始める。


 火を付けて、植物油をひき、ニンニクとネギを入れて、鍋をふるう。 次に肉、豆板醤(トウバンジャン)を入れる。 肉、野菜と植物油が混じり始め、食欲を湧かす辛い匂いがし始めた。 酒、冷蔵庫に入れた鶏ガラスープ、水、醤油、砂糖を次々と入れ、最後に豆腐をまな板から投入する。 ネギを交えたひき肉が豆腐と共にスープの中で踊る。


 フィナーレを迎えようとしていたその時、髭を生やした細マッチョのおっさんが奥から戸をスライドさせて入ってきた。 彼は北三郎、岳斗の父親だ。 彼の顔の左半分には熊に切り裂かれた3本の傷がある。左目と左耳を傷つけ、左目は義眼だ。


「ほー、うめー匂いすんとおもったらマーボーかぁ~! 酒ひっかけて食いてぇもんだな」


「いいけど、さきにフロはいってこいよ」


「おいっす~、メシメシィー」


 北三郎がフロの方へ歩き去っていった所で、岳斗はフライパンの方に意識を戻した。


「おっと、あと少しでできる」


 少し前に炊けた米をどんぶりによそって、その上に湯気立った麻婆豆腐をかけた。 手際よく机を拭いて、麻婆豆腐丼を食卓に出した。 ささみ肉を食べ終わって、居間で待っていたシャルルが丼を覗き込んで、目を輝かせた。


「ミャオン(おぉ〜! お前の料理はいつも美味しそうだ!)」


「お前の飯じゃねーよ。 さっきあげたろ」


「んにゃッ!(あんだと!? このケチ野郎!)」


「だめなもんはだめ。 猫様にゃ毒だぜ!」


「にゃお! にゃにゃご、なぁん!!(鬼野郎! いつもは俺の腹を顔におしつけてモフモフしようとする癖に!)」


「フハハハ、悔しかったら人間様になるんだな! まぁ、俺としては猫獣人がお好みかな? ラブホテルに連れ込んで、足腰が立たなくなるまで、ベッドの上でモフモフしてやるんだ!」


「ニャッ、にゃご!! シャアアアアーーッ!!(それ以上言うなッ、変態! 徹底的にぶち殺してやる、獣中毒野郎が!)」


岳斗とシャルルが喧嘩してるところに三毛猫がやってきた。


「みゃお! にゃご〜(シャルル! 兄様と喧嘩しないの、もう〜!)」


「にゃにゃお! にゃご……!(紅葉姉ちゃん! だってよぉ、こいつがけち野郎なんだぜ!)」


「にゃ、なぁーご。 ニャッ! にゃい、にゃーお!!(はいはい、あたしが叱ってあげるから大丈夫。 兄様! あまりシャルルに意地悪しないの!)」


「へいへい、すいやせんでした。 やれやれ、紅葉には頭が上がんねーぜ」


「にゃ! なぁ〜ん!(うむ! 分かればよろしい!)」


そこに黒猫と鯖猫がやってきた。 


「んにゃ……。 にゃお。 にゃい、にゃご!(うっせーよ……。 さっきまで気持ちよく寝てたのに、てめえらの喧嘩で目覚めちゃったじゃないか!)」


黒猫のぼやきにシャルルが文句を言い返した。


「なぁーご! にゃ、にゃあん(俺がなんで文句言われなきゃいけねーんだよ! 岳斗に言えよ、向日葵姉さん)」


「みゃお〜。 にゃご(めんどくせ〜よ。 テメエが言えや)」


「なぁぁ〜〜ご!? シャアァァァ!(あ〜〜〜んだと!? 表出ろや、今日こそケリつけたる!)」


「にゃ! にゃおッ!(望むところだぜ! 返り討ちにしてくれる!)」


向日葵とシャルルが戦いを繰り広げている横で、鯖猫が岳斗の足元にまとわりついて、甘え声を出した。


「みゃお〜〜〜ん♡ なぁご?(岳兄〜〜♡! ごはぁん)」


床に腰をおろして、桜を撫でながら言った。


「はいはい、桜。 分かってるぜ、今日の飯はささみ肉だからな」


「にゃっ!? にゃ〜〜お!!(わーい、やった! 岳兄、だいしゅき!)」


「へへへ……」


桜の甘い鳴き声に思わずニヤついて、抱き上げた。 そして、桜の額にキスをした。


「んにゃ、にゃお……(全く親バカならぬ猫バカだな。 全く、兄貴は……)」


向日葵が呆れて一言物申した所に、ポケットがいくつもついている黒いツナギを着た女性2人が家の裏から上がってきた。 背中の真ん中まで伸びている長い髪を黒ゴムで後ろに束ねたおばさんは邦子、岳斗の母親である。 もう1人、髪を肩まで下ろしたショートヘアの髪型をしている若い女性は如月るり子、ここに来る前は仕事を辞めてあてのない旅をしていた。二年前、偶然邦子の牛製品販売店に入った。そこで邦子に出会って、旅についての話と転職の相談を通じて、牛の酪農の仕事に再就職した。


 出来上がって、湯気が漂っている麻婆豆腐を見て、邦子は顔を綻びかせた。


「わぁ! 美味しそうな麻婆豆腐!! 着替えてくるから待っててね」


「おう」


 数分後、着替えを終えた邦子とるり子が居間に来た。


「そんじゃあ、いただきまーす」


 ドアが開いて、北三郎がスッキリした顔で髪をタオルで拭きながら風呂から出てきた。 皆で手を合わせて、夜メシを食べ始めた。





 次の日、天原学校に登校して、いつものクラスの2-3にいる岳斗。 始業前、学生たちが仲良しの人たちとおしゃべりをしている中で、岳斗は太陽光を反射させながら輝く桜木の葉っぱを横目に見ながら頬杖をついてぼーっとしてる。 そこに縁の厚い丸メガネをかけた丸顔男子がやってきた。


「よお岳斗」


「おっす、山田太郎」


「おいおい〜! 俺、上川賢治だぜ。 んなことより、今日転校生来るぞッ! ウヘ~、美人だとええなアー」


 上川は6月という異例のタイミングでくる転校生に期待を含ませながらニヤけた。 よだれを垂らしそうになっているのは彼のために言わないでおこ……言ってるな。


 話を戻して、岳斗は興味なさそうに返事して、また窓の方を見始めた。


「ほーん」


「おめー、そっけなえなー」


 二人がたわいもない話をしていると始業チャイムが鳴り、同時に立派な顎鬚を蓄えたミニ肥満おっさんが赤ジャージ姿で入ってきた。 彼は藤原牧、岳斗の担任&歴史教師であり、マサさんという愛称で生徒たちから慕われている。 外見はプロレスラーのマサ斉藤をイメージするのがいい。


「みんなハッスルしてっかー? 今日は転校生紹介すっぞー」


 マサさんの呼びかけと共にドアを引いて現れたのは白髪のボニーテール(腰までとどく長さ)をしている女の子だった。 彼女が男子たちの視界に入った瞬間、野郎どもの心臓はズキューンと心の音を立てた。 美人でかわいい加那江にうっとりした男子たちは顔を赤めらせ、鼻血を出しそうになっている。


(嘘やろ……!? こんな美人で可愛い女の子が転校生なんて……俺たちってサイコ――ッ!!!)


 岳斗はそんなうぶな野郎どもを見ながら、心底呆れた顔をしている。


「やれやれ、単純なヤローどもだぜ……」


 女の子が自己紹介をし、手を振りながらお辞儀した。


「こんにちわ。 あたし凪空加那江ですっ! よろしくね〜」


瞬間、男子の数人が鼻血を出して、白目で気絶した。 マサさんはそれに気を留めず、加那江に言った。


「席はあそこでほおずえついている野郎のとなりだ。 あいつは澤宮岳斗だ」


 マサさんも気のせいか岳斗を羨ましそうな目で見ている。 席に着いた加那江は体ごと横に振り向いて、岳斗に挨拶した。


「OK~ よろしくね、岳斗くん」


 岳斗は一応、顔を振り向いたもののそっけない態度で返事し返した。


「おっす」





 こうしてその日は美人の転校生の話題で持ちきりになった他、何も変わったことはなかった。


 放課後、友人たちとたわいもない話をしたあと、一人見なれた風景をぼんやり眺めながら、帰路につく岳斗。 今日の予定を頭に思い浮かべている。


「今日は剣道の練習もないし……オンラインFPSゲームでもするかね。あの金ピカヘリをどう撃ちおとしたもんか……」


 ふと岳斗は100メートルほど先に山を神妙に見上げている加那江の姿を目に留めた。 なんとなく加那江の真剣な態度が気になり、ちょうど横にあった木の陰にかくれて観察を始めた。


「ここか……裏世界に通じる白いゲートは。 どうやらここをまっすぐね」


 そう言うと加那江は山に入っていった。


「あれ……? そこって普通に鹿とか猪が出てくるよな? 危険だ、止めてくるか」


 山に入ると、目の前に白いゲートが空中に浮かんでいた。 驚き、周りを見渡すが、加那江はいなかった。


「なんだ……? この白い輪っかみたいなのは……それに加那江がいねえな。 まさか、あの中に入ってしまったのか?」


 危険な所なのか? しばらく迷ったが、加那江を放って置けない。 唾を飲んで、覚悟を決めた。


「……入ってみるか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ