キャラが濃ゆい
村を出た桃は、鍛冶屋があると言う町を目指して山を越えようと道なき道を歩いていた。
拾った枝を指揮者の様に振り回しながら、
上機嫌でお気に入りのヒップホップを口ずさみ、山道を歩いて行く。
「豪邸も〜宝石も〜本当の幸せには必要無いはず〜」と口ずさんでいると、木々の向こうからガサガサと音が聞こえてきた。
草を掻き分けて、音のする方を見て見ると、そこには柄シャツを着て派手なサングラスをかけ、ゴールドチェーンを首から垂らした傷だらけのゴリラがグッタリしていた。
そのゴリラが体を起こしてニカッと笑い、桃に向かって「hey!brother!nice!music!」と発音良く言った。
桃はそのゴリラを見て思った。
(はぁ〜、キャラが濃ゆい…濃ゆ過ぎる…ゴリラが柄シャツ着て、派手なサングラスして、絶対相手したらダメな奴だ!話しを聞かずにシカトだ!)
と思い早々にその場を立ち去ろうとした。
ゴリラはシカトして行こうとする桃にビックリして
「何故!何故シカトするんだい!傷だらけのゴリラが横たわって居たら、気になって、どうしたの?って聞くでしょ!わかった!ゴリラだから関わりたくないんだな!brother!見損なったぜ!!」
と桃を必死に引き留めた。
桃はその必死なゴリラを見て深くため息をついて
「俺は、種族や職業や性で判断しないよ!ただ…キャラが濃すぎんだよ!」とゴリラに言った。
ゴリラは少し真顔になって、それから目を大きく見開き、上唇と下唇をムキッとさせて、歯を剥き出しにさせて変顔を桃に見せた。
桃はその顔を見るとブハッと吹き出し大笑いした。
ゴリラは親指を立てて
「brother!やっと笑ってくれたな!辛い顔してたっていい事はやってこないぜ!」と桃に言った。
桃は笑いながら
「にゃははっ!傷見せて見ろよ!薬草なら持ってるから」と言いゴリラの服を捲り、傷を見た。
ゴリラは照れながら
「いやん!スケベ!」とふざけて言い、二人で笑った。
ゴリラの傷の手当てをしているとゴリラが質問してきた。
「brotherは何故こんな山奥に?」
桃は今まであった事を話しながら、傷に薬草を貼っていった。
一通り傷の手当てを終えるとゴリラが真面目な顔で
「ありがとう!助かったよ。brotherの話しだと、刀鍛冶を探してるって言うんだな。」と言い腕を組み
「OK〜!俺がバシッとその刀を仕上げてやるぜ〜!命の恩人だからな!」と桃にウィンクした。
桃はンッと顔をして
「刀、打ち直せるのか?」と聞くと
ゴリラはまたあの変顔をして人差し指を立て、左右に振って
「チッチッチッ!俺は手先の器用なゴリラ!このゴールドチェーンも手作りだ!だがしかし、俺の住処はゴールドを狙った鬼達に襲撃された。一緒に奪い返してくれたら、刀の打ち直しと素敵なゴールドチェーンをプレゼントするぜ!」と自信満々に言った。
桃は肩を落として
「やっぱり声かけなきゃ良かった…また俺を主人公にしようと話しが進んでる…」
とブツブツと独り言を言っているとゴリラが
「なーに!住処を取り返してくれたら、一緒に住んだら良い!宿命なんて忘れて、のんびり暮らそうぜ!brother!」とノリノリで桃の肩を抱いた。
桃はその言葉を聞いて目を輝かせて
「優しいんだな。きっとその言葉すら、俺に主人公を辞めさせない言葉なんだろうけど…でも俺もそのゴールドチェーン作って欲しいから、取り返しに行くか!住処を!」とゴリラの肩を抱き返し言った。
ゴリラはニコッと笑い
「ワーオ!it's、cool、men!そうこなくっちゃ!さっ!行こうぜ!」と二人で歩き出した。
続