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運命変転 悲しみの鎖に囚われし世界  作者: 蛸の八っちゃん
第二章 喪失の一角獣と火焔煉獄に悶え苦しむ紅鳥
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一角獣の奇蹟

病院 死者事件のせいか怪我人などがごった返す事態となっていた。 数人の看護師、医師が岳斗を患者運搬車で、治療室に運んでいる。


「これはひどいな。 火傷レベル2〜3に達している。 それに毒物反応も見られる。 早急に対処しないといかん」


「先生、38番の治療室が空いています」


「そうか そこに運び込め」


数時間後、何とか一命を取り留めた岳斗だが、全身を包帯で巻かれていて、意識もまだ覚めていない。 岳斗の隣に座って見守っている加那江とシャルル やはり、心配そうだ。 ちなみにシャルルは元のかわいらしいフォルムに戻ってる。


「岳斗……とりあえずよかったわ。 でも、これじゃ戦えないわね」


「そうだな。 残念だが、ここでリタイヤかな。 しょうがねえな。 オレら2人で何とかするか」


「正直、ここまで、強いとは思ってみなかったわ。 最初に裏の世界であった時から、常人じゃない動きだったものね。 ほんと、惜しいわ」


「はあ……母ちゃんに顔向けできねえぜ。 大切な息子が火だるまになっちゃったからな」


安心したのも束の間、落ち込んでる2人に近づく影一つ……水色の髪に長く、細いポニーテールが垂れ下がっていて、どこか品位がある白い一角獣の獣人女性が岳斗に歩き寄る。 高貴なレディドレスの腰辺りから飛び出している水色のサラサラした尻尾(膝までの長さ)がファサと音を立てて、優雅に振り子のようにゆっくり揺れている。


一角獣獣人が直立姿勢で胸に手を当てて言った。


「ああ……何と痛ましい。 どこの戦士か知りませんが、私はあなたに敬意を表しましょう」


「ありがとな。 こいつはよく戦ったよ」


「この者の名は何と言いますか?」


「岳斗よ。 澤宮岳斗」


「岳斗ですか……あなたの魂は必ず天へと旅立つでしょう。 安心なさって、お眠りなさい」


「ちょっと待った。 こいつは一命取り留めているんだぜ」


「えっ? あ……これは申し訳ありませんでした! しかし、それはいい知らせですね」


「まあ、そうかもな。 でも、喜んでいられない状況があるんだな。 オレらは死者が蘇る事件の調査をツォンという王様に頼まれて、ここに来たんだ。 しかし、道中で刺客に出会い、この様さ。 はぁ……」


「そのことは我々も頭を抱えています。 この国で1週間前から死者の襲来事件があちこちで多発しておりこの国の王として、何とか手を打たねばならないとは思っています。 ですが、何しろ、神出鬼没なので、手も足も出なくて困り果ています」


話し終わらないうちに、シャルルが耳をぴくんっとした。


「えっ。 なんか聞き流せんワードが入っていたような? 確か、この国の王だとか」


「あ うっかり口が滑ってしまいました、お恥ずかしい。 あはは、私はジェシカ・スカイウォーカーです。 敬語とかは結構ですよ。 ここには忍びで来ているのですから」


「忍びって、誰かのお見舞いに来てるの?」


「いえ、誰がというわけではないのですが。 ええっと、子供達にお菓子をあげたり、怪我した人の悩みを聞いてあげたり、そんなことをしています。 ああ、そうだ。 刺客についてもっと詳しく聞きたいのですが、よろしいですか?」


「もちろん、お安いご用だ」


シャルルはジェシカにマドレーヌとジョーに襲われたこと、パインが何やら気になることを言っていたこと、などを詳しく説明した。


「復讐? パインはそう言ってたのですか?」


「ええ。 なんでもボスの復讐に獣が必要らしいの。 それに明日、何かするって言ってたわ」


「裏の世界、死者、獣、そして、あの3人 点が線になって繋がる匂いがプンプンするぞ。 しかし、今回ばかりは岳斗がいないとずいぶん心細いぜ」


「岳斗はそんなに強いのですか?」


「ああ、そうだ。 オレは魔導士だけど、そうは言っても猫だし、加那江は全く病気をしないし、9の頃から旅で鍛えているとはいえ、体が頑丈ってわけでもないからな。 それに引き換え、あいつは剣道で体を鍛えてる。 強いよ。


しかも、母ちゃんから聞いたんだがな、あいつ、9歳の時、親父共々死線を彷徨ってから、大切な人を失いたくない、俺が全部守ってやるという一心で、剣道、ボクシング、空手など色々、格闘技を習い始めて、わずか2,3年くらいで、大人たちがゾロゾロ出ている世界大会を次々と優勝するくらいの凄腕になったんだ。 そっから、さらに強くなって、スペインの暴れ牛をノックアウトさせたり、中国の凶暴な虎を背負い投げで気絶させたりもした。 ブラジルのアマゾン川で、五匹の4メートル以上のワニと水中で格闘した時は、流石に全治1週間の怪我を負ったが、五匹とも捕まえて、現地民と一緒に料理にして、食ったそうだ」


「な……子供の頃からそんなに命懸けで戦っていたの? そこまで、お父さんのこと大切に思ってるのね」


「なるほど、精神的にもタフに鍛えられていたのですか。 通りで、ただ者ではないオーラが漂っていたような気が」


ジェシカは覚悟を決めた顔でシャルルに改めて質問をした。


「シャルル、岳斗抜きで、明日の決戦に勝てると思いますか?」


「うっ……王様に忠誠を誓った身だから、たとえ、この身朽ち果てても戦い抜くと言いたいところだが、そこまで捨て身になっても勝てる可能性は低いだろう。 正直、ヤバいと思う」


「2人でもあの岳斗が全身に毒や火傷を負うほどの強さだったわ。 パイン、マドレーヌ、ジョーがフルメンバーで来たらどうしようもない。 あ そういえば、パインが色欲、マドレーヌが嫉妬、そして、ジョーが傲慢だったわね?」


「それがどうし……あ あー、まじかよ」


「聖書によると人の大いなる罪が7つ挙げられていて、色欲、暴食、強欲、怠慢、嫉妬、憤怒、傲慢があると言われています。 なるほど、あと4人もいると言うことですね? ……これは確かにまずいですね。 分かりました。シャルル、加那江。 これから、私が何をしても驚かないでください。いいですね?」


「わかったわ。 でも何をするの?」


「決まってます。 岳斗を今すぐ、全治させるんですよ。 この一角獣の力でね」


「一角獣、なるほど。 角に不死の病を含む全ての病を治す効果があり、漢方薬として、さまざまな銀河の王様たちが喉から手が出るほど欲しがっていると言う」


「シャルル、あなたは魔導士ですよね? なら、風の魔法とかで、私の角を切り落としてください」


「何だって! 角切るだと。 痛いんじゃないのか?」


「はい、神経が通ってるので、激痛です。 しかし、あの時の痛みに比べれば、微塵もないです。 さあ、おやりなさい」


「わかったわ。 じゃあ、あたしは医師や看護師を呼んでくるわ」加那江はそう言って、部屋の外に駆け出した。


「お願いします。 シャルル、準備はできましたか?」


「ああ、わかった。 やっぱり、あんたはすごいやつだ」


シャルルが魔法を唱えて、風のカッターを巻き起こした。 ジェシカは顔に汗をかき、歯を食いしばっている。


「罪深き神の息よ、その神秘なる者の角を明日の希望に捧げよ」


切断音とともに、風のカッターがジェシカの角を切り落とし、凄まじい量の血を岳斗の病室辺り一面に散らした。 ジェシカは倒れかけたが、地面に落ちようとしている角を手で取り、かろうじて立っていた。


「うぐぐ……はぁはぁはぁ シ……シャルル、あとはこれを岳斗に刺せばいい……」


顔に血の滝を流したジェシカはフラフラした足取りで岳斗に近づいた。 そして、腕を振り上げて、岳斗の胸に思い切り、角を刺した。


その瞬間、岳斗の体が勢いよく跳ね、病院全体に届くような叫び声を上げた。 同時に角が光り輝いた。


「ウワアアアアアアアッ!!!!」


加那江と医者、看護師が急いで駆け付けた。


「!! 岳斗の声だわ! 早く!」


医者が座り込んでいるジェシカのそばに駆け付けた。


「女王様! これは一体……大変だ すぐ止血しなくては! おい! 看護師、ありったけのガーゼと消毒液を貸せ!」


「はっ はい!!」


ジェシカの治療が始まった時、角の光が収まって、しばらく痙攣していた岳斗の意識が戻った。 岳斗が半身を起こして、質問した。


「はっ! あ ここはどこなんだ?」


「ここは病院よ あなたは毒と火傷でここに運ばれて、とっても重傷だったわ」


「そういえば あれっ 痛くないぞ」


「えっ そうなのか?」


「包帯を外してみてください。 もう治ってるはずです」


岳斗が言われた通りに全身の包帯を外してみると、なんと! 驚くことに火傷の痕がどこにもみられないではないか!


「すごいわ! 肌が綺麗になった」


「一体、何をした。 もしや、あんたが額から血を流してるのと関係あるのか?」


「はい、そうです。 私の角を貴方に突き刺して、治療しました」


「何だと!? 一角獣って、伝説でしか聞かねえが……まっ、ありがとう。 ところで、名前聞いてなかったが、何て言うんだ?」


「ジェシカ・スカイウォーカーです。 以後お見知り置きを」


「この国の女王でな、お忍びで来ていたらしい。 まっ、確実にバレてるだろうけどな」


衝撃のカミングアウトに、岳斗が慌てて、正座してお礼を言った。


「な 王女だと? ……何処の馬の骨か知らんやつのためにありがとうございます」


「大丈夫ですよ。 傷ついたものを助けるのは当然の務めです。 それと敬語は使わなくて良いですからね。 お忍びなんでね。 フフフ」


「わかった。 そんじゃあ、遠慮なく」


皆がほっとした空気になった。 と、顔についている血を洗いとって、治療を終え、額に包帯を巻いたジェシカが突然岳斗に頭を深く下げた。


「会ったばかりの貴方たちにこんなお願いするのは不躾かもしれませんが、私を明日の決戦に同行させていただけませんか? 私は薙刀の心得があるので、皆さんの足を引っ張らないように戦うことはできると思います」


医者が慌てて、固く止めた。


「女王様! いけませんぞ。 国を導く立場にある貴女がそんな危険なところに行くなんて。 もし、貴方の身に何かあったら、残された皇女様はどうなるとお考えですか?」


「娘ですか……それを言われると1人の親としては痛いところを突かれます。 しかし、私はこの国を大切に思っております。 そして、あの人が守ると誓ったこの国を私自身の手で守りたいのです。 それに、戦士たちが傷つきながらも戦ってくれるのに、女王という理由で、安全なところに引き篭もるだけということはしたくない……もう二度と後悔したくありません。 どうかお願いします」


「…………分かりました。 あなたは一度こうと決めたら周りがどう言おうと引き下がるような人ではないですからね。 それは我々もよくわかっております」


医者は諦めたようにため息を吐いた。 そして、岳斗を見据えて、言った。


「岳斗様 女王様をくれぐれもよろしく頼みますぞ」


「ああ、任せておけ。 大切な人を失いたくないという気持ちは俺もよく分かるよ」


ジェシカがパーティイン!








退院準備を終わらせて、今後の作戦を練った。


「さて、明日に備えて、休もうぜ。 って、俺は休んでたけどな」


「休むに越したことはないさ。ホテル探すか」


そこにジェシカが提案を出した。


「あの……よかったら私の城に泊まって行きませんか? ゲストを迎えるためにいくつか宿泊部屋がありますよ」


「いいの?」


「はい、構いません。 遠慮しないでいいですよ」


「じゃあ、お言葉に甘えるか」


「そうだな」

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