表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/126

嚆矢濫觴(こうしらんしょう)


 鬼達との戦いが終わり、一夜明けた次の日の朝の事だった。

じぃさんが真面目な顔で桃に話し出した。


「桃…旅に出てくれるか?」と言うと桃は「何で?ここで迎え討つよ!ダメ?」と返した。


じぃさんは「えっ!?」と驚き、「いやっ、ダメって言うか、その…始まってしまったので…仲間集めたりとか…」としどろもどろで言っていると


「じぃちゃん。嘘だよ!冗談!わかってるよ。俺がここに居れば村の皆んなにも迷惑がかかるし。それに俺が産まれて無い時は、この村に鬼が来たなんて事も無かったんだろうしね…」と桃は言った。


じぃさんは悲しそうに「桃、、すまん」と言い、「お前に渡すものがあるんだ」と言って、奥の部屋から何やら箱を持ってきた。


箱の中をガサゴソして、中から勾玉の付いた首飾りを出してきた。


じぃさんは首飾りを手に取り「これは太郎の想いを溜める不思議な勾玉だ。どうやって溜めるのかは俺もわからない。まっ!桃なら使えるだろ!」と言い、桃の首にかけた。


また箱の中から、背中に桃太郎と書かれた派手な服を出してきて「旅に出る時に、これを着る約束らしいのだが…」と桃に着せようとしてきた。


桃はその服を見るなり嫌な顔をして、手を前に出して高速で左右に振り、早口で「結構です!遠慮します!出来るだけ主人公は避けたいので!いつもの上下、黒の服で行きます」とキッパリ断った。


じぃさんはふふっと笑い「桃らしいの」と言い、今度は刀を持って来た。


申し訳なさそうに「折れてしまっていてすまないが、これが鬼鬼斬桃(ききざんとう)と言って、鬼を斬る刀だ。先ずは、山を越えた町に行き、刀鍛冶を探して直してもらってくれ。」と言って刀を桃に渡した。


桃は「オッケー!」と軽い返事で刀を受け取った。

そして旅に出る準備を始めていった。


ある程度荷物をまとめて、旅の準備が出来てくると、じぃさんがまた話し始めた。


「本当は俺がやらなければいけない事なのに…すまない!尻拭いをさせる様な事をしてしまって…」と桃に頭を下げながら言った。


桃はニッコリ笑い「んー、何て言っていいかわかんないんだけど…こんなに大きくなるまで、育ててくれてありがとう!凄く感謝してる!」とじぃさんに言った。


その言葉を聞いて、じぃさんは下を向いたままグスグスと涙を流してる様だった。


桃は続けて「俺なりの主人公って奴を目指してみるよ!じぃちゃんの言いつけを守って、俺の邪魔しそうな奴はかわしながらね!じゃ無いと戦いばっかりで、いつか死んじゃいそうだからね。」と笑った。


じぃさんは顔を上げて桃を真っ直ぐ見て「世界が平和になったらまた…また…」と言うとまた泣いてその先の言葉に詰まった。


桃はじぃさんの肩をガシッと組み「また一緒に暮らそう!今度は桃太郎と桃じゃなくて!じぃちゃんと子供として!」と肩をグイグイしながら言い、「必ず帰って来るから」とじぃさんの肩をポンポンした。


そして家の外に出ると、村の皆んなが待っていてくれた。


「頑張ってね!」「疲れたらたまには帰って来いよ!」と声をかけてくれた。


酒場の女マスターが桃に近付き「じぃさんの事は私に任しときな!もう長い付き合いだ!心配いらないよ。それより桃!負けるじゃないよ!」と言い、桃のお尻をパーンと叩いた。


桃ははぁーっとため息をついて「まったく本当に皆んな俺に主人公辞めさせる気無いな…」と呆れて言った。


そして紋章の入った左拳を上に挙げ「とりあえず行って来る!皆んな元気でな!」と言い村を後にした。



           続





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ