何やってんだ?!
桃が女神と出会う少し前、村ではいつも通りの生活を皆んな送っていた。
じぃさんが村の畑の仕事を手伝っていると、村人が走ってきて「大変だー!鬼が、、鬼が来たぞー!」とじぃさんに言ってきた。
じぃさんはグーっと背筋を伸ばして、腰をトントンと叩きながら「やはり来たか?!」と言い、皆んなに一番奥の家に隠れてろと指示を出して、自分の家に戻った。
家に着いたじぃさんは奥の部屋から刀を取り出し「ふぅ、やはり研いでおいて良かったな。さて…参りますかな!」と刀を腰に外に出て行った。
じぃさんは鬼の前まで走って行き「鬼達よ!ここから先は通れないぞ!年は経っても桃太郎!世界は救えなくても、村の一つぐらいは救って見せる!」と大声で鬼に言った。
鬼達は仲間同士で笑いながら「ぶぁっはっはっ!じぃさんが桃太郎かっ?!こんなじぃさんをやって、ランクが上がるなら、簡単な任務だなっ!」と仲間達で笑った。
じぃさんは顔をグッとしかめて「この大太刀 長吉!別名!鬼鬼斬桃!を甘く見るなよ!」と刀を抜き、鬼に向かって行った。
流石、昔に鬼相手に戦っていた桃太郎。バサバサと切っては行くが、年老いたじぃさん一人、鬼十匹では勝ち目が無かった。
丁度、五匹目の鬼をズバッと切り、振り返って、もう一匹切ろうとした所で、鬼のパンチをモロに受けてしまった。
じぃさんは吹っ飛んで、血を吐きうずくまった。
「ぐぅぅ!ここまでか!もう村一つも救えないのか!」と地面を叩きながら悔しそうに言った。
先程まで切った鬼達も立ち上がり、じぃさんに向かって「良く頑張ったよ!じぃさん!だーけーどー!もうお終いだな!刀も折れちまって無様だな!ぶっはっはっ!」とじぃさんに近寄って行く。
鬼達がもうすぐ、じぃさんの所と言う所で、鬼の頭に石がガツンと当たった。
「あぁん!誰だぁー?!何の真似だ!」と石が飛んで来た方向を鬼が見た。
そこには村の皆んなが立って居て、両手に石を持って睨みつけていた。
酒場の女マスターが大声で「桃太郎は殺させないよ!鬼を倒せなくても、酒に溺れても、歳を取ってじぃさんになっても、世界の希望なんだよ!そんな人を簡単には殺させないよ!」と叫び、石を鬼達に投げつけた。
鬼達は石を手で払って、村の皆んなに近づいて行く。
「先にお前達から始末してやるよ!」と言い走り出した。
すると桃太郎が立ち上がり「馬鹿鬼共が!!相手を間違えるなよ!こんなおいぼれ一人にも止めを刺せぬのか!?」と言った。
そして村人達の方を向き「逃げろ!とにかく走って逃げろ!」と言いながら鬼の前に立った。
鬼達は「も〜もたろさん!ももたろさん!」と歌いながら近づいてじぃさんの頭を掴み、力を入れ始めた。
「頭…ボンッとしちゃうね!」と言いギリギリと力を込めていく。
じぃさんは苦しそうに「うー!うー!」と唸り、桃の事を考えていた。
(桃…やはり宿命からは逃れられないんだな、、力を付けずに、普通に暮らしていれば、鬼共に気付かれないと思っていたが…物語は始まってしまった様だ…
出来るのなら、お前とずっと普通に暮らしたかったな…桃、、お前も遠くに逃げてくれ…宿命から逃れられる土地まで…)
そんな事を考えてる途中で、視界に桶を担いだ桃が猛スピードで走って来る姿が見えた。
ドドドドドドドドと音と共に、アッと言う間にじぃさんの所まで来て左手で鬼の手を掴み、ギュッと力を入れ「うちのじぃちゃんに何やってんだ?!」と鬼を睨みつけた。
続