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爪切りの場所もわかんねぇ


 三人が眠りに着く頃、鍛冶屋の親父は家族写真が入った写真立てを前に置き、酒を飲みながら昔を思い出していた。



「ぎゃーーーあ!あなた大変!」


その声を聞いて男が駆けつけながら

「どうした!心子(しんこ)何があったー!」と言った。


心子は「てつさんが作ってくれた包丁、まな板まで切れちゃったよ!」と驚きながら鉄に言うと

「なんでぇい!まな板までしか切れなかったかい!台所まで真っ二つにするつもりだったのによぉ!」と返した。


すると心子は鉄の頭をゴチンと殴り「殺す気かっ!」と言って、その後ニッコリ笑い


「本当あなたの刃物は凄い切れ味だね。」と褒めると鉄は照れながら

「おうっ!んじゃ!俺は鍛冶場に戻るぞ!」と言い鍛冶場に戻った。


そしてまた別の場面を思い出す。


鉄は全速力で走り何処かに向かっている。

向かってる場所に着くと

「はぁはぁ…おいっ、生まれたのか?」と言うと

心子が布団に座りながら子供を抱き

「えぇ、あなたに似た男の子ですよ!」と鉄に言った。


鉄は涙を流し、えーんえん泣く子供を抱きながら

「おぅ!可愛いなぁ!俺の鉄とお前の心でこいつの名前は鉄心(てっしん)だ!!頑張ってくれてありがとうな!二人共!!」と言うと、心子はにっこり笑った。


そしてまた別の場面を思い出す。


鍛冶場で鉄が刀を作っていると、息子の鉄心がおもちゃの剣とハンマーで、鉄の真似をしている。

鉄が「なんでぇい!もう鍛冶屋になりたいんか?」と息子に聞くと首を振り

「ううん!父ちゃんと遊んでんだ!父ちゃんこの遊びしか知らないから」と笑った。


そして様々な場面を思い出していく。


「心子ー!靴下どこだ?」

「あなたここにあるわよ」


「心子ー!爪切りどこだ?」

「棚の2番目に入ってますよ」


「心子ー!耳かきしてくれ!」

「はいはい、膝に寝てください」


鉄は思い出し終わるとグズグスと泣き、お酒を飲んで「旅の奴等が来るからまた思い出しちまったじゃねぇーかよ!忘れた事なんかねぇーけどよ…」と呟いた。


そして泣きながらお酒を飲み、また思い出した。


暗い夜に男の声で

「鉄さーん!逃げろ!鬼が攻めてきた!刀が狙いだ!作った刀を出して隠れてくれ!」と叫んだ。


鉄は飛び起き

「おうっ!ありがと!わざわざ知らせてくれてありがとうな!」と言って、心子と鉄心を奥に隠れさせた。


鉄は悔しそうに

「くそっ!なんで俺の刀をあいつらに渡さなきゃいけねぇーんだよ!くそっ!」と言いながら刀を玄関の前に並べてた。


刀を並べ終わり、鉄も奥の部屋に隠れて状況を心子と鉄に話し静かにするように説明した。


やがて鬼が来て

「へっへっへっ!ここにも沢山刀が置いてあるな!さっさと貰って帰るか」と刀を拾い出て行こうとすると心子が奥から飛び出して

「刀持ってくのやめてくれませんか?主人の宝なんですよ!」と震えながら言った。


鉄も飛び出して

「馬鹿野郎!刀なんかまた打てばいい!」と言って、鬼を突き飛ばし心子の前に立った。


鬼は肩をさすりながら

「あっ!痛ってぇー!殴ったな?!先に手ー出したな?!殺すなって言われてるけど、反抗的なら王も許してくれるだろ!」と言いながら刀を鞘から抜いた。


鉄は両手を広げて心子の前で目をつぶった。

何かが倒れる音を聞いて目を開けると、そこには心子が倒れていた。


鬼は「ぎゃはっはっ!ズバッといったな!おう!お前も自分の刀の斬れ味試しとくか?」と、言い

鬼が鉄に近付くと、他の鬼が

「おいっ!早く行くぞ!王にバレたら怒られる所じゃ済まないぞ」と言い、

言われた鬼は「そーだな!命拾いしたな!」と言いながら鬼は家を出て行った。


鉄は心子を泣きながら抱きしめ

「大丈夫か?心子?」と言うと

心子は笑いながら「ふふっ、あなたの刀で斬られて大丈夫なわけないでしょ、ほんといい仕事するんだから、ごふっごふっ」と血を吐いて言った。


鉄が泣きながら「もう喋るな!」と言うと

心子は笑って「鉄心の事頼むね、私はあなたの妻でほんと幸せでした。ありがとう」と言って、目を閉じた。


鉄は心子を抱きしめて上を向いて大声で泣いた。


鉄は思い出し終わるとお酒をグイッと飲み泣き

「心子、お前が居なきゃ、爪切りの場所だって俺にはわかんねぇよ!」と言いテーブルに倒れる様に眠った。



            続




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