運命の転校生 凪空加那江
20XX年6月終わり、開放的な部屋で勉強の合問に昼寝してる一人の少年がいた。 畳がしきつめられた広い部屋 縁側からは牧場の野原でたたずむ牛と夕日が見える。
「んがー よくねたあ」
そう言って、少年は背中を伸ばした。彼は澤宮岳斗だ。 彼は14歳から北海道の十勝に住んでいる。 母親が昔からの夢だった牧場の経営のために、アメリカから引っ越して来たのだ。 今は地元の天原高校に通っている高校2年生だ。
しばらくぼんやりしていると縁側から猫の鳴き声が聞こえてきた。 起き上がって見るとそこには赤い首輪をつけている灰色の猫がちょこんと縁側に座っていた。 彼はシャルルと言う。 1年前、あてもなく彷徨っているところを岳斗に拾われた。 今は岳斗の良き相棒だ。
「ミャア、ミャオウー(オッス、岳斗)」
「オウ、シャルル 帰ってきたか」
「ニャオ(メシくれ)」
岳斗が台所の冷蔵庫からささみ肉を取り出して、それを灰色のお皿に乗せて、シャルルのところに持っていった。
「ほれ、オメーの好きなささみ肉だ」
「ニャオーッ(ワーオ、いただきまーす!)」
シャルルはささみ肉を見て、緑色の瞳を輝かせ、勢いよく食べ始めた。
ガツガツ食うシャルルを見て、岳斗も腹が減ってきた。 家族の夕飯を作りに台所に歩いて行った。
「オレもメシにするか。 今日はマーボー豆腐でもつくろう」
床が土となってる昭和前期風の台所。 サンダルを履いて、冷蔵庫に歩き出した。 冷蔵庫から取り出した材料をコンロの横に置き、手際よくニンニク、ネギと豆腐を切り始める。
火を付けて、植物油をひき、ニンニクとネギを入れて、鍋をふるう。 次に肉、豆板醤を入れる。 肉、野菜と植物油が混じり始め、食欲を湧かす辛い匂いがし始めた。 酒、冷蔵庫に入れといた鶏ガラスープ、水、醤油、砂糖を次々と入れ、最後に豆腐をまな板から投入する。 ネギを交えたひき肉が豆腐と共にスープの中で踊る。
フィナーレを迎えたころ、髭を生やした細マッチョのおっさんが奥から戸をスライドさせて入ってきた。 彼は北三郎、岳斗の父親だ。 彼の顔の左半分には熊に切り裂かれた3本の傷がある。左目と左耳を傷つけ、左目は義眼だ。
「ほー、うめー匂いすんとおもったらマーボーかぁ~! 酒ひっかけて食いてぇもんだな」
「いいけど、さきにフロはいってこいよ」
「おいっす~、メシメシィー」
北三郎がフロの方へ歩き去っていった所で、岳斗はフライパンの方に意識を戻した。
「おっと、あと少しでできる」
完成して、湯気立った麻婆豆腐とごはんをどんぶりに盛り付け、食卓に出したところで、ポケットがいくつもついている黒いツナギを着た女性2人が家の裏から上がってきた。 背中の真ん中まで伸びている長い髪を黒ゴムで後ろに束ねたおばさんは邦子、岳斗の母親である。 もう1人、髪を肩まで下ろしたショートヘアの髪型をしている若い女性は如月るり子、2年前に仕事を辞めてあてのない旅をしている時に偶然邦子の牛製品販売店に入った。 そこで偶然邦子に出会って、旅についての話と転職の相談を通じて、牛の酪農の仕事に再就職した。
出来上がって、湯気が漂っている麻婆豆腐を見て、邦子は顔を綻びかせた。
「わぁ! 美味しそうな麻婆豆腐!! 着替えてくるから待っててね」
「おう」
数分後、着替えを終えた邦子とるり子が居間に来た。
「ミャオン(うまそうなもんつくれるもんやな)」
「そんじゃあ、いただきまーす」
ドアが開いて、北三郎がスッキリした顔で髪をタオルで拭きながら風呂から出てきた。 集まった四人とシャルルと数匹の猫は夜メシを食べながら、窓からの星空を楽しむのであった。
次の日、天原学校に登校して、いつものクラスの2-3にいる岳斗。 始業前、学生たちが仲良しの人たちとおしゃべりをしている中で、岳斗は太陽光を反射させながら輝く桜木の葉っぱを横目に見ながら頬杖をついてぼーっとしてる。 そこに縁の厚い丸メガネをかけた丸顔男子がやってきた。
「よお岳斗」
「おっす、山田太郎」
「おいおい〜! 俺、上川賢治だぜ。 んなことより、今日転校生来るぞッ! ウヘ~、美人だとええなアー」
上川は6月という異例のタイミングでくる転校生に期待を含ませながらニヤけた。 よだれを垂らしそうになっているのは彼のために言わないでおこ……言ってるな。
話を戻して、岳斗は興味なさそうに返事して、また窓の方を見始めた。
「ほーん」
「おめー、そっけなえなー」
二人がたわいもない話をしていると始業チャイムが鳴り、同時に立派な顎鬚を蓄えたミニ肥満おっさんが赤ジャージ姿で入ってきた。 彼は藤原牧、岳斗の担任&歴史教師であり、マサさんという愛称で生徒たちから慕われている。 外見はプロレスラーのマサ斉藤をイメージするのがいい。
「みんなハッスルしてっかー? 今日は転校生紹介すっぞー」
マサさんの呼びかけと共にドアを引いて現れたのは白髪のボニーテール(腰までとどく長さ)をしている女の子だった。 彼女が男子たちの視界に入った瞬間、野郎どもの心臓はズキューンと心の音を立てた。 美人でかわいい加那江にうっとりした男子たちは顔を赤めらせ、鼻血を出しそうになっている。
(嘘やろ……!? こんな美人で可愛く、性格も良くて……俺たちってサイコ――ッ!!!)
岳斗はそんなうぶな野郎どもを見ながら、心底呆れた顔をしている。
「やれやれ、単純なヤローどもだぜ……」
女の子が自己紹介をし、手を振りながらお辞儀した。
「こんにちわ。 あたし凪空加那江ですっ! よろしくね〜」
「席はあそこでほおずえついている野郎のとなりだ。 あいつは澤宮岳斗だ」
マサさんも気のせいか岳斗を羨ましそうな目で見ている。 席に着いた加那江は体ごと横に振り向いて、岳斗に挨拶した。
「OK~ よろしくね、岳斗くん」
岳斗は一応、顔を振り向いたもののそっけない態度で返事し返した。
「おっす」